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東芝、新開発棟完成記念技術展を開催
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1月30日公開
株式会社東芝は30日、東京都青梅市に新設した新開発棟の完成を記念して、プレス向けに発表会を開催した。新開発棟は、デジタルメディアネットワーク社とモバイルコミュニケーション社の開発/設計部門を集約し、要素技術の開発を担当する「コアテクノロジーセンター」と、製品開発や設計を担当する「デジタルメディアデベロップメントセンター」の2つのセンターから実現される。
展示会場風景 |
これらの開発棟は、ソフトやハードの区分や、DVDはDVD、モバイルはモバイル、TVはTVということで分散していた開発部門を統合したもの。この開発棟の完成により、融合技術や技術融合商品の開発を加速し、市場投入速度を早めることを目的としている。開発棟の完成に伴い、説明会のほか、さまざまな参考展示が行なわれた。ここではその模様をお届けする。
展示エリアは、ストレージなどの展示を行なう「先端デバイス技術」、ホームサーバーなどを展示する「ホームネットワーク」、次世代携帯端末などを展示する「モバイルコミュニケーション」、IEEE 802.11aやBluetooth機器などの展示を行なう「ワイヤレス&シームレスオフィス」、同センターで利用される開発手法を説明する「クリエイティブオフィス」、SCM関係などの「デジタルマニュファクチャリング」の6つの展示エリアに分けて行なわれた。
技術展のテーマは「ブロードバンドに対応し、新市場創造を目指す、東芝のテクノロジーイノベーション」(東芝デジタルメディアネットワーク社 西田厚聡社長)というもので、展示エリアでは、2.5インチAV用HDDやTablet PCなど多数の展示が行なわれた。
■最先端を行く2.5インチHDD技術
HDD事業では、1.8インチHDDなど小型のHDDにフォーカスした製品展開を行なっている同社だが、垂直記録型やAV用などさまざまな種類の2.5インチHDDを参考出展していた。
・垂直記録HDD
垂直記録HDD |
「垂直記録HDD」は、次世代HDD技術として期待されるHDD高密度化技術。30GBプラッタの2.5インチHDDでデモが行なわれた。
垂直記録方式は、記録磁極が記録層に対し垂直方向を向く、ヘッド/メディア構造となる。ヘッドが記録層に対し垂直となることで、大きな信号出力や高い記録分解能、高いオーバーライト性能を実現でき、ディスクの高密度化が可能となる。また、転送速度面でも高速化ができるといったメリットもあるという。
なお、垂直記録HDDの市場投入については、「2~3世代後には実用化できる」としており、今のサイクルで言うと2003年には市場に投入されそうだ。また、その際には、1平方インチあたりの記憶密度は100Gbit以上(2.5インチHDDでプラッタあたり60GB以上)となるという。
ノートPCに内蔵したデモでは20GBプラッタのものを利用していた | 解説 |
・AV用2.5インチHDD
AV用2.5インチHDD |
また、PC用の2.5インチHDDをベースにファームウェアの改良などを施した「AV用」HDDのデモも行なっていた。AV用のコマンドをサポートし、リトライや代替処理などを最適化することで、不良セクタの検出時などにも画像の途切れを最小限に抑えることが出来るという。
解説 | 2.5インチ化により、小型のHDDレコーダーに内蔵可能とアピール | 比較デモ |
・高耐振動小型HDD
高耐震HDD |
また、高耐震小型HDDのデモも行なっていた。モバイルPCやカーナビ、携帯プレーヤー用のHDDで、振動の加速度をセンシングしてヘッド位置をリアルタイムに補正するという。また、振動の方向、周波数の変化にも自動的に追従し、耐震性能を保持するという。
・車載用2.5インチHDD
既にパイオニア製のカーナビでの採用例がある同社のHDDだが、今回参考展示した「車載用2.5インチHDD」も、そうした流れにあるもの。PC用のものを機構や制御系の改善を行ない耐震性能を高め、目標仕様として最低-20度の低温や結露、2G以上の振動に対応するという。これらの改良によりリード/ライト速度は2割程度低下する場合もあるという。
容量よりは小型化の要求が強い市場のため、今後は1.8インチHDDの導入も考えられるが、現状で、コストなどを鑑みると2.5インチがしばらくは主流になるだろうという。
車載用2.5インチHDD | 解説 |
■802.11a、燃料電池など次世代のモバイル技術
Tablet PC |
また、PC関連ではタブレットPCやIEEE 802.11a対応機器なども展示されていた。
Microsoftと共同開発したTablet PCも参考展示された。OSにはWindows XP Tablet PC Editionのβ版を採用している。縦と横の画面表示切り替えが可能で、ペン入力にも対応する。また、バッテリには同社独自の薄型リチウムバッテリを採用している。
また、IEEE 802.11aと802.11bの両方に対応したデュアルバンドアンテナも展示していた。ノートPCの液晶上部に内蔵するタイプで、0.2×30×30mmと薄型のものとなっている。
現在、同社ではIEEE 802.11a対応機器を発売していないが、検討はしており、時期を見て投入したいとしている。
アンテナを内蔵しておくことで、モジュールの差し替えだけで、802.11a/802.11bの切り替えが可能となるため、当初802.11bで製品を発売して、あとからオプションで802.11aに差し替えるといった展開も考えられるという。
Tablet PC専用の薄型バッテリ | Dual Bandアンテナ | 液晶上部に設置する |
また、燃料電池を利用した「GENIO e」も展示していた。まだ、本体よりもバッテリ部が大きくなっているが、実際の製品時にはより小型で、現在のバッテリの約5倍の駆動時間を実現できるという。
本体下のクレードルのような部分がバッテリ部 | ノートPC用燃料電池は完全にモックアップ | 解説 |
■DynaBook SS S4を分解展示
そのほかにも、世界最薄のモバイルノートPCを「DynaBook SS S4」をパーツごとに分解し、展示していた。
パーツごとに分解された「DynaBook SS S4」 | ||
■無線LAN対応のホームサーバーは5月発売?
ワイヤレスAVステーション |
ホームネットワークコーナーでは、ワイヤレスAVステーションを展示。ルータと、HDDレコーダー、無線LAN機能などを統合した製品となっており、録画した画像をワイヤレスでPCから見ることなどが可能となっている。発売は「ワールドカップ開催前」とのことで、5月頃には市場に投入されそうだ。予想価格は10万円弱としている。
HDDレコーダー部はタイムシフト再生やTV番組表などに対応する。ワイヤレスでTV録画画像を閲覧するときは、ビットレートを約2Mbps(VBR)まで落とすことで、音飛び無く再生できるという。LAN側/WAN側 各1ポートを装備し、Sビデオ入出力、ビデオ入出力端子などを搭載する。OSはLinux。
TV番組表を利用してPCからの予約設定が可能 | 本体背面 |
epステーション |
epステーションは、イーピー株式会社提供する放送/通信を融合した蓄積型インタラクティブサービス「ep」用の端末。60GBのHDDを搭載する。
epは、ユーザーの嗜好にあわせたコンテンツをHDDに自動蓄積するデータ放送サービスや、ショッピングの決済などを組み合わせた複合型のサービスで、epステーションは専用の端末となっている。epのサービスのほか、BSデジタルやCS 110度デジタル放送の受信も可能で、40GBを番組録画に、20GBをepサービス用の専用領域として利用する。
基本操作はリモコンで行なう | 解説 |
ブルーレーザーを用いた光ディスク装置 |
また、ブルーレーザーを用いた光ディスク装置の実動デモも行なわれていた。次世代DVDについては、DVDフォーラムで2003年中に規格策定が終わる見込みで、東芝では規格決定後の早い段階で、市場に製品を投入していきたいとしている。
SDIO対応SDメモリーカードのモックアップなども多数展示されていた。
SDIO対応のメモリーカードモックアップ各種 | LCoS(Liquid Crystal on Silicon)パネルを利用した「LCoSプロジェクションTV」 | 東芝製MPEG-4デコーダLSIを搭載したFOMA端末 今秋発売予定 |
□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□関連記事
【1月21日】東芝、1.8インチHDDを搭載した世界最薄14.9mmのB5ノート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0121/toshiba1.htm
【2001年8月27日】大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」
東芝がコンシューマ市場強化を図る理由
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010827/gyokai10.htm
(2002年1月30日)
[Reported by usuda@impress.co.jp]
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