セルシス、マンガ制作用グラフィクソフト「ComicStudioDebut」
~いしかわじゅん氏がデジタル世代のマンガを語る

通常モデル サークルモデル

8月2日発売

標準価格:11,500円

連絡先:営業企画部
     03-5304-0855



 株式会社セルシスは、マンガ制作用グラフィックソフト「ComicStudioDebut」を8月2日より発売する。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XP。「ComicStudio Ver.1.5」をベースとし、初心者向けに機能の簡略化などを行ない、廉価版とした製品。

 「通常モデル」、「サークルモデル」、「WACOMタブレットセットモデル」の3モデルが用意される。価格は通常モデルとサークルモデルが11,500円。ワコムのタブレット「FAVO」がバンドルされるセットモデルは19,800円。

 通常モデルは漫画家のいしかわじゅん氏がパッケージを担当したほか、同氏が漫画家になるまでのエピソードやマンガ制作へのアプローチを語った小冊子、インタビューを収録したムービーなどが同梱される。「サークルモデル」はパッケージを同人作家の的井けるな氏が担当し、同人誌を初めとしたデジタルマンガ制作のポイントを解説した小冊子が付属する。タブレットモデルに小冊子などは付属しない。

描画した線は自動的に滑らかなベクトル線に変換される 効果線用の定規機能。中心を固定してそこから放射線状に定規を移動させて描画する

 新たに30種類以上の原稿テンプレートが用意されたほか、複雑な設定が必要な機能などを簡略化することで、初心者でも直感的に使えるように配慮したという。本製品の上位バージョンとなる「ComicStudio Ver.1.5」との大きな違いは、カラー原稿の作成に対応しないことだが、これは低スペックのPCを使っているユーザーでも軽快な操作性を実現するためで、描画スピードは3倍近くに上がっているという。

 PC上でマンガを制作するために必要なすべての機能を備えているとしており、ネーム作成から、コマ作成、鉛筆ツールを使った下書き、ペン入れ、トーンワークなどの仕上げ処理のほか、吹き出しへのセリフ入力なども可能。また、デジタル入稿用データとしての出力や、Photoshop用ファイルとしての書き出しなども可能。

 独自のベクターマップテクノロジーにより、筆圧対応タブレットからの入力をベクトル形式のデータとして画面に描画する。手書きに近いペンタッチを実現しているとし、描画時のペンの「入り」、「抜き」なども再現され、筆圧に応じて繊細な線が描画される。

 トーン貼りの機能も、トーンのデータをベクトル形式で管理しており、網点の大きさや濃度、グラデーションの情報などを持っている。そのため原稿の拡大・縮小時でも自動的に最適なトーンが作成されるため、モアレなどが発生しない。

ネームモードでネームを作成中 鉛筆ツールを使って下書きを作成 下書きを元にしてペン入れ

トーンを貼り付けていく。トーンは別のレイヤーなので描画後でもトーンの種類を変更可能 セリフを入力中。フォントの種類や文字のサイズも変更可能 新規作成時の用紙選択画面。30種類以上のテンプレートが用意された



 また、6月28日より、Anime Data collection Vol 1「魔法少女マイ~いざ、人間界へ!~」が発売された。価格は12,000円。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XP。

 同社のデジタルアニメーション制作ツール「RETAS!LITE」で制作されたオリジナル短編アニメーションが収録されるほか、メイキングデータを収録。メイキングデータには、実際に使用されたシナリオや、絵コンテ、色彩設定資料、原画のほか、撮影タイムシートデータや、アフレコ台本などをすべて収録している。

 原画や動画のデータはRETAS!LITE形式で収録されているが、付属するRETAS!LITEの閲覧専用版「RETAS!LITE ADC特別版」を使用することで、本体を持っていなくても閲覧が可能。

 なお、魔法少女マイは、監督 関田 治、キャラクターデザインに高田明美、声優に榎本温子を採用するなど本格的なもので、収録時間は6分27秒。8月2日にはVol 2、Vol 3を収録した製品が発売される予定。

 最近では自主制作アニメーションを作成したいという個人ユーザーも増えてきているが、実際に制作するとなると、そのノウハウを学ぶのは難しい。同社ではアニメーション制作現場で実際に使われたデータを公開することで、アニメーション制作過程を学ぶための教材ツールとして販売していくという。

キャラクターデザインは高田明美が担当している 実際に使用されたすべての資料を閲覧できる



漫画家のいしかわじゅん氏

 発表会場には今回の製品のパッケージを担当した、いしかわじゅん氏も登場し、インタビュー形式のトークショーを行なった。

 まず、「今後のマンガのデジタル化はどうなるか?」いう質問に対して、いしかわ氏は、「選択肢が増えた。最終的に漫画家というのは1人で全部やりたいと思っていると思う。実際に、デジタルで作業ができるようになると、描き方を変えて来た人も出てきている。例えば山本直樹氏など、アシスタントを雇うことなく、1人ですべての作業をしている漫画家もいる」

 「マンガは戦後50年たって、新しい手法がほとんど出切ってしまっていた。ここに新しい「デジタル」という道具が加わることで、また新しい展開があるのではないかと思う」

 同氏は、「週刊アスキー」の連載でComicStudioを紹介した経緯もあり、今回のパッケージを依頼されたという。そこで、最初にComicStudioを使った感想について聞かれると、「最初は嫌だった(笑)。ソフトの紹介記事というのは、ネタ作りに時間が掛かるわりにはあまり面白くないものになるから。でも、実際に使ってみたら面白かった。週刊連載ということで、通常は1日程度でネタを作らなければならないが、結果的にComicStudioでは、3週間程度をかけてじっくりと操作や機能などを勉強した。それだけ興味深い製品だった」、「まるで宣伝のような原稿になってしまった」などと苦笑し、会場から笑いを誘った。

 「いままでは、手で書く楽しさというのがデジタルの世界では無かったのではないか。3Dソフトやいろいろなグラフィックソフトを使っても、みな同じような絵になりがちだった。これではソフトの機能を使っているだけで、表現とは本来そういうものではないと思う。ComicStudioはその表現ができるソフトだと思う。自分のクセが線に出るソフトで、紙とペンで書いているような気分になれる」とも語った。

 パッケージの意図に関して質問されると、「タブレットで絵が描けるというのにハードルが高いと考えてしまう人が意外と多い。実際やってみればそんなことはない、直感的なもの。そんなイージーな感じを出したいと思って描いた」と説明した。

 最後に、デジタル世代の漫画化達へのメッセージとして、いしかわ氏は、「ソフトは道具でしかない。道具の進歩によって道具に使われてしまっている人がいる。これには気を付けてほしい。今まで使っていたペンやインクなどの道具に、コンピュータという道具が増えただけ。コンピュータで絵を描くと、キッチリとした綺麗なものを誰でも描けるが、モノを描くということは、描き手の主観が入るということ。描き手の主観とは、描き手1人1人の歪みが出ること。それこそが個性であり、それを読み手に伝えられなければならない。デジタルの道具に頼りすぎず、自分の道具として活用していってほしい」などと語った。

インタビューでは自身がComicStudioを使った感想を披露。「まるで紙とペンで書いているような感覚」 発表会後、代表取締役の川上陽介氏(左)とともに、パッケージイラストを挟んで記念撮影

□セルシスのホームページ
(6月28日現在、この製品に関する情報は掲載されていない)
http://www.celsys.co.jp/

(2002年6月28日)

[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]

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