Linuxザウルス「SL-A300」ファーストインプレッション

SL-A300

8月8日発売



 シャープからLinux搭載のPDA「ザウルス SL-A300」が発売された。MIシリーズなど従来のザウルスからOSが変更されたほか、CPUにXScale(PXA210 200HMz)を搭載するなど大幅なアーキテクチャ変更を経て投入された意欲作だ。シャープではデータビューアとしての軽量性や簡便さをアピールするなどその使い勝手も気になるところ。今回はハードウェアの使用感を中心にファーストインプレッションをお伝えする。

■ 軽さを感じさせるデザイン

 購入価格は価格は49,800円。パッケージを開封してみると、USBケーブルやACアダプタなどが付属するが、クレードル(CE-ST8)は別売(希望小売価格:5,000円)となっている。

 本体には、ソニーのクリエTシリーズに比較的近いイメージの白い液晶カバーが付いている。本体はプラスチック製でボディカラーはシルバー。

白い液晶カバーが付属する クレードルは付属せず、アダプタにUSBケーブルとACケーブルを接続する 同梱品一式


 手に持ったときの印象はとにかく軽く小さい。重量は、競合するクラスであると思われるクリエのT650Cより20g軽い120g(本体+スタイラス)なのだが、T650Cと比べても明らかに軽く感じる。また、厚みもT650Cと同等の12.5mmだが、下側に行くにつれ、絞り込んだデザインとなっているため、手に持ちやすくより薄く感じられる。手軽に持てるデータビューアとしてよく考えて作られているという印象だ。

クリエ T650CとPocketGearとの比較
SL-A300  69.4×113×12.5mm 約120g
CLIE T650C 71.8×118×12.5mm 約140g
PocketGear 78.0×126×18.5mm 約190g

■ 細かな点が気になるが、操作性は良好

バージョン情報

 充電してから起動してみると、最初の起動時には数十秒待った後に、初期設定画面が出てくるなど、ちょっと起動が遅いかな? という印象。なお、Kernelは発表会当日と同じ2.4.13だが、ROMのバージョンは1.0となり、発表会での展示機の0.28から大幅にバージョンアップしている。GUI環境は、Trolltechの「Qtopia for Embedix Plus PDA」。

 アプリケーションは、ToDoやアドレス帳などはサクッと立ち上がるのだが、世界時計などは数秒待たされる感じだ。ただし、一部のアプリケーションでは、メモリ消費と引き換えに、高速な起動を可能にするオプションも用意されている(ToDoやアドレス帳はデフォルトでこの設定)ので、頻繁に利用するアプリケーションがある場合はこちらを利用するといいかもしれない。例えば「時計」の場合、当初起動に約4秒ほどかかっていたが、プロパティから「アプリケーションの高速起動」をチェックするとほぼ瞬間的に起動するようになった。また、複数のアプリを同時に起動しても結構きびきび動くので、このあたりは「Linuxで動いているな」と感じるところだ。


Home画面。タブランチャー式のGUIを採用している カレンダー ToDo

 液晶はフロントライトを採用した、240×320ドット/65,536色表示の3.5型反射型TFTカラー液晶。液晶の明るさなどはオフィス内で見る分には申し分ないが、ちょっと奥行きがある感じで、一見して「あ、フロントライトだな」とわかる。

 搭載するメモリはSDRAM 64MBで、うち約23MBをユーザーエリアとして使用可能。SDメモリーカードスロット(MMC対応)×1を本体に備えるほか、別売の「コミュニケーションアダプター CE-JC1」(8月下旬発売)でCF Type 2スロットを増設可能となる。


 本体で、少し気になるのが、SDカードスロットやI/O端子が剥き出しになっているところ。特にI/O端子は基板が露出していて、ちょっと格好悪い。また、「コインやクリップなどと一緒に持ち運ばないように」との注意書きも同梱されていた。できればダミーカードや保護カバーなどが欲しかったところだ。また、背面のCF拡張アダプタ用の端子がカバーで覆われているのだが、このカバーは脱着式で、すぐになくしてしまいそうだ。

 もう1つ気になったのが、ヘッドフォン端子。多くのイヤフォンで標準的に採用しているミニジャックより一回り小さい2.5mmのミニミニジャックとなっているため、汎用的なイヤフォンを利用できないのはちょっとつらいところだ。もっとも、現在SL-A300には、標準でオーディオを利用できるアプリケーションは用意されていないのだが、シャープでは、ヘッドフォン端子の搭載について「今後、様々なアプリケーションの登場を期待しており、ソフトウェア開発の自由度、可能性を高める意味で搭載している」と説明している。

SDカードスロットにはダミーカードなどが付属しない。右側が2.5mmのミニミニジャック I/O端子 操作キー

手書き入力画面

 操作キーは左側にHome/Cancelボタン、中心にスクロール/セレクトキー、右側にOK/Menuキーが用意されており、ほぼ全ての操作がキーを中心に行なえる。GUIはタブランチャー式で、なおかつWindowsのExplorerライクなメニューとなっているので、はじめてのインターフェイスにしては、結構すぐに馴染めた。

 文字入力は、手書き認識や五十音表、ソフトウェアキーボードなどが用意される。従来のMIシリーズは小型ハードウェアキーボードを搭載して好評で、また、米国発売されたLinux Zaurus「SL-5500」ではMIシリーズをベースにしたキーボード付きモデルだったため、SL-A300がキーボード無しで出てきたのはかなり意外だった。しかし、SL-A300の手書き認識は、やや追従性が低いように感じるものの、認識率も高く満足のいくものだ。


■ 注目の新機能やアプリケーションをテスト

 まずドライバとザウルスショット、付属のOutlook同期アプリケーション「Intellisync for Zaurus」をPCにインストールしてみる。なお、ザウルス側のOSはLinuxだが、PC側の対応OSはWindows 98/Me/2000/XPとなっている。

 特に注目されるのが、6月の発表会でも時間を割いて説明されていた、PCとのデータ交換用の新機能が、「ザウルスショット」と「ザウルスドライブ」だ。

 前者は、PC上でPrint Screenキーを押すだけで、PCのスクリーンショットを撮り、SL-A300に転送する機能で、ブラウザで表示された情報やExcel、PDFなど、形式を問わずに画像(JPEG)としてザウルスに取り込むことができる。データービューアにフォーカスしたSL-A300を特徴付ける機能だが、利用してみるととても簡単にPCのデータを転送できる。Webを巡回しながら「気になるけれど、ちょっと長文過ぎるので後で読もう」などと思ったページを適当にクリップしておいたり、外出先の地図や路線図などをメモ代わりにキャプチャするといった用途には便利だろう。個人的にはかなり使える機能と感じた。

 後者のザウルスドライブは、ザウルスをPCのストレージとして利用し、連携を簡単にする機能。PCとデータのコピーがシームレスに行なえ、アプリケーションのインストールなどの際にも多用される。


ザウルスショットで、PCのスクリーンをキャプチャ 画面キャプチャのほかテキストのみを選択してキャプチャなども可能 HancomMobileSheet

Intellisync for Zaurusの環境設定画面

 データ連携ソフトの「Intellisync for Zaurus」は、OutlookのほかPalm Desktopとの連携が可能。試しにPalm Desktopのデータと同期してみたが、なんの問題も無く連携ができた。ToDOやアドレス帳、カレンダーといったアプリケーションがOutlook/Palm Desktopの対応するソフトと同期できる。Palm Desktopからデータ移行できる点は、Palmからの移行ユーザーにはありがたい機能だろう。

 ほかにもWord/Excelビューア/編集ソフトの「HancomMobileWord」と「HancomMobileSheet」などが用意され、ザウルス上で利用可能となる。ソフトウェアインストールの方法は、ザウルス上の \home\Main_Memory\Install_Files フォルダにインストールしたいファイルをドラッグ&ドロップし、本体の「設定」-「アプリケーションの追加と削除」でインストール作業を行なうというもので、普段PCやPDAに慣れたユーザーにはごく簡単なものとなっている。

 また、Java実行環境として「Jeode」も搭載可能(付属CD-ROMに収録)で、Linux以外にJavaでのアプリケーションの利用も可能となっている。

■ 「売り」が弱いが、使ってみると魅力的なPDA

起動画面

 SL-A300はキーボードや拡張性を若干犠牲にしながらも、データビューアというコンセプトに合わせて丁寧にまとめ上げられた製品といえそうだ。ヘビーユーザーやLinuxユーザーには、キーボードも付いてより高機能なデバイスが求められるところだろうが、日本ではじめてとなるLinux OSベースのザウルスとして、ここまでまとめ上げたのはすばらしいと思う。OSがLinuxであることを感じる機会は起動時ぐらいだ。

 PCにより近づき、なんでもできるPocket PCや、機能は少ないがきびきびした操作感が得られるPalm OS搭載PDAなどと比べると、前述のザウルスショットやザウルスドライブなど以外に特別「これが優れている」ということは見つけにくい。だが、複数アプリ起動をしても難なく使えたり、ザウルスらしい文字認識の精度の高さなど、ポテンシャルの高さはいろいろな箇所で確認できる。Palm DesktopやOutlookとの連携など、他のプラットフォームからの乗り換えも簡単で、とてもよくできたデバイスだと思う。

 ちょっと気になるのは実売49,800円という価格だろう。従来のザウルスシリーズの中では安い部類に入る。しかし、データビューアとして特筆すべき特徴はあるものの、例えば価格はやや高くなるが、Pocket PCのPCとの強力な親和性、またクリエのT600系などがフォーカスしているオーディオ機能などの特徴に比べて、「ザウルスならでは」という点がちょっと弱い。個人的にはこの軽さと小ささは大きな魅力だし、使ってみて「今後面白くなっていきそう」という期待感においては、それらのデバイスを大きく上回っていると思うのだが……。

 ともあれ、Pocket PCやPalmなどと競って、PDA市場の一角をLinuxザウルスが担っていって欲しいし、そう願うに十分な製品に仕上がっていると感じる。

□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□製品情報
http://www.sharp.co.jp/products/sla300/
□ザウルスソフト開発サポート「ザウルス宝箱 Pro」
http://more.sbc.co.jp/
□関連記事
【6月24日】シャープ、LinuxとXScaleを搭載したザウルスSL-A300
〜キャッチフレーズは「世界ザウルス」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0624/sharp.htm
【7月10日】シャープ、Linuxザウルスの発売を延期
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0710/sharp.htm
【2月26日】塩田紳二のLinux搭載PDAレポート
米国市場向け シャープ「SL-5000D」レビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0226/zaurus.htm

(2002年8月9日)

[Reported by usuda@impress.co.jp]

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