Macworld Conference&Expo /San Francisco 2002 基調講演レポート

スティーブ・ジョブズCEO基調講演レポート
新iMacなどを発表「今日はCRTモニターが公式に死んだ日」

会場:San Francisco Moscone Center
会期:1月7日~11日(現地時間)



 Macworld開催1週間前から、「噂を遥かにこえる内容」などの刺激的なコピーとともにカウントダウンが行なわれたほか、当初1月8日に予定されていた基調講演が7日に変更され、「その不便に見合う内容がある」と主催者のIDGがアナウンスするなど、今回のスティーブ・ジョブズCEOの基調講演は、事前より大きな注目を集めていた。さて、実際の内容はどのようなものであっただろうか?

■ついに噂の新iMacが登場!

 本日の基調講演で一番目玉の発表は新iMac。液晶モニターを搭載し、完全に新しいデザインで登場した。ジョブズはこれによって「今日はCRTモニターが公式に死んだ日」と表現した。Appleは既に純正モニターを全て液晶に切り替えており、CRTを利用しているのはiMacだけであった。

新しい液晶搭載iMacを満面の笑顔で紹介するジョブズ

 同氏は初代iMacからいままでの間に約600万台を出荷しているとし、これは業界最大の出荷数であるという。ここまでポピュラーなiMacであるが顧客からの3つの大きな要望「液晶モニタの採用」、「PowerPC G4プロセッサーの搭載」、「CDとDVD両方を読み書きできるSuperDriveの採用」をかなえるために大幅なデザイン路線変更に踏み切ったとのこと。新iMacの設計には2年が費やされ、当初薄型のマシンを作る事も考えたが、例えば光学ドライブを縦置きにすることなどによるパフォーマンス低下も懸念されるため、無理なデザイン優先を行なわない方針を貫いた結果、液晶モニターと本体部分を分けたという。

 液晶モニター部分は自由に位置を設定できる極めて薄型のデザインである事が強調されていた。本体は電源も含めてコンパクトな形にまとめられており、メモリや無線LAN AirMac用カードの増設は底面を開けるだけで非常に簡単にできる構造になっているという。モニターと本体はクロームのアームでつながっており、引き続き一体型となっている。これは、コンシューマー向け機器は結線をなるべく少なくするため一体型でなくてはいけないというポリシーによるものだそうだ。

 ジョブズはこの新しいiMacが同社のデジタルハブ構想の中核的製品であると主張。iMacには3つのモデルが用意され、800MHz PowerPC G4とSuperDriveを搭載した最高級機(1,799ドル)のほか、700MHz G4でDVD再生とCD-RW利用が可能なコンボドライブ搭載機(1,499ドル)やCD-RWドライブ搭載の下位機種(1,299ドル)も発表。ビデオチップは全モデルとも以前のATI製からNVIDIA GeForce2 MXに切り替えられ、3倍以上高速な3D描画性能が期待できると言う。1月中の最高級機の販売開始を皮切りに、2月に中級機、3月には一番廉価なモデルが提供されるそうだ。なお、別記事においてこの新しいiMacに関して詳細なレポートをお届けする予定である。

舞台の下から新iMacがせりあがってきた。初めての公開である 非常に液晶部分が薄いデザインである事を強調

■大型画面を搭載したiBook

 またジョブズは本日新しく14.1インチ液晶モニターを搭載した大型のiBookも発表している。iBookは2001年で一番成功したモデルであり、このシリーズをさらに増強したいという。同機はPowerPC G3 600MHzとコンボドライブを搭載し1,799ドル。また従来のiBookは各モデルのうち中級機が生産中止となり、下位機種、旧最上位機種の価格が100ドル値下げされた。

■iPhoto---デジタルハブ構想の残り1つデジカメを活用するソフト

ジョブズみずから操作してiPhotoをデモ

 iMacに続いて大きく講演で扱われたのは、新しく登場したデジカメ用ソフトiPhoto。デジカメはコンピューターが無いと活用が極めて限られてしまう点でAppleのデジタルハブ構想に最適な分野という。ただしデジカメの画像を活用するためには「画像転送」→「編集」→「印刷」の段階ごとに、いくつものソフトを使うなど非常にややこしい手順をふまなくてはいけないほか、多くの写真を整理するためにも多くの労力を使う。同社のiPhotoはそうした問題を解決するために用意されたソフトであるという。

 iPhotoでは、デジカメで撮影された写真を整理した後、AppleのサービスiToolsをアプリ側から利用して、簡単にWebアルバムを公開できるようになるほか、スライドショーにする事も可能。さらにはiPhotoから大判印刷やピクチャーブックの印刷を発注する事も可能(現在のところは北米でのみサービス開始予定)。もちろんピクチャーブック制作のためのレイアウトや文字入力などはiPhoto側でテンプレートを利用して制作できる。iPhotoはMac OS X 10.1.2以上で動作し、本日よりAppleサイトから無料でダウンロード可能となる。

デジカメから画像をMacに転送してサムネイル表示するiPhoto フォトブックをiPhotoでレイアウト。様々なテンプレートが用意

■Mac OS XがメインのOSに

 また、本日より、出荷されるMacはMac OS XがデフォルトのOSとなり完全にメインのものとなると発表された。2001年5月よりMac OS 9とMac OS Xの2つがプリインストールされていたが、デフォルトはMac OS 9であった。もちろんMac OS 9も引き続きインストールされており、Mac OS XのClassic環境で利用するか、Mac OS 9から起動するようにもできるという。

 このためにはMac OS Xでネイティブに動作するアプリケーションの充実が不可欠。講演ではMicrosoft Office v.Xに触れたほか、いくつかのサードパーティーなどが壇上にあがりネイティブソフトを紹介。Adobeは既に米国で出荷されているIllustrator 10のほか、DTPソフトInDesign 2.0、Web制作ソフトGoLive 6、そして多くのソフトの中でも特に待ち望まれていたMac OS X対応Photoshopベータ版を初めて公開していた。他にはPalm ComputingよりPalm機とMacの連係に不可欠なPalm Desktop for Mac OS Xの公開ベータ版やApple自身からプロ用ビデオ編集ソフトFinal Cut Pro 3、学術/研究分野向け数学ソフトMathematica、さらにはAspyrから対応ゲームソフトが発表された。

現在一番待たれているMac OS X対応ソフトPhotoshop。ベータ版をはじめて公開 PalmとMacをシンクロさせるPalm DesktopのMac OS X版。公開ベータが入手可能 AppleのFinal Cut ProもMac OS X対応に。高度なカラー補正機能を搭載

■デジタルハブによりPCは第3の黄金期を迎える

 Appleは、ワープロなどの生産性向上用途、インターネット端末に続く第3のPCの大きな波は、様々な電子機器を活用するための中心的存在になる事とし、これをデジタルハブ構想として推進している。今回発表された新型iMacは一般家庭でそのデジタルハブとして最適のマシンとしてアピールされた。またソフトウエア面でもMP3音楽用iTunes、DV用iMovie、DVD制作用iDVDに引き続いてデジカメを活用するためのiPhotoも提供し、4つの大きな分野でソリューションがそろった事になる。

 ジョブズは、現在の景気低迷から競合各社は人員削減やリストラ、ダウンサイジングに懸命であるが、Appleは逆に「革新」を行なう事で厳しい状況を乗り切るという。「我々は未来がどのようなものか見えており、我々は止まらない」と締めくくった。

□Macworld Conference&Expoのページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
□米Apple Computerのページ(英文)
http://www.apple.com/
□関連記事
【1月8日】Apple、15インチ液晶搭載の新型iMacを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0108/apple.htm
【1月8日】アップル、iBookに14.1インチ液晶モデルを追加
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0108/apple2.htm
【1月7日】【MACWORLD直前レポート】
異例づくめのMacworldがサンフランシスコで明日開幕
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0107/macw01.htm

(2002年1月8日)


[Reported by Pierre Fujiki]
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