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NEC、パソコン事業は上期赤字も、下期回復に自信
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NECの松本滋夫 取締役専務 |
10月25日発表
決算概要 |
NECは、2002年度中間期連結決算を発表、売上高は前年同期比11.9%減の2兆1,738億円、営業利益は501.0%増の267億円、当期純利益は10億円となった。
「コスト削減効果など、構造改革の成果が表れ始めている」とNECの松本滋夫取締役専務はコメント、上期が順調に推移したことを明らかにした。フリーキャッシュフローも上期だけで401億円と、1,449億円の改善を図っており、「資金面での不安はない」とした。
しかし、「下期は需要が回復すると期待していたが、下期は年初に対して売上高では下方修正をせざるを得ない状況」として、期末の業績予想を売上高は前年比5.1%減の4兆8,400億円、営業利益は2.1%増の1,000億円、当期純利益は0.2%増の100億円とした。営業利益は期初の計画よりも200億円上乗せとなっている。
●パソコン下期は強気の予測
NECソリューションズの決算概要 |
カンパニー別では、NECソリューションズの売上高が前年同期比1.2%減の9,496億円、営業利益は3.1%増の299億円。セグメント別では、SIサ-ビス/ソフトウェアが前年同期比8.6%増の2,287億円、インターネットサービス/サポートサービスが同10.9%増の1,693億円と、2つの分野が牽引した。
とくに、BIGLOBEの付加価値サービスおよびアウトソーシングサービスの伸びが高く、付加価値サービス会員は1,062万人、ISP会員が415万人となった。
これに対して、パソコンを中心としたパーソナルプロダクトが10.0%減の3,247億円、その他ハードウェアが22.8%減の573億円となった。また、サーバー/ストレージ/ワークステーションは、4.2%増の1,696億円。昨年は「地球シミュレータ」などの大規模物件があったことから下期は減少する見通しだ。
パソコンに関しては、上期の出荷台数が前年同期比9%減の129万台。だが、「10月以降は、新製品の投入効果もあって、通期では前年比3~4%減程度まで持ち直すだろう。シェアも伸ばすことができると計算している」と強気の姿勢を見せた。
NECソリューションズの牽引役となっているSIサービス/ソフトウェア事業は、通期では6%程度に留まるだろうと予測、「下期の成長率は、上期(8.6%増)の半分程度の伸び率になる」とした。
●売上増も赤字の半導体/ディスプレイ/電子部品
一方、NECネットワークスは、前年同期比33.5%減の7,050億円と大幅な落ち込み。ネットワークインフラ事業が33.5%減の4,210億円、モバイルターミナル事業は44.7%減の1,854億円と、ともに大幅な減少となった。だが、営業利益が121億円と期初の計画通りに黒字化を達成、リストラ効果が大きく発揮される結果となった。通期に関しても、「下期は官公庁や企業などの需要が高まること、欧州向け出荷の増加が見込めることで、売上高は前年比18%減程度に留まるだろう。また、海外法人のリストラなどもあって、下期は売上高比2.0%の黒字化が見込める」とした。
また、NECエレクトロンデバイスは、前年同期比10.9%増の4,769億円となったものの、50億円の赤字となり、黒字転換はできなかった。しかし、昨年度下期に928億円に膨れ上がった赤字が大幅に縮小。「下期で黒字転換を図り、通期でも黒字化を達成することができるだろう」とした。上期実績の内訳は半導体が7.3%増の3,507億円、ディスプレイが18.8%増の575億円、電子部品その他が25.4%増の687億円。「6月以降は電子部品が悪化しているが、システムLSIや化合物半導体が好転している。DRAMの悪化が厳しく、当初の景気の達成は難しいが、採算点は守りたい」とした。
●ソリューション強化で収益を確保
一方、同社では、デフレ環境における経営施策の展開として、2つの方針を掲げた。
松本取締役専務は、ITバブルの崩壊、中国企業の台頭などによる国際コスト競争の激化、国際的水平分業体制の進展といった事業環境の急激な変化をあげ、「1つには、売上高が伸びない中で利益を生み出す体制構築。もう1つは優位性のある分野でのトータルソリューション力強化による収益確保を目指す」とした。
体制構築としては、サプライチェーン改革の徹底推進、固定費削減/資材費削減といった構造改革の一段の踏み込み、財務体質改善に向けた財務施策の3点をあげた。サプライチェーンでは、パソコンの製造分野で進んでいたPULL型生産手法をデバイス工場にも転換、全社の棚卸回転日数を昨年9月の60日から49日に削減、さらに棚卸し残高も6,362億円と28%の削減に成功した。資材の削減については、2001年4月を100とした削減目標として2年間で3割の削減をねらったが、9月時点で28%の削減に成功。来年3月には34%の削減と当初目標を上回る成果をあげる見込みだという。
また、収益確保の具体的手法としては、NECソリューションズではソフトサービス事業の拡大を目指し、ソフト/サービス要員の増強を図る考え。同時に、「NECネットワークス、NECエレクトロンデバイスを含めたNEC全社がソリューション志向を基軸にする必要がある」とした。
収益確保において重点課題となっているパソコンをはじめとするパーソナル事業に関しては、上期が若干の赤字だったものの、構造改革の着実な実行と新商品投入によるシェア拡大によって、下期は収益で「ブレークイーブンを目指す」とした。
ソリューションへシフト | パーソナル事業は着実に改革を進める |
パーソナル事業の構造改革では、121カスタムサポートの営業開始や121コンタクトセンターのサービス拡充、121wareのリニューアルなどの「サービス事業への転換」、中国からのパソコン完成品調達を下期はコンシューマパソコンでは70%に引き上げるほか、全世界規模での資材の共通化およびベンダーの集中化による資材費削減、生産計画固定期間を1週間短縮する新SCMの稼働により実現する「価格競争力・変動対応力の強化」が鍵になるとした。
□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0210/2501.html
(2002年10月25日)
[Reported by 大河原克行]
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