日立、2002年3月期連結業績見通しを下方修正、4,800億円の赤字に
~リストラ費用などで大きな損失、ディスプレイ事業は新会社に集約

2月28日発表



 日立製作所は、2002年3月期の業績見通しを下方修正するとともに、2002年度業績回復に向けた取り組みを発表した。修正後の2002年3月期の通期決算は、売上高が7兆8,000億円(前回予測比 1,000億円減)、営業損失は1,550億円(前回予測比 1,250億円の損失拡大)、純損失は4,800億円(同 2,500億円の損失拡大)となった。2002年度の期末配当も見送られる。

 同社では、業績見通しの修正の要因を、「IT関連需要の低迷と、国内景気の悪化の影響を受け、半導体/ディスプレイなどの電子デバイス、エレクトロニクス関連材料、キャリア向け通信機器などを中心に、売上高/利益ともに前年見通しを下回った」と説明している。特に純損失の拡大が大きいが、半導体事業の国内外の拠点再編や、PC用ブラウン管からの撤退、北米キャリア向け通信機器事業の縮小などの事業構造改善費用 約1,340億円や特別退職金等 約1,460億円、株式の評価損等 840億円などの営業外費用が足を引っ張った形となっている。

固定費を2,000億円削減

 同社では、昨年の中間決算発表時に15,900人(国内11,100人、海外4,800人)の削減計画を発表しているが、不採算部門の海外事業の撤退/縮小や早期退職優遇制度の導入などにより、更なるリストラを行ない、2002年6月末までに20,930人(国内15,100人、海外5,830人)を削減する。また、親会社の部課長以上の賃金水準引き下げなどにより、人件費を連結ベースで約1,100億円削減するという。

 記者/アナリスト向けの説明会で、八木良樹副社長は「下期は黒字化を目指していたが、営業損失が1,550億円、純損失が4,800億円と過去最悪となった。リストラ費用や事業清算費用、有価証券の評価損840億円相当などの特別損失が大きく響いた」と下方修正の経緯を説明した。

 また、セグメント別の状況も解説した。特に電子デバイス分野で1,910億円の損失を計上しているが、その中でも半導体が1,510億円、ディスプレイ事業が510億円と大きな損失を計上したという。

 また、通信情報システムでは、NTT向け通信機器などが低調で、予想を下回ったほか、デジタルメディア民生機器では、「冷蔵庫/エアコンが売り負けた。冷蔵庫はシェアも落ちた」という。

庄山悦彦社長

 庄山悦彦社長は、「今期はこうした結果になるが、2002年度はV字回復を目指す」と述べ、構造改革プランを発表した。人件費の削減や半導体事業の拠点統廃合、TV向けブラウン管事業の撤退などにより、2002年度の固定費を前年から約2,000億円削減するという。

 また、調達の最適化や、棚卸資産や売掛債権の手持ち日数を2003年3月までに25%短縮するなどの施策により、キャッシュフロー改善を図るという。なお、業績は振るわなくても「ITへの投資はいままでどおり積極的に行なっていく」という。

 今後の方針については、「“Inspire the Next”のテーマのとおりに、需要の創造による新たなシナジー効果、新たな事業を創出という方向で行なっていく」とした。「リストラ費用などで大変な損失を計上しなければならなくて、申し訳なく思っている。改革を進め、ぜひ2002年度はV字回復を図りたい」とした。

 中間期の見込みどおりにならなかった原因については、「半導体などでは、外貨ダウン(為替損)が大きかった」とするほか、家電などは売り上げが伸び悩んだという。また、来年度の売上高については、「今期から2,000億円ほど上積みし、“8兆円を目指そう、量より質でいこう”という方向で一致している。2,000億円の固定費減などの改革の効果を上げることで業績を回復していきたい(八木副社長)」と述べた。

 また、2001年度も第3四半期よりは、第4四半期がよくなってきていると述べ、「大きな損失を計上した半導体でも、回復基調になっている」とし、「ストレージはテロの後大きく落ちたたが、少しずつアメリカの景気も戻ってきている。われわれが強い分野なので、力をいれてやりたい」と今年度振るわなかった事業についても回復基調であることをアピールした。

 また、ディスプレイ事業を2002年10月を目処に分社化する方針も明らかにされた。新会社の名称は未定。新会社は日立の100%出資となり、売上高は2004年度で2,400億円を目指すという。

 同社のディスプレイグループは、2001年7月にPC用ブラウン管から撤退し、低温ポリシリコン液晶などのフラットパネルディスプレイに経営資源を集約していた。

 「ディスプレイ事業は、高画質/高視野角/動画対応などの技術開発により、業界のリーディングカンパニーとして事業を拡大していたが、韓国/台湾メーカーなどの参入により、市場環境がより厳しさを増してきた」と現状を説明し、こうした環境の変化に対応するため、「開発から販売までの全てのディスプレイ関連事業を新会社に集約することで、意思決定のスピードアップが可能な事業体にする」という。

 その施策の一環として、米国子会社の日立エレクトロニックデバイシズ(HED)のTV用ブラウン管事業を2002年4月までに停止、設備をトムソンマルチメディアに売却するという。これによりHEDでは4月末に約270人の人員削減を行なう。今後HEDは、大型プロジェクションテレビ用ブラウン管に経営資源を集約していくという。

□日立製作所のホームページ
http://www.hitachi.co.jp/
□2002年3月期業績見通しの修正及び期末配当について(PDF)
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/2002/0228d/gyoseki.pdf
□緊急経営施策の完遂と競争力強化に向けた取り組みについて(PDF)
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/2002/0228e/p_saisei.pdf(PDF)
□ディスプレイ事業の再構築について(PDF)
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/2002/0228f/dp.pdf(PDF)
□関連記事
【2001年10月31日】日立、中間期決算は421億円の赤字。通期も赤字の見通し
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011031/hitachi.htm

(2002年2月28日)

[Reported by usuda@impress.co.jp]

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