TECHXNY 基調講演レポート

Palm OS 5でエンタープライズマーケットにチャレンジする

Palm Source CEOのデイビット・ナジェル氏

会期:6月25~28日
会場:Jacob K. Javits Convention Center



 2日目を迎えたTECHXNYだが、本日はPalmの子会社で、Palm OSのライセンスを担当するPalm Sourceのデイビット・ナジェルCEOの基調講演が行なわれた。

 この中でナジェル氏は、同社が組み込み製品向けWebブラウザの開発で知られるACCESS、Javaソフトウェアの開発を行なっているInsignia SolutionsなどからWebブラウザ、Java VM、VPNクライアントなどのソフトウェア技術のライセンスを獲得したことを発表した。

 これらをPalm OS 5と組み合わせて利用することで、エンタープライズ向け市場における立場を強化していきたいという意向を明らかにした。


●Pocket PCと比較して低いTCOがアピールポイント

 ナジェル氏は企業におけるPDAの利用についてふれ、「Palm OSデバイスのTCOは、Pocket PCと比較して低く、ノートPCと比較すれば1/2~1/3程度である」と述べ、Palm OS搭載デバイスが企業向けのモバイル機器として優れた選択であるとした。

 また、IDCが公開したPDA市場のシェアについてふれ、「エンタープライズ市場では、Palm OS搭載デバイスのシェアは58%に達している。また、エンタープライズ向けアプリケーションの開発でも、Palm OS向けの数は群を抜いている」と述べ、Palm OSが既に企業向けのPDAとして大きなプレゼンスを獲得していることを強調した。

Palm OSのTCOはPocket PCに比べて低いことを説明するスライド 企業向けの市場でもPalm OSデバイスが58%のシェアを獲得しているとアピール Palm OS向けの企業向けアプリケーションを開発しているベンダーの数の多さを強調


●Webブラウザ、JVM、VPNクライアントのライセンスを獲得

 その上で、ナジェル氏が明らかにしたのは、Palm SourceがACCESSからWebブラウザ、Insignia SolutionsからJVM(Java Virtual Machine)、SafeNetからVPNのクライアントのライセンスを受けたということだ。これらはPalm Sourceから6月10日に出荷が発表された、Palm OS 5のアドオンとして提供される。

 ACCESSは携帯電話や組み込み型マシンに対してWebブラウザを提供している日本のソフトウェアベンダで、同社のNetFrontは組込型製品のWebブラウザのデファクトスタンダードといってよい。

 今回Palm SourceにライセンスされたNetFrontのコアは、Palm OS 5や将来のPalm OSにも標準Webブラウザとして採用される予定であるという。

 SafeNetのSoftRemote PDAは、VPN(Virtual Private Network)のクライアントとして動作し、ユーザーはインターネットを経由して会社のイントラネットにセキュアに接続し、社内にいるのと同じネットワーク環境での作業が可能になるという。

 Insignia SolutionsのJVMはSun MicrosystemsのJava2 Micro Edition(J2ME)仕様に準拠しており、PDA Profile(PDAP、JSR-75)のAPIセットをサポートしている。これらにより、PDAP向けに書かれたJavaアプリケーションをPalm OS上で動作させることができるようになる。

 「Palm OS 5にこれらのソフトを組み合わせることで、PalmベースのPDAはエンタープライズマーケットで必要とされる機能を手に入れることができる」とナジェル氏は述べ、今回の提携がPalmにエンタープライズ市場向けの新しい機能となり、エンタープライズ市場におけるPalmのプレゼンスがさらに大きく向上するとアピールした。

ACCESSより組込型Webブラウザのスタンダードと言えるNetFrontのコアライセンスを取得。将来にわたりPalm OSに組み込まれて出荷されることになる Insignia Solutionsから提供されたJVM。J2MEに準拠し、PDAPのAPIをサポートする SafeNetが提供するSoftRemote PDA。既にPocket PCではマイクロソフトのVPNクライアントがサポートされているので、Palm OSもこれで追いつくことになる


●Palm OS 5.0の性能の高さもアピール

 既に明らかになっているように、Palm OS 5.0ではARMアーキテクチャのIntel XScaleや、TI、Motorolaのプロセッサがサポートされる。これらのARMアーキテクチャのプロセッサは、Palm OS 4.Xで利用されている68000アーキテクチャのCPUに比べて高い処理能力を持っている。

 今回の基調講演でも、その点が強調されており、実際にPalm OS 4.Xを搭載したデバイスでグラフを作成した場合と、Palm OS 5でグラフを作成した場合の比較デモが行なわれた。Palm OS 4+68000で行なった場合は、紙芝居を見るようにグラフが描かれていったが、Palm OS 5.0+ARM(IntelのXScale 206MHzが利用された)では一瞬で描画が終了した。さらには、世界時計を利用して地球の画像をリアルタイムに描画するデモが行なわれたが、こちらもPalm OS 4+68000はゆっくりとしか地球の絵が動かなかったのに対して、Palm OS 5+ARMではなめらかに地球の絵を動かすことができた。

 「このように、Palm OS 5ではユーザーは高い性能を入手できる。さらに、今回手に入れたJVM、Webブラウザ、さらには既に搭載されているアプリケーションなどを利用することで、ITマネージャは低コストで、簡単に、効率よくモバイル環境をユーザーに提供できる」(ナジェル氏)と述べ、Palm OS 5のメリットを強調した。

このグラフの描画がPalm OS 5+ARMでは一瞬で終わるとデモ。Palm OS 4+68000では描画に非常に時間がかかった 世界時計のアプリケーションでも地球のグラフィックが軽快に動いた


●将来のPDAは折りたたみ型ディスプレイを装備?

ナジェル氏が予測する数年後のPDA。折りたたみ型の大画面のディスプレイを採用し、無線LANやWAN、高速なプロセッサなどの仕様になると予測している
 最後にナジェル氏はPDAの未来についてふれ、将来は新しいタイプのディスプレイや燃料電池などの採用により、小さいながらも高機能な製品になると述べた。

 スライドはナジェル氏の将来のPDAの予測で、折りたたみ可能なディスプレイ、無線LAN、より高速なプロセッサ、大容量ストレージ、より高速なI/Oポートが備えられるなどが語られている。ナジェル氏によれば「これらは数年以内に可能なものだ」と述べ、今後もPalm OSのデバイスがより高機能なものに進化していく方向性を示した。

 最後にナジェル氏は「Palm OSのデバイスは、今後もPC、周辺機器、携帯電話、インターネットなどミッションクリティカルなデータをやりとりする際のハブと成りうる。今後もエンタープライズ市場におけるプレゼンスを強化すべく、Palm OSを拡張していきたい」と述べ、今後もPalm OSデバイスは企業において重要な役割を果たしていくだろうと締めくくった。

□TECHXNYのホームページ(英文)
http://www.techxny.com/

(2002年6月27日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

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