マイクロソフト、次期Windows Media「Corona」の詳細を発表
~画質/音質の大幅向上、即時/常時配信など新機能

6月6日 開催



 マイクロソフト株式会社は6日、次期Windows Media Technology「Corona(コードネーム)」の概要およびコンシューマ/デジタルメディア戦略についての記者発表会を開催した。

 発表会では米Microsoftのアドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当バイスプレジデントである古川 享氏と、Windowsデジタルメディア事業部ジェネラルマネージャのDave Fester氏が説明を行なった。

 Coronaは、次期Windows Media Technologyの総称で、サーバー/プレーヤー/コーデック/エンコーダ/SDKの5つの製品群により構成される。ベータ版は第3四半期後半に、製品版は本年度内にリリースされる予定。


■劇場レベルのクオリティの画質/音質を実現

アドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当バイスプレジデント 古川 享氏

 Coronaでまず目を引く特徴は、ストリーミング配信で劇場レベルの音声/画像品質を実現した点。

 「Windows Media Audio(WMA) Professional」と名づけられた新しいオーディオコーデックは、ディスクリートな5.1chオーディオに対応。DVDなどと同レベルのサラウンドオーディオが可能となった。音質面では、24bit量子化/サンプリング周波数96kHzに対応。転送レートは128kbps~768kbpsと高音質化が図られた。

 「Windows Media Video(WMV)」は、720pに対応。また、ATIおよびNVIDIAが開発を表明したCoronaデコードチップ搭載のビデオカードを利用することで、1,080pにまで対応可能となるなど、ハイビジョンクラスの画質を実現した。

 発表会では、Coronaを用いて5.1ch/720p/24fpsでエンコードされた「DINOSAUR」の映像が放映された。デモ映像のビットレートは6Mbpsだったが、恐竜の肌の質感や動物の毛並みなど細部まで鮮明に表現されており、劇場やDVDに遜色ないレベルの画質/音質であった。

 画質/音質を向上させた一方で圧縮技術にも進歩が見られた。同社によれば、Coronaの圧縮効率はMPEG-4の2倍。デモでは6Mbpsで記録されたMPEG-2映像と、2Mbpsで記録されたCorona映像を比較表示させたが、見た目にはほぼ区別のつかないものであった。

5.1chオーディオや、720p表示などカタログスペックではあるが、ハイビジョンや劇場並みのクオリティを実現 2MbpsのCorona(左)と6MbpsのMPEG-2(右)の映像比較。スクリーン上ではほとんど区別不能なレベルであった

 Coronaが要求するシステムスペックは、おおまかには5.1ch対応サウンドカード、1GHz程度のCPU、256MB程度のメモリとなっているが、ATI、NVIDIAが開発中のビデオチップ搭載カードを利用することで、CPUの要求スペックは下がるという。

 ストリーミング配信に重点を置くCoronaでは、「Instant-on(即時配信)」、「Always-on(常時配信)」と呼ばれるストリーミングデータの送受信に関わる新技術も搭載。

 従来のストリーミング配信では、受信開始時にバッファリングが生じ、音声/映像が開始されるまでに、数秒から数十秒の時間がかかっていたが、Instant-onはこのバッファリングによる遅延を解消する。

 同じハードウェア構成のWindows 2000 ServerとCorona対応の.NET Serverから同時に映像を受信するデモでは、Windows 2000 Serverからの受信ではバッファリングに5~6秒かかっていたのが、Coronaではほぼ瞬時に再生が開始された。

 Webサイト上でコンテンツをいろいろと切り替えて再生させる別のデモでは、1秒弱程度の待ち時間でコンテンツが切り替わり、TVのチャンネルを変えるのと同じような感覚でストリーミング映像を再生させていた。

 Instant-onは再生開始時だけでなく、早送り/巻き戻し時にも有効で、早送り/巻き戻しを行なってもバッファリングは起きないという。

 さらにCoronaは、クライアント側のキャッシング技術により、トラフィック負荷による帯域低下や、ネットワークの切断などが発生しても、その影響を受けずに受信の続行が可能となっている。

 デモでは、敢えてクライアントマシンのLANケーブルを一度抜いて再度接続させたが、Windows 2000 Serverから受信しているMedia Playerは、ネットワークが切断されると再生を停止し、再接続後はバッファリングを開始して数秒まった後に冒頭からストリーミングが開始されたのに対し、Corona環境では何事もなかったかのように再生を続けていた。

Coronaは新たな配信技術を搭載 同時に再生を開始すると、Instant-onによりCorona(右)では、再生が始まっているが、2000 Server環境(左)ではまだバッファリングを行なっている 写真ではわかりづらいが、画面右下にLAN接続が切断を警告するバルーンが出ている。Coronaではネットワークが切断されても、再生を続行できる

 この新技術について古川氏は、「特許技術なので詳細は明らかにできない」としながらも、「MPEG-2などでは、基本画像とその差分情報の積み重ねでフレームを構成しているため、差分情報を読み込み終わるまで再生ができないが、Coronaでは即座にフレームを再生できる技術を搭載した」と説明した。


■ロイヤリティフリーのライセンシングなど積極的な展開

Windowsデジタルメディア事業部ジェネラルマネージャ Dave Fester氏

 Coronaは現在のWindows Media Technologyにも含まれるDigital Right Management(DRM:デジタル著作権管理)を備える。

 同様の著作権保護としては、PCでのコピーを完全に禁止したコピーコントロールCDなどがあるが、古川氏は、「DRMはコンテンツの複製をただ禁止してしまうものではなく、コンテンツプロバイダが自分のビジネスモデルに合わせてコンテンツを配信/課金できるシステムである」と説明。

 「例えば、Coronaでは、DRMを利用して、コピーは自由にできるが、料金を支払うまでは再生できないようにしたり、支払う金額に応じて品質を変えたり、CMを見て初めて再生を許可することも可能(同氏)」という。複製を完全に許可することも可能。

 課金などを管理するライセンスサーバーは、ストリーミングサーバーとは分離して設置することが可能となっている。これにより、コンテンツプロバイダは、コンテンツの配信のみに専念し、課金は別の業者に任せることもできる。

 Coronaはコンシューマエンドのクライアント(Media Playerなど)のみならず、サードパーティへのライセンシングも、無償で提供される。また、サードパーティはSDKを利用して、完全に自社ブランドの製品を作ることが可能となっているほか、Windows以外のプラットフォームでも展開が予定されている。

 Dave氏によれば「当社はWindows Media Technologyの利益は、サーバーを含めたWindowsの販売のみでまかなう」のだという。

 また、古川氏は、「ブロードバンドの普及と相まって、Coronaは、DVDレベルの映像をフラッシュメディアに記録可能にさせたり、ストリーミングにおける新たな広告手法など、これまでにないビジネスモデルを提供し、ひいては大幅な経済効果の向上をもたらす」と、Coronaに対する自信を語った。


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□Windows Media Technologyのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/windows/windowsmedia/

(2002年6月6日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]

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