低価格双眼鏡デジカメ「Binoshot」ファーストインプレッション
~双眼鏡を覗いたときの感動を保存できるデジカメ

6月28日購入

購入価格:14,800円



 米Meade Instrumentsのデジタルカメラ内蔵双眼鏡「CaptureView」が、日本における代理店ミック・インターナショナルにより、「Binoshot」という名前で発売された。

 このBinoshot、目新しいうえに1万円台半ばと購入しやすい価格なので、なかなか人気があるようだ。ミック・インターナショナルの直販サイトMIC.STOREには、6月入荷分が完売、次の入荷が7月上旬と表記されている(7月2日現在)し、品切れと表記している通販サイトもよく見かける。


●望遠鏡メーカーの低価格双眼鏡

 デジタルカメラ内蔵双眼鏡といえば5月に発売されたペンタックスの「DIGIBINO DB100」が思い浮かぶが、同製品が実売価格4万円前後であるのに対し、Binoshotは14,000円前後という低価格で販売されている点で注目される(充電池と充電器をセットにしたものもあり、こちらは19,800円)。低価格とはいえ、Meade Instrumentsは天体望遠鏡や、PCで天体望遠鏡をコントロールする「オートスター」など光学機器で定評のあるメーカーなので、製品の完成度にも期待がかかる。

 「デジタルカメラ内蔵双眼鏡」というデバイス自体、「面白そうだけど馴染みが無い」ものだけに、手頃な価格で試せる製品は興味深いものだ。はたしてBinoshotはどのような製品なのか、編集部で購入してみた。

Meade Instruments Binoshot ペンタックス DIGIBINO DB100


●双眼鏡とVGAデジカメの組み合わせ

 インプレッションの前にBinoshotのスペックをおさらいしておこう。双眼鏡としてのスペックは倍率8倍、対物レンズ22ミリ、視野角7度、ダハプリズム採用となっている。カメラ量販店やホームセンターなどで5,000~10,000円程度でよく売られている、コンパクト双眼鏡とほぼ同様だろう。

ニチメン Che-ez! SPYZ

 デジタルカメラのスペックは、撮像素子が有効30万画素CMOS、出力解像度640×320/196×144ピクセル、レンズがF5.6。画像は8MBの内蔵SDRAMに記録され、PCとの接続はUSB、対応OSはWindows 98/Me/2000/XP、電源は単4アルカリ電池2本。ファインダーや画像再生用の液晶ディスプレイは装備しない。

 どこかで聞いたようなスペックだと思ったら、出力解像度や記録メディア、インターフェイスなどがニチメンの「Che-ez! SPYZ」と同様なのだった。双眼鏡部の価格は5,000円と10,000円の中間として7,500円と見積もり、Che-ez! SPYZを約8,000円とすれば、14,800円の実売価格は納得がいくものだろう。



●扱いは“トイデジカメ”、しかしその実態は

 編集部で購入した製品は、渋谷の大手カメラ量販店に展示されていたもの。展示されていたコーナーは、デジタルカメラでも双眼鏡でもなく、トイデジカメのコーナーだった。この量販店はデジタルカメラ(トイデジカメを除く)を買うと無料プリント券がサービスされるキャンペーンを実施中だったが、Binoshotは対象外となった。まったくもってトイデジカメ扱いなのだった。購入価格はミック・インターナショナルの通販サイトと同じ、14,800円。

 さて、「CaptureView」と「Binoshot」の2つの製品名が表記された箱を開けると、乾燥剤の香りとともにケースに入った本体、USBケーブル、CD-ROM、説明書類、クリーニングクロスが出てくる。付属品はこれで全部で、電池は同梱されない。ケースには腰に付けるためのベルトループが付き、なかなかしっかりした作りに見える。

BinoshotとCaptureView、2つの製品名が書かれた、アメリカンテイスト溢れる箱。このうれしそうな男性の顔を見たら、買わずにはいられなくなるというもの(?) 箱に書かれたスペック表 内容物。上段左からCD-ROMと説明書類。下段左からクリーニングクロス、USBケーブル、本体、ケース

 ケースから取り出した本体は明らかにプラスチック製とわかる中央部以外は金属の質感を感じさせ、重量感もある。細いながらもネックストラップが付いているが、これは本体に直付けされていて交換などは難しそうだ。

 液晶ディスプレイを閉じていると「ちょっと高級な双眼鏡」に見えるDIGIBINOとはデザインの指向が大きく異なっている。どことなくミリタリー系の無骨なデザインに、前方から見ると対物レンズの間にデジタルカメラ用のレンズが独立していたり、小さいながらも情報表示用の液晶パネルが上面に剥き出しになっている。Binoshotは“ただの双眼鏡ではない”という雰囲気を全身から漂わせていて、いかにも新種のデバイスを買った気分にさせてくれる。

 ちょっと頼りなげに見える電池室の蓋を開け、さっそく電池を入れてみる。このへんは開発者の気が抜けたというか、よく言えばコストパフォーマンスを考慮した実用一辺倒の作りになっている。蓋や電池を押さえる金具はなんだか弱く、電池を入れてもまっすぐ2本きれいに並んだりはしない。外観で「ああ、トイデジカメなんだな」と思わせる部分だ。説明書は日本語だが、1枚の紙を折りたたんだものだった。

前方、対物レンズ側。対物レンズの間に独立したデジカメ用レンズがある 後方、接眼レンズ側。接眼レンズの間にあるのがUSBコネクタで、カバーなどは付かない。コネクタの上に小さな電源ボタン(左)とレリーズボタンがある
上面。左が対物レンズ側。デジカメレンズ上に小さな液晶パネルがあり、その後方(右)がピントリング、電源/レリーズボタン。ネックストラップは直付けで、交換などは難しそう Binoshotの電池室。電池がはじけて出そう


●操作は簡単、自然なボタンの位置

 操作体系には、双眼鏡としての操作とデジタルカメラとしての操作の2つがある。双眼鏡として使うためにまず、視度を調整する必要がある。接眼レンズの幅を調整してから、左右の目の視度を別々に調整するため、手順は一見すると煩雑に思えるが、説明書のとおりにやれば簡単だし、慣れれば数秒で可能だ。

 デジタルカメラとしての操作は単純至極で、撮影したいときに左のボタンで電源を入れ、右のボタンでシャッターを切るだけだ。どちらのボタンも、両手でBinoshotを持ったときに、自然に左右の人差し指が置かれる場所にあるから、接眼したままでも簡単に操作できる。

モード切替表示。写真は全消去モードなので「AEL」と表示されている、はずなのだが、編集部で購入した個体は液晶のセグメント欠けが激しく、CALに見える(そのうえAやLの表示の一部も薄い)

 電源ボタンはモード切替ボタンも兼ねている。モードは高解像度、低解像度、セルフタイマー、全消去、1枚消去、電源OFFの順に切り替わる。セルフタイマーは約10秒固定。セルフタイマーを撮影者が被写体に加わる記念撮影用の機能だと思っていると意外な装備に思える。が、これはレリーズボタン押下時の手ぶれ防止のために付いているものと思われる。なにしろ8倍の高倍率なので、手ぶれの影響が大きいのだ。

 電源は30秒でオートパワーオフするようになっており、構図を決めている最中に電源が切れることがある。が、前述のようにボタンが操作しやすい位置にあるため、電源はすぐに投入でき、気にならない。

 なお、説明書には「野外モード」、「室内モード」の記述があったのだが、本体のモード切替ボタンを何度押してもそのようなモードにはならない。不良品かと慌てたのだが、小さな訂正表が入っており、ハードウェアの改良により野外/室内モードの切替えが自動化されたこと、電源OFF機能が追加されたことが書かれていた。ミック・インターナショナルの製品情報ページにもこの情報があり、さらに一部訂正表が入っていない製品がある、との記述があった。



●転送はPhoto Expressで

 画像は内蔵のメモリに記録される。容量は8MBで、高解像度(640×480ピクセル)なら約45枚、低解像度(196×144ピクセル)なら約400枚記録可能としている。メモリは揮発性のSDRAMだが、電池を抜いても約30秒はバックアップされるようになっている。30秒以内という制限は付くが、メモリに画像を記録したままでも電池を交換できるのは便利だ。

 内蔵メモリは取り外しも交換も不可能だし、画像をプレビューできる液晶ディスプレイも無いため、画像を見たいときはUSB 1.1でPCに転送することになる。ストレージクラスには対応していない。PCにドライバと、転送用のソフト「Ulead Photo Express」を付属CD-ROMからインストールする必要がある。このあたりもトイデジカメによくある仕様だ。

 なお、Windows XP用のUSBドライバは付属CD-ROMに収録されていないが、Meade Instrumentsの製品情報ページからダウンロードできる。

 Ulead Photo Expressはインターフェイスが通常のWindowsソフトとはやや異なるため最初は戸惑うが、説明書やヘルプを見ながら操作すればすぐに慣れるだろう。画像の転送のほか、管理、編集、カレンダーなどの簡易印刷もできる多機能なソフトだ。

 なお、画像の形式は転送時に選択するが、形式はjpg、pngのほかbmp、tif、psdなどたくさんの種類がサポートされている。本体内のRAWデータを、転送時に変換しているようだ。どの形式で転送しても、画質の違いはあまりないようだ。

Windows XPにUSBドライバをインストールするとき、このような警告が何回か表示されるが、かまわずインストールする Photo Express。転送のほか、PCからのレリーズ操作もできる


●15,000円で手に入る高倍率画像はどんなものか?

 では、Binoshotの画角をほかのデジタルカメラのそれと比較してみよう。比較の対象として、一般的なデジタルカメラの代表として、有効約202万画素CCDに光学3倍ズームを搭載した「キヤノン PowerShot A20」(画質は1,600×1,200ピクセル、ファイン)、高倍率デジタルカメラの代表として有効145万画素CCDに光学10倍ズームと手ぶれ補正機構を搭載した「オリンパス CAMEDIA E-100RS」(1,360×1,024ピクセル、SHQ)を用意した。

 この3台で、同じ位置から500mほど離れたところにある塔を撮影してみた。

Binoshotの画像。上は撮影した画像をそのまま掲載した。下はPhotoshopで自動レベル調整したもの PowerShot A20の画像。上が望遠端、下が広角端 CAMEDIA E-100RSの画像。上が望遠端、下が広角端

 画質は見てのとおりで、30万画素CMOS相応といえる。Binoshotは35mm換算で400mmという長焦点のため、F5.6と暗いレンズが付いている。そのうえ撮影時が梅雨の合間の曇天で逆光と、Binoshotには不利な条件が積み重なっているのだが、それでもこれくらいの画像にはなる。レベルや色調を自動でなく、きめ細かく補正すればもっと見やすい画像を作れるだろうし、晴天の順光ならもっと鮮明な画像になっただろう。

 PowerShot A20の光学3倍ズームで寄れるのはこれがせいいっぱいだ。解像度が高いおかげで、この画像では塔の上部のディテールが判別できる。が、撮影時にはこのようなディテールは見えないし、Binoshotの画像のような迫力にも欠ける。

 E-100RSの光学10倍ズームはさすがに鮮明だが、どちらかといえば特殊用途向けで、定価が160,000円もする(最近では50,000円程度で販売されている場合もあるが)高価なカメラだ。ファインダーは液晶のみで、Binoshotの接眼レンズを覗いたときのようなクリアさや迫力を欠く。



●晴天ならなかなかイケる画質

 Binoshotで撮影した画像を以下に掲載する。Binoshotの画像は高解像度モード(640×480ピクセル)で撮影したものを、JPG形式で転送し、掲載している。特に記したもの以外はファイル名を変更しただけで、サイズや色調には手を加えていない。

梅雨の晴れ間に市ヶ谷駅から500mほど向こうの建物を撮影。晴天ならこの程度のディテールや色が再現される。右はPhotoshopで自動レベル補正した画像

400mほど向こう橋の上を行くブラジルサポーター軍団(この画像は曇天の6月30日に、新横浜国際競技場付近で撮影した) 15mほど向こうの人物。Binoshotではパララックスがあり、人物全体をフレームに入れたつもりでも、頭が切れてしまった 向かい側の河原の遠景


●双眼鏡を覗いたときの感動を保存できるデジカメ

 双眼鏡なら電子回路を通さず、クリアで迫力のある景色を高倍率で楽しめる。そんな感動を手軽にクリップしておけるのがBinoshotだ。画質や機能はトイデジカメの域を出るものではないが、この価格でこれだけの高倍率が楽しめるデジタルカメラはBinoshotだけだ。高倍率だけに、クリアな画像を得るためにはある程度の光量を必要とするが、簡単なフォトレタッチでずいぶんきれいになる。これなら、画像メモとしてはもちろん、運動会やハイキングのちょっとした記録にだって十分使えるだろう。

 工作精度の低さがやや目につくとはいえ、双眼鏡やデジタルカメラとしての使用に支障が出るようなものではない。双眼鏡を買うつもりなら、あるいはサブのデジタルカメラが欲しいなら、Binoshotも候補に入れておきたい。

□ミック・インターナショナルのホームページ
http://www.micint.co.jp/
□製品情報
http://www.micint.co.jp/meade_binoshot.html
□MIC.STORE
http://www.micint.co.jp/mic_micstore.htm
□Meade Instrumentsのホームページ(英文)
http://www.meade.com/
□CaptureViewのホームページ(英文)
http://www.meade.com/sportsoptics/catalog/captureview/index.html
□関連記事
【4月10日】ペンタックス、デジタルカメラ内蔵双眼鏡「DIGIBINO」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0410/pentax.htm
【5月22日】ミック、30万画素デジカメ内蔵双眼鏡「BinoShot」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0522/mic.htm
【2001年11月1日】VGAデジカメの次世代スタンダード? 「Che-ez! SPYZ」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011102/spyz.htm

(2002年7月3日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]

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