パーム、Palm OS 5の説明会を開催
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XScale搭載の評価ボード上で動作してるPalm OS 5 |
6月14日
パームコンピューティング株式会社は14日、このほどライセンシー向けに出荷を開始したPalm OS 5についての説明会を、報道関係者向けに開催、評価ボード上で動作するPalm OS 5を公開した。この中で、当初パームコンピューティングが提供するSDKは68Kエミュレーション環境向けのもののみであること、また、HackMasterを使用するアプリケーションは動作しないことが明らかにされた。
■Palm OS 5での変更点
Palm OSは米PalmSourceのPDA用OS。これまでのPalm OS(Palm OS 4、以下、OS 4と表記)との最大の変更点は動作するプロセッサ。これまでは、米Motorola製のプロセッサ「DragonBall」シリーズのうち、68Kアーキテクチャの製品(DragonBall VZなど)で動作したが、Palm OS 5(以下、OS 5と表記)からは英ARMのARMアーキテクチャプロセッサのみで動作する32bit OSとなる。
また、320×320ドット表示(これまでは一部例外を除いて160×160ドット)をサポートし、これに合わせて新しいフォント、アイコンが搭載されている。ユーザーインターフェイスはOS 4を継承し、操作方法などは変わらないが、メニューなどの色を変更できる「カラーテーマ」機能が採用された。
このほか、128bit RC4による暗号化機能、SSL 3.0などのセキュリティ機能、WAV形式のサウンド再生、IEEE 802.11bを新たにサポートする。
OS 5は6月10日(現地時間)からライセンシー向けに出荷された。各ライセンシーはこれを各社のハードウェア向けにアレンジし、Palm OS 5搭載PDAなどとして発売することになる。
今のところ、米PalmとソニーからOS 5搭載製品が出荷される可能性がある。OS 4のライセンシーは、OS 5での製品開発も可能だという。
■ARMネイティブになるPalm OS 5
ARMアーキテクチャのプロセッサは、Intelの「StrongARM」「XScale」をはじめ、Motrola、Texas Instrumentsなどから出荷されており、Palm OS 5はこれらの製品をすべてサポートする。具体的には、ARMプロセッサのうち、Version 4Tアーキテクチャをサポートするもので動作する。
各ARMプロセッサには、各社独自の拡張機能が実装されていることがあるが(例えばXScaleには電源管理機能が付加されている)、Palm OS 5は今のところこれらの機能をサポートしない。各ライセンシーが、採用するプロセッサに合わせてOSを拡張すればこの機能を利用したPDAも作れるという。
■高速な68Kエミューレーション環境「PACE」を実装
Palm OS 5は、これまでの68K用コードで書かれたPalm OS用アプリケーションを動作させるために、「PACE(Palm Application Compatibility Environment)」というエミュレーション環境を備える。これは、Palm OS 4搭載PDA上でアプリケーションを動作させるよりも、PACE上で動作させるほうが高速になるという、高性能なもの。OS 4までのデザインガイドに従ったアプリケーションなら、10倍以上高速に動作するとしている。
会場では、68Kコードのアプリケーション「Quickseet」をXScaleとOS 5搭載の評価ボード上と、68Kプロセッサ搭載のOS 4マシンとで動作させ、速度を比較するデモンストレーションが行なわれた。OS 4上で先にグラフの描画を実行させ、その後OS 5上で実行したところ、OS 5上では一瞬で描画し終えたのに対し、OS 4上では10秒ほどかかった。
Palm OS 5の内部構造。コアとなるPalm OSはARMネイティブだが、アプリケーションはエミュレーション環境である「PACE」上で動作 | 【動画】(1.99MB/MPEG-1) OS 5(左)とOS 4でQuickseetのグラフを描画させるデモ。OS 5上で描画し終えても、OS 4上ではまだ描画している最中 |
■当初はエミュレーション環境のみ利用可能
当初用意されるOS 5対応SDKは、このPACEを利用するもののみで、ARMネイティブのアプリケーションを作れるわけではない。68Kコードで記述したアプリケーションを、エミュレーション環境でのみ動作させることになる。
このようにした理由を「エミュレーション環境下でも、68Kコードを十分高速に実行できる」「実績のある開発環境を利用できる」「OS 4からの移行が容易」としている。
ただし、プロセッサを直接叩くようなアプリケーションは動作が遅くなったり、動作しないこともあるという。この場合はARMネイティブのコードを使用することになるが、現在はサブルーチンとしてのみ利用可能となっている。
将来はARMネイティブのアプリケーションに移行する予定であり、ARMネイティブのアプリケーションを開発できるSDKを、今年中には用意したい、としている。PACEを利用するSDKと、Windows上で動作するPalm OS 5エミュレータは、すでにPalm OSのホームページでダウンロード可能になっている。
■日本では普及に時間が必要?
PACEのOS 4との互換性は高く、同社では「既存のアプリケーションの80%を動作させるのが目標」としている。だが、PACE環境下では、ハードウェアを直接叩くためのソフト「HackMaster」と、HackMasterに依存するアプリケーション(いわゆる“Hackソフト”)が動作しない。Hackソフトが比較的多い日本では、従来の資産を生かせる可能性が、80%よりもかなり低くなるだろう。
OS 5の日本語版はすでに完成しており、フォントや日本語入力システムも標準で搭載されるという。だが、ARMネイティブのアプリケーションを容易に開発できる環境が整うまでは、従来のソフトをARM上で高速に動作させることもできない。ライセンシーが独自のアプリケーションを整備し、魅力的な製品を実現する可能性はある。とはいえ、一時的にいわゆる“PalmWare”と呼ばれてきたフリーウェアやシェアウェアの選択肢が減り、ユーザーによるカスタマイズの自由度が狭まってしまう可能性は高い。ARMネイティブなアプリケーションの開発環境が早期にリリースされることに期待したい。
□パームコンピューティングのホームページ
http://www.palm-japan.com/
□Palm OS 5出荷開始のニュースリリース
http://www.palm-japan.com/about/pr/20020611.html
□Palm OSのホームページ
http://www.palmos-japan.com/
□関連記事
【6月10日】米PalmSource、Palm OS 5のメーカー向け出荷開始(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/0,,9749,00.html
(2002年6月14日)
[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]
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