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TSMCジャパン、記者懇親会で90nmプロセスロードマップを公開

12月4日開催



 台湾のファウンダリ専業企業Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)の日本法人ティーエスエムシージャパン株式会社は4日、報道関係者向けの懇親会を開催、同社のロジックプロセスのロードマップなどを公開した。

ティーエスエムシージャパン株式会社 代表取締役社長 馬場久雄氏

 同社代表取締役の馬場久雄氏は冒頭で、「TSMCは今年で15周年を迎えるが、設立当初は業界初のファウンダリメーカーだった。'90年代から半導体業界では、自社で工場を持たないファブレスが主流となりはじめ、TSMCもそれとともに成長した。現在はファブレスメーカーだけでなく、総合メーカーからも受注を受け、現在は世界半導体キャパシティーでトップクラスのシェアとなる約7%を保有している」と挨拶した。

 TSMCの従業員は現在1万3千人。2002年上半期には、世界半導体売上高順位で第9位、完成品換算ではIntelに次ぐ世界第2位を達成したという。

 2002年第3四半期の同社の工場稼働率は79%で、第4四半期の見通しでは若干落ち込むものの、稼働率60%台は維持できるとしている。

 0.13μmプロセスでは、2002年内に累計生産量10万枚を達成するとしており、第3四半期総売上の5%を同プロセス製品が占めているという。また、2003年には総売上高の20%を0.13μmプロセス製品が占めると見ており、同年の生産規模では50万枚を計画しているという。

 同社はすでに約190のフルマスクテープアウト、約300のプロトタイプを出荷した実績があるとし、0.13μmプロセスでは業界をリードしていることを強調した。

 また、会場で公開されたTSMCのロジックプロセスロードマップでは、2003年第3四半期には90nmプロセスのリスクプロダクションが開始され、2004年第2四半期にはフルプロダクションが可能になると説明された。

TSMCの売上高の推移 会場で公開された同社ロジックプロセスのロードマップ



慶應義塾大学 総合政策学部教授 榊原清則氏

 会場では、慶應義塾大学総合政策学部教授の榊原清則氏の講演も行なわれた。

 「技術経営の戦略課題」と題して行なわれたこの講演で同氏は、米国で行なわれた「マッキンゼー調査」の結果を上げ、研究開発と営業利益は必ずしも比例しないことを指摘。「社内での研究開発は、一部の産業では必ずしもプラスではない。内外のリソースを活用する会社のほうが成功する可能性が高い」と語った。

 研究開発結果としてのイノベーションの成果は、専有的可能性を有するケースのみで有効という。つまり医療品や特殊科学、航空宇宙、防衛などの分野では技術の専有性が高く利益が上げやすいのに対し、コンピュータのハードウェアやソフトウェア、半導体については技術が標準化されやすく、開発者が独自の利益を上げにくいことを指摘した。

 「日本の企業のだらしなさは、イノベーション専有の可能性に対する、技術戦略の不備にあった」と、技術力は高いが、利益が出せない日本企業の問題点を語った。

 また、日本の大手半導体メーカーは、あらゆる事業セグメントをカバーし、投資が分散しがちなのに対して、欧米企業では、必要最小限のセグメントに集中投資し、そのほかのセグメントについては、社外リソースをうまく利用している点も指摘した。

 ここで同氏は、半導体メーカーの成功例としてIntelを上げて説明。Intelは'78年にi8086のライセンスを12社に供与、セカンドソースを活用することで大量注文にも応えられるアプローチを採った。同社はその後もライセンス供与を続け、徐々にシェアを獲得。'85年になりほぼシェアを独占すると同時にライセンス供与を停止。DRAM事業から撤退し、CPU事業に集中化して今日に至った。

 「当時、ライセンス供与を受けていた日本の半導体メーカーでは、物さえ作っていれば、いずれ勝利できるという認識の人が多かったが、そうではなかった。Intelは非常に賢いやり方をしたといえる」と、国内メーカーの認識の甘さを指摘。

 半導体事業で成功するには、大量・標準製品になることが必要で、それによって初めて収益性がある事業になりえるという。

大手半導体メーカーの事業ドメイン。日本の大手半導体メーカーのほとんどは大規模なセグメントを擁している
(出典:MichaelE. Porter, Hirotaka Takeuchi and Mariko Sakakibara, Can Japan Complete?, Palgrave, 2000, p.84, Table 3-3)
Intelの研究開発費と設備投資額の推移。巨額の設備投資によって大きなシェアを獲得することに成功している

 日本の半導体業界の現状について榊原氏は、「最近では台湾や韓国も技術レベルが非常に高くなってきているが、学会での発表件数では依然としてアメリカと日本が抜きんでている。日本は依然として技術力は高く、手を抜いていないし、研究成果も出ているが、産業における競争力、経営戦略が不足している」とし、「'90年代に財務の規律が失われ、強い物を強化し、弱いものを整理するというまっとうな経営ができていなかった。世間一般的な経営内容のチェックをすべきで、稼げない事業を続けるのはナンセンス」と厳しく指摘した。

 最後に同氏は、「常識的な経営をすれば業績を上げるのは決して難しくない。ワールドクラスの、規模の大きい業績を上げることを目指す以前に、まずは基礎レベルから事業を建て直し、収益を上げ、競争力を付けることが重要。ワールドクラスでの競争力についてはそのあとに考えるべき」と締めくくった。

□TSMCのホームページ(英文)
http://www.tsmc.com/

(2002年12月5日)

[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]


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