COMPUTEX TAIPEI 2002レポート

VIA Technologiesが技術セミナーを開催
~KT400、P4X600、P4X800などの詳細を明らかに

VIA Technologies プロダクトマーケティングシニアディレクター シー・ウェイ・リン氏

会期:6月3日~7日(現地時間)

会場:Taipei International Convention Center(TICC)
   TWTC Exhibition Hall
   TWTC Exhibition Hall 2



 台湾のチップセットベンダVIA Technologies(以下VIA)は、日本のプレス向けに技術セミナーを開催し、同社の今後のロードマップなどについての解説を行なった。この中でVIAのチップセットのテクノロジに関する責任者であるプロダクトマーケティングシニアディレクターのシー・ウェイ・リン氏は、同社が今後リリースを予定しているKT400、P4X600、P4X800、K8HTAなどに関する説明を行なった。


●「VIAは他ベンダーに先駆けて最新技術に対応していく」

 今回のCOMPUTEX TAIPEIにおいて話題になっている最新技術といえば、AGP 8X、DDR400、USB 2.0などだ。AGP 8Xをサポートしたチップセットおよびビデオカードのデモは、SiSのSiS648+Xabre(セイバー)のデモ、IntelによるATI TechnologiesのR300(開発コードネーム)と思われるビデオチップとGranite BayないしはPlacerとの組み合わせのデモなどが行なわれている(別レポート参照)。USB 2.0は、すでにIntelがIntel 845E/G/GLをリリースし、実際に普及が進んでいるなど、あちこちで対応した製品のデモなどが行なわれている。

VIAはテクノロジーリーダーであると主張するスライド

 リン氏は「当社はこうした最新技術を他社に先駆けていち早く投入してきた。例えば、メモリ技術ではDRAMベンダと協力してPC133を推進し、さらにはDDR SDRAMの普及を進めてきた。今後も当社はこうしたポジションを維持していくべくAGP 8X、DDR400などを推進していく」と述べ、Intelや他の競合メーカーに先駆けて、最新技術をチップセットに取り入れていくというこれまでの方針に変わりがないことを強調した。

 VIAがこうした姿勢を強調する背景には、「テクノロジーリーダー」というVIAのこれまでのポジションをより強力なものにしたいという意志が見え隠れする。というのも、今VIAはSiSという強力なライバルを抱えているからだ。以前は、VIAが最新テクノロジをいち早く採用し、それより1、2四半期遅れでIntelが搭載というのが単体チップセット市場の通例で、SiSは統合型に、ALiはモバイルという棲み分けが行なわれていた。ところが、一昨年にSiSが統合型へフォーカスするという方針を転換し単体型チップセット市場への参入を明らかにしたため、状況が大きく変わってきた。SiSはVIAに対抗すべく、最新のテクノロジをいち早く自社のチップセットに搭載し始めた。DDR333がその代表例で、VIAに2四半期ほど先駆けることができた。

 これまでVIAはテクノロジリーダーというブランドイメージを押し出して、特にチャネル市場においてシェアを拡大してきた(OEM市場では逆に価格を武器にシェア拡大を図ってきたのだが)。ところが、SiSの方が先に最新技術を取り込んでいく状況が続けば、この状況が覆されるようになる可能性が高い。そこで、VIAとしては最新の技術をSiSと同じか、若干早めのスケジュールで取り込んでいこうと考えており、それに応じたアグレッシブな製品ロードマップを計画している。


●KT400、P4X400、P4X600、P4X800など最新技術をサポートしたチップセットをリリース

 引き続きリン氏は同社の最新チップセットに関するロードマップを明らかにした。「当社は今後DDR400をサポートしたKT400、P4X400、さらにはデュアルチャネルのDDR333をサポートしたP4X600、さらに今年の終わりにはDDRIIをサポートするP4X800をリリースする予定がある、これらはいずれもAGP 8Xをサポートする」と述べ、最新技術をサポートするチップセットの計画について詳細を明らかにした。


・KT400

 KT400はAthlon XP/Duron向けのチップセット。KT400はすでにカスタマーに対してサンプルが配布されており、COMPUTEX TAIPEIでも多数のベンダーがKT400を搭載したマザーボードを展示している。KT400の特徴は3点ある。1つは数字からわかるようにDDR400に対応していることだ。DDR400を搭載しているPC3200を利用すれば、メモリの帯域幅は3.2GB/Secとなる。

KT400を説明するスライド KT400

 ただ、AMDは今月中にリリースすると見られているデスクトップPC版Thoroughbredにおいても、システムバスのクロックを引き上げる予定はない。実際に、月曜日にAMD コンピュテーションプロダクトグループ プラットフォームエンジニアリング&インフラストラクチャ担当副社長 リチャード・ハイ氏は「当社はK7世代のシステムバスを引き上げる予定はない。なぜならば、当社はOpteron/次世代Athlon(Hammer)の開発にリソースをさいているからだ」と述べるなど、AMDがシステムバスを引き上げる可能性はAMD自らが否定している。通常なんらかの可能性があれば、少しは含みを持たせた発言が行なわれることを考えると、その可能性はほとんどなさそうだ。

 実際、マザーボードメーカーのエンジニアも、AMDからシステムバスを引き上げるという話は聞いていないと口をそろえて証言しており、VIAのリン氏も「チップセット側としては対応する準備はあるが、AMDを待っている状態だ」と発言している。こうしたことを総合すると、システムバスを引き上げる可能性はかなり低いと言わざるを得ないだろう。

 さて、システムバスが引き上げられないとすると、メモリバスの帯域幅が上がったとしてもパフォーマンス向上はシステムバスも引き上げた場合に比べて小さい。そうした意味では、KT400でもDDR333からDDR400にあがる性能面でのインパクトはあまり大きくないというのが実態だろう。

 「KT400」の2つ目の特徴は、AGP 8Xに対応していることだ。ただ、現在ではまだAGP 8Xに対応したビデオチップはSiSのXabre(セイバー)ぐらいであり、他のグラフィックスベンダはまだリリースしていないのが現状だ。この点についてリン氏は「現時点ではATIから入手したビデオチップを利用してAGP 8Xについての動作確認などを行なっている状態だ」と述べ、現時点ではAGP 8Xがまだまだ調査段階にあることを認めた。ただ、それももうまもなく終了するということで、AGP 8Xの動作には問題ないという見解を明らかにした。

 3つ目のポイントは8XのV-Link、つまり533MHzで帯域幅が533MB/Secの第2世代V-Linkに対応していることだ。このため、サウスブリッジには8X V-Linkに対応しUSB 2.0コントローラを内蔵したVT8235が利用できる。

 なお、リン氏は「KT400は当社のK7世代チップセットとしては最後の製品となる。今後、AMD向けのチップセットはK8(Hammer)用を中心に開発していく」と述べ、今後、新しいAthlon XP/Duron用チップセットの計画はないことを明らかにした。


・P4X400

会場で展示されていたDDR400を搭載したメモリモジュールのPC3200

 P4X400はPentium 4/Celeron(1.7GHz以上)用のチップセットで、基本的にはP4X333のDDR400対応版だ。そのほかのスペック、システムバス400/533MHz対応、AGP 8X、8X V-Linkなどは同じになっている。

 余談になるが、SiSも同様の戦略をとる。当初、SiSはSiS648はDDR400対応としてきたが、このプランは破棄され、オリジナルのSiS648はDDR333のサポートにとどまる。このため、SiS648はSiS645に比べて新しいサウスでUSB 2.0をサポートしたSiS963に変更されることが強化点となる。SiSはSiS648の後継としてSiS648DXを計画しており、このSiS648DXでDDR400のサポートが追加される。



・P4X600

P4X600を説明するスライド

 P4X600はPentium 4 Celeron(1.70GHz以上)用のチップセットで、特徴はデュアルチャネルのDDR333をサポートしていることだ。これにより、例えばDDR333を利用すると、メモリの帯域幅は5.4GB/Secに達し、Pentium 4の533MHzのシステムバスの帯域幅である4.2GB/Secを上回る帯域幅を実現する。

 Pentium 4は帯域幅に依存する設計となっているため、より高い性能を発揮する可能性が高い。リン氏も「P4X600はこれまでのPentium 4用チップセットに比べて高いパフォーマンスを発揮する」と述べ、かなり期待ができる製品になりそうだ。なお、メモリ構成はPCB(基板)が8層の場合には各チャネル4DIMMで合計8DIMMとなり、6層の場合には各チャネル3DIMMで合計で6DIMMという構成になる。なお、そのほかのスペック(AGP 8X、8X V-Link、VT8235)などはP4X333/400と同じになっている。

【お詫びと訂正】初出時に8層と6層の記述が逆になっておりました。お詫びして訂正させていただきます。

 P4X600のサンプル時期に関してリン氏は「7月には提供できる」と述べ、少なくともIntelのデュアルチャネルDDRサポートチップセット「Granite Bay」がリリースされる予定の9月より先に製品が投入できるという見通しを明らかにした。


・P4X800

 P4X800はDDRIIに対応したチップセットとなる。今年の終わりまでにリリースされるということだが、実際に製品が出回るのは2003年になる可能性が高いという。「多くの業界関係者はDDRIIの製品が出回るのは2004年だと言っているが、当社としてはもう少し早い時期、具体的には2003年には技術としては利用できるようになると考えている」(リン氏)とDDRIIを早期に普及させていくことにVIAとしても積極的に関わっていくという姿勢を明らかにした。

【各チップセットのスペック】
P4X333P4X400P4X600KT400K8HTA
CPUPentium 4/CeleronAthlon XP/DuronOpteron/次世代Athlon
システムバスP4バスEV6バスHyperTransport
クロック533/400MHz266/200MHz800MHz
メモリDDR SDRAMCPUに統合
クロック333/266/200400/333/266/200333/266/200400/333/266/200
チャネル数121
バンク数88×2(6層時)8
最大容量4GB8GB4GB
ピーク時帯域2.7GB/Sec2GB/秒5.4GB/秒3.2GB/秒
AGP8X
サウスブリッジVT8235
IDEインターフェイスUltra ATA/133
USB2.0×6ポート(1xEHCI、3xOHCI)
AC'97
Ethernet(MAC)
PCIバスv2.3、6マスター


●Opteron/次世代AthlonのチップセットはCPUのリリースと同時期にリリースできる

 また、リン氏はHammer(K8)のコードネームで知られるOpteron/次世代Athlonプロセッサに関するチップセットであるK8HTAについても詳細を明らかにした。すでにK8HTAに関しては、AMDの発表会レポートでも述べたように、HyperTransport(双方向16bit)、AGP 8X、8X V-Link(533MB/Sec)、サウスブリッジはUSB 2.0対応のVT8235というスペックになっている。

 K8HTAに関してリン氏は「K8HTAは、Opteron/次世代Athlonプロセッサ用チップセットとしてはもっとも早く登場する製品となるだろう」と述べ、K8HTAが他のチップセットベンダよりもいち早く登場するという見通しを明らかにした。実際に、このリン氏の発言を裏付けるような事実もある。例えば、AMDの発表会場ではSiSやALiも対応チップセットを展示していた。だが、マザーボードベンダが自社設計のボードを会場で展示していたのはVIAのK8HTAだけだ。SiSやALiに確認すると、両者ともインハウス(自社内)のサンプルのみで、まだOEMメーカーへのサンプル出荷には至っていないという。そうした事実をふまえると、VIAが先行しているということは間違いないと言っていいだろうし、Opteron/次世代Athlonがかなり遅れたりという突発的な自体がない限りはVIAが他の2社に先駆けて対応チップセットを出荷できる可能性が高い。

 ただ、気になるのはAMD製チップセットとの関係だ。これまでAMDはチップセット事業に関して、自社製チップセットはサードパーティのチップセットが出そろうまでの製品であり、サードパーティのチップセットが出そろうとフェードアウトさせるという方針をとってきた。実際、AMD-750、AMD-760ともにサードパーティのチップセットが出そろうと、ほとんど見かけなくなっていった。ところが、今回はVIAの出足が思ったよりも速いので、Opteron/次世代Athlonの出荷と同時に、VIAのチップセットも出そろっている可能性が高い。これに対して、リン氏はPC用としてはAMD向けよりもVIAのものが採用されることに自信を示し、特に問題はないという見解を明らかにした。「AMD-760チップセットの時がそうだったように、顧客はAMDのサウス(実際にはI/Oハブだが)に懐疑的だ。このため、VIAのチップセットを選ぶベンダが多いだろう」と述べた。

K8HTAを説明するスライド K8HTA


●Serial ATA、PCI Expressなどにも積極的に取り込んでいく

サウスブリッジのVT8235に関する説明、IEEE 802.11bやSerial ATAにはアップグレード版で対応

 さらに、リン氏はSerial ATA、PCI Express(3GIO)などに関しても積極的に取り組んでいくという姿勢を明らかにした。「Serial ATAに関しては100%対応していく。実際、VT8235は、近い将来にピン互換のままSerial ATAに対応できるような設計を施してある」と述べた。

 また、PCI Express(3GIO)に関しても、今年の終わり頃には対応していくと述べた。「現在、AGP 4Xを64bit PCIにブリッジするVPXチップをオプションとして提供している。次世代版(VPXII)ではAGP 8XをPCI-Xに置き換える機能を提供し、さらにVPXIIIでPCI Expressへのブリッジの機能を提供していきたい」という。さらに、将来的にはPCIバスの代わりに、サウスブリッジにPCI Expressへのブリッジ機能を持たせていることも検討していると述べ、逆にHyperTransportに関しては「CPUのシステムバスとしてしか考えていない」(リン氏)と、ノース・サウス間などへのHyperTransportの利用は計画にないと述べた。


●今後もSiSとテクノロジーリーダーとなるVIAだが、Intelも対抗

 さて、このようなVIA Technologiesのアグレッシブなロードマップは、確かにIntelを1、2四半期以上、上回っている。例えば、Intelは第4四半期に投入する予定のGranite BayでデュアルチャネルDDRをサポートするが、Granite Bayはワークステーション向けであり、実際にデスクトップPC向けでデュアルチャネルをサポートするのは2003年第2四半期に予定されているSpringdaleになってからだ。これに対してVIAは第3四半期にリリースされるP4X600でデュアルチャネルをサポートするわけだから、Granite Bayに対して1四半期、Springdaleに対して3四半期リードしていることになる。

 だが、SiSとは結構いい勝負だ。というのも、SiSは現在ブランドイメージを確立しようと、非常にアグレッシブなロードマップを展開しており、VIAもそれに引きずられてアグレッシブにならざるを得ないからだ。ただ、両者ともエンジニアリングリソースは無限ではないはずで、今後それらをいかに有効に使って効率よく新技術を取り込み、ロードマップ通りに製品を出荷できるかがキーになるだろう。

 Intelとて、この状況に指をくわえているわけではない。チャネル市場ではこうした最新技術を取り込むことが重要である、と認識を変えてきている模様で、その証拠に第4四半期には急遽Intel 845GE、Intel 845PEというDDR333対応チップセットを投入する。これにより、チップセット側としてはほとんどのメーカーがDDR333レディとなるわけで、DRAMベンダも急速にDDR333へのシフトを早めると見られている。

□COMPUTEX TAIPEI 2002のホームページ(英文)
http://www.computex.com.tw/computex2002/2002default.asp
□COMPUTEX TAIPEI 2002のホームページ(和文、TCA対日輸出促進センター)
http://www.ippc.com.tw/computex2002/2002default.asp

(2002年6月6日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

I
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】

【Watch記事検索】


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2002 impress corporation All rights reserved.