松下、V字回復に向け、グループ5社を100%子会社化
~シェアNo.1を獲得できる“V商品”を積極的に投入

中村邦夫社長
1月10日発表



会見の様子
 松下電器産業株式会社の中村邦夫社長は、2002年度の経営方針を掲げ、事業ドメインごとの自主責任体制の明確化をはじめとする事業再編、V字回復に向けた「V商品」投入の積極化などによる黒字化を経営目標とすることを明らかにした。

 「20世紀の高度成長期は、グループ内に同じ事業ドメインをもった企業があったとしても、かえって強力な競争力を生み出すことにつながったが、21世紀になって、それが通用しなくなった。また、デジタル時代になり、投資額がかさむようになってきた。重複事業を一本化することで、スピーディーな事業が展開できる」(中村社長)として、14の事業ドメインに集約、同時に、昨年末に一部で報道されていた松下通信工業、九州松下電器、松下精工、松下寿電子工業、松下電送システムの5社の100%子会社化を、今年10月1日付けで実施する。

 これにより、開発リソースの集中および開発、製造、販売の一元化を図り、事業ドメインごとに自己完結の自主責任経営体質を構築する。だが、ビクターに関しては、「強いブランド力があり、独立した形で事業を進めることができる」として、現在の体制を維持する。

 一方、V字回復に向けた取り組みとしては、2002年度のチャレンジ目標として、売上高で前年比5%増以上、営業利益で2000年度実績水準に近づけるとして、2001年度からの赤字脱皮を目指す。また、2003年度には、当初「創生21計画」で掲げた売上高9兆円は達成できないとしたものの、営業利益率5%以上などを目指す。

 V商品に関しては、ボリュームゾーンでシェア占有率ナンバー1を獲得できる製品群を指し、これにより、経営面での貢献を狙う。具体的には、シェア35%を占めているPDPを2002年度には販売数量を倍増させるほか、BSデジタルテレビではシェア50%、DVDレコーダではシェア42%、携帯電話ではシェア21%を目指し、「01年度に、503iシリーズで失敗した携帯電話では、2002年度にはトップシェアを奪還する」と意欲を見せた。

 そのほか、冷蔵庫(目標シェア24%)、洗濯機(同25%)、掃除機(同23%)、エアコン(同17%)などをV商品とし、トップシェアの獲得、維持を目指す。

 なお、デバイス事業に関しては、「超製造業を目指す松下電器にとって、デバイスは重要な製品」と位置づけ、「デバイス事業は、すでに選択と集中をすすめており、グローバルナンバーワン製品をさらに拡大したい」とした。

 また、海外事業に関しては、「海外展開が松下成長のエンジン」とし、とくに中国での生産強化を掲げた。

 すでに、中国華録・松下AVC工場では、DVDの北米輸出開始やゲームキューブの月産35万台生産体制を構築、上海松下プラズマディスプレイでは、今年10月にもPDPパネルの生産を開始する計画である。

 一方、中村社長は、2001年度を振り返り、「厳しい経済環境のなかとはいえ、赤字決算とならざるを得ないことは、責任を感じている」としたものの、「破壊と創造の、破壊が終わり、創造に取り組んだ年」とし、雇用構造改革、研究開発・設計体制改革、拠点の選別/集中、IT革新によるマネジメント改革、家電流通改革、セル生産方式の導入、在庫削減の推進、材料コストダウンの強化、本社改革/風土改革といった9つの取り組みが終わり、「構造改革の手を打ち終えた」とコメントした。

 今回の発表のなかでは、2001年度の総括とともに、2002年度の事業再編が重要な骨子となったが、細かい点に質問が飛ぶと、明言を避ける部分が何度か見られたのが気になるところだ。

 例えば、5社の100%子会社化の具体的なメリットや効果を数値で求める質問に対しては、「現在、回答できる内容の資料が手元にない」とだけ回答、2003年度の売上高9兆円に対する下方修正値についても、「私自身もわかっていない」とするなど、明確な回答を避けた。

 中村社長自身、年末に頸椎を痛め、体調が万全ではないという状況はあったにせよ、経営方針発表とした割には、中村社長の歯切れが悪かった点だけが印象に残る会見となった。

パネルディスカッションの模様

□松下電器産業のホームページ
(1月10日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.matsushita.co.jp/

(2002年1月10日)

[Reported by 大河原 克行]

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