トピック

モバイルノートで「VRAM不足」は過去のもの。VRAM化するユニファイドメモリ巨大AIモデルをぶん回せる時代に

~高性能クリエイターノートPC「ASUS ProArt PX13」でローカルAIに挑戦

 近頃は手元のPC上で動作させるローカルAIの実用度が格段に増しており、それを快適に動かせるかどうかがPC選びの新基準の1つになりつつある。

 快適なAI処理の実現に最も効果があるのは、GPUのVRAM(ビデオメモリ)容量が大きなものを選ぶこと。なのだが、大容量のものは業務用GPUが中心で、文字通り桁違いの値段になってしまうのがネックだ。

 そうした中で比較的リーズナブルに、しかし強力なAI性能を発揮するとしてにわかに脚光を浴びているのが、AMD Ryzen AI MAX+ 395と大容量メインメモリを搭載するPC。たとえば、ASUS製ノートの「ProArt PX13(HN7306EA-AI9641W)」(以降、ProArt PX13 HN7306EA)はその中でも興味深いモデルだ。

  ProArt PX13 HN7306EAは、64GBものメインメモリを搭載し、これをVRAM代わりにすることでAI処理を加速してくれる一風変わったノートPCだ。 そのうえ、高性能な50TOPSのNPUでCopilot+ PCにも準拠、全方位で隙のないAIノートとしてクリエイティブワークをサポートしてくれる。価格は49万9,800円で、直販サイトでは1割引クーポンが配布中。早速その中身に迫ってみたい。

実用的なローカルAIは「ただ性能がいい」PCでは務まらない

ネットにつながないローカルAIの魅力
ネットアクセスや料金不要で使えるローカルAI

 改めて簡単に説明すると、ローカルAIというのは自分の手元にあるデバイスでAI処理(推論)を行なうというものだ。

 WebやアプリでChatGPTのようなAIツールを使うときは、クラウド側でAI処理が行なわれ、その結果を手元のデバイスに読み込んで表示している。これならPC側の処理負担はほとんどないが、当然ながら使用時はインターネットに接続する必要があり、本格的な活用には継続的なサービス利用料もかかる。

クラウド型を本気で使うとお金が掛かる
クラウド型のAIサービスは高性能だが継続的な費用がかかり、中にはセキュリティが不安なものも

 しかしながら、 AI処理自体をローカルのPC上で実行できれば、ネット接続できない場所でも使えるうえ、サービス利用料も不要なので使い放題。業務に関連する情報をネットを通じてクラウド側に直接送ることもないので、秘匿性を確保しやすい 。これはビジネスユースでは大きなメリットだろう。

 ただ、そうしたローカルAIにおいては、いかに賢く高速に処理できるかが課題になってくる。負荷の大きいAI処理を実用的な速度で実行するためには、PC側に高いスペックが求められるからだ。

ローカルでAIを使うなら定番は外部GPUだが……
AI性能が欲しいならハイスペックなGPUが必要だが、ほかにももっと重要なことがある

 やみくもにCPUやGPUを高速とされているパーツにすればいい、というものでもない。AI処理の高速な実行に高性能なGPUはもちろん欠かせないが、より重視すべきなのはGPUが搭載するVRAM容量。VRAMが多ければ多いほど、賢いAIを実用速度で扱えるようになる。

 その意味では、大容量VRAMを搭載する高性能GPUを採用したデスクトップPCの方が有利だが、どうしても導入コストは大きくなる。電力消費も増えがちなので電気代がかさむうえ、冷却のために騒音も目立ってくる。そもそも巨大な筐体になると置き場所がない、という人もいるだろう。

 コストとパフォーマンスのバランスを取り、快適な仕事スペースを維持しつつ、AIをあらゆる場面でフル活用できるようにする現実的で実用的なPC環境。それにぴったり当てはまるのが、ASUSのProArt PX13 HN7306EAというわけだ。

このコンパクトサイズで外部GPU並みの性能
小さいのにAI性能が高い、というのがこれからの当たり前に?

64GBの「ユニファイドメモリ」で使えるAIの幅が広がる

 ProArt PX13 HN7306EAがなぜ現実的で実用的な選択肢なのか、まずはスペックから見てみよう。

 今回使用したProArt PX13 HN7306EAは、Ryzen AI MAX+ 395をプロセッサに採用した13.3型ノートPCで、GPUはプロセッサ内蔵のRadeon 8060S Graphicsを搭載する。NPUも内蔵し、メインメモリは64GBだ。

Ryzen AI MAX+ 395が超重要
AMDのRyzen AI MAX+ 395とRadeon 8060S Graphicsを搭載
【表】試用機のスペック
ASUS ProArt PX13 HN7306EA
OSWindows 11 Home
CPURyzen AI MAX+ 395
(16コア32スレッド、最大5.1GHz、TDP 55W)
GPURadeon 8060S Graphics (プロセッサー内蔵)
メモリ64GB (LPDDR5-8000)
ストレージ1TB (PCIe 4.0 NVMe M.2 SSD)
ディスプレイ13.3型 OLED(2,880×1,800ドット、60Hz、タッチパネル)
インターフェイスUSB4 2基、USB 3.2 Gen 2、HDMI、microSDカードスロット、207万画素Webカメラ、ヘッドセット端子
ネットワーク機能Wi-Fi 7、Bluetooth 5、2.5Gigabit Ethernet
キーボード84キー日本語キーボード
サイズ約298.2×209.9×15.8~17.7mm
重量約1.39kg
価格49万9800円(1割引クーポンあり)

  ProArt PX13 HN7306EAのポイントの1つは、この64GBメモリが「ユニファイドメモリ」であるということ。 OSやアプリケーション用のメモリと、グラフィックス用のVRAMを共通のメモリ領域から割り当てる仕組みで、そのサイズは動的に変更したり、静的に割り当てたりすることが可能になっている。

ユニファイドメモリなので容量を決められる
プリインストールソフトでメモリの割り当てをカスタマイズ可能

 ローカルAIを実行する際、使用するAIツールによっては、自由に使えるVRAM(ユニファイドメモリ)のサイズがパフォーマンスに大きく影響することがある。AIモデルの巨大なデータがVRAMに収まれば高速に実行され、反対に収まらなければ遅くなるという単純な話だ。メモリ容量が少な過ぎると、読み込めずに実行できない、なんてこともある。

  AIモデルのデータサイズは1つあたり数GB~数十GBが当たり前で、賢いAIモデルほど読み込むべきデータは通常大きくなる。従って、大容量のユニファイドメモリによって、必要に応じて動的にAIが使うVRAMを拡張できるProArt PX13 HN7306EAなら、活用できるAIモデルの幅も広がるというわけだ。

大容量のAIモデルが使える
数十GBの巨大なAIモデルデータも、ProArt PX13 HN7306EAなら読み込める

ディスプレイもキレイでノートPCとして申し分なし

 いったん話を変えて、ノートPCとしてのほかのスペックも見てみると、ディスプレイはタッチパネルで、2,880×1,800ドットの高精細OLED(有機EL)を採用している。DCI-P3を100%カバーする色空間の広さも特徴で、グラフィックスを扱うクリエイターにも最適なスペックだ。

OLEDなので高精細
2,880×1,800ドットのOLEDタッチディスプレイ

 ストレージは1TB(NVMe SSD PCIe 4.0 x4接続)と通常用途においては十分に大容量。だが、ローカルAI活用時は少し気になる。先ほど触れた通りモデルデータのサイズは1つあたり数GB~数十GBにおよび、用途に応じて適したAIモデルをダウンロードしておく必要があるためストレージを圧迫するかもしれない。

 しかしその問題は、両サイドに1つずつ備えるUSB4ポート(40Gbps)を使い、外部ストレージを接続してそこにモデルデータを置いておけば解決できる。後述するが、最近はストレージの節約にもつながる別の仕組みが利用できるので、ゴリゴリにローカルAIを使ってもメインストレージが容量不足にならないよう対策可能だ。

高速なUSB4が2基もある
USB4ポート2基を左右に1つずつ備えており、使い勝手が良い

 ほかにはUSB 3.2 Gen 2(10Gbps)のType-Aポートが1基、microSDカードスロット、HDMI出力といったインターフェイスも用意しており、13型クラスのノートPCとしてはリッチな構成。Wi-Fi 7対応の高速ネットワークも利用できる。

 これらの装備、性能が縦横サイズ約298.2×209.9mm、厚み15.8~17.7mm、重量約1.39kgというコンパクトな筐体に詰め込まれている。それでいながらアメリカ国防総省の軍用規格の1つである「MIL-STD 810H」に準拠した耐久性も備え、マットブラックの金属外装ともあいまって質実剛健な印象だ。

軍用規格に準拠したタフなボディ
MIL-STD 810H準拠の頑丈な筐体

30GB超のAIモデルもぶん回る!持ち運べるAIワークステーション

 では、ProArt PX13 HN7306EAがローカルAI処理でどれほどの性能を出せるのか確かめてみよう。今回はオープンなAIモデルが使える「LM Studio」を用い、データサイズの大きなものをロードして、ユーザーのプロンプトに対する処理の速さ(トークン/秒)を見てみることにした。

VRAMは自動割り当てでもOK
「ProArt Creator Hub」アプリではVRAMの割り当てを手動で変えられるが、LM Studio利用時は「推奨」にしておくのがおすすめ

 ちなみにLM StudioでAIモデルをダウンロードするときは、そのAIモデルを高速に実行できるかどうかの目安をあらかじめ知ることができる。たとえば「完全なGPUオフロードが可能」と表示されていれば高速だが、「部分的なGPUオフロードが可能」や「おそらくこのマシンには大き過ぎます」だと低速になると予想できる。

 今回の試用機とは異なるメモリ64GB+ディスクリートGPU(VRAM 12GB)のデスクトップPCだと低速予想になるAIモデルでも、ユニファイドメモリ64GBのProArt PX13 HN7306EAでは「GPUに完全に読み込める」となる場合がある。この部分だけを見ても本製品のAIノートPCとしての優秀さが分かるというものだ。

ユニファイドメモリの恩恵が生きる
同じメモリ容量64GBの別PCでは「部分的なオフロード」となっていても……
ProArt PX13 HN7306EAならフルにGPUへオフロードできる場合がある

 というわけで、比較的新しく、データサイズが20~30GBクラスのAIモデル3種を使ったときの速度を下記グラフにまとめた。数値としては「20トークン/秒」を超えればかなり高速とされ、実用上不満に感じないレベルになるが、ProArt PX13 HN7306EAはそれを大きく上回っている。

ローカルAI実行時の速度比較

  30GB超のAIモデルでも実用速度が得られているのは驚きで、ローカルAIだけに頼って仕事するのもかなり現実的だ。モバイルノートなので、出先のネットにつながらない場所でAIが普通に使えるのも強い。まさに持ち運べるAIワークステーションといえそうだ。

高性能AIノート1台が仕事場のAIプラットフォームになる

 LM Studioに最近追加された「LM Link」という機能も紹介しておきたい。これは、LAN内でLM Studioを立ち上げているPCの計算資源を、別のPCから利用できるというもの。要するに、高性能なPCをAIサーバーに見立てることで、低性能なPCでも高速なAI処理が行なえるのだ。

LM LinkでAIサーバー化
LM Studioに最近追加された機能「LM Link」

 ProArt PX13 HN7306EAをAIサーバーにすれば、ほかのPCからでも高いAI性能を利用できるし、反対にさらに高性能なデスクトップPCが自宅やオフィスにあるなら、それをAIサーバーにしてProArt PX13 HN7306EAから利用するのもOK。モデルデータはAIサーバー側にあればいいので、ProArt PX13 HN7306EA側でダウンロードしておく必要はなく、ストレージを節約したいときにも便利だ。

ほかにPCにAI処理を任せられる
LAN内にある別のPCからProArt PX13 HN7306EAの状況を確認。ロード済みのAIモデルを使えば、別PCのAI処理を肩代わりさせられる

 つまり、ProArt PX13 HN7306EAが1台あれば、ほかのPCも高性能AIマシンになるわけで、家庭・オフィス全体のAI活用を促進するいわば「AIプラットフォーム」にもなるポテンシャルを秘めているといえるだろう。

 ここまではテキストメインのAIツールを試したが、ProArt PX13 HN7306EAの性能があれば画像生成ももちろん余裕だ。AMDのプロセッサに最適化されたツール「Amuse」を使うと、プロンプトで指示した内容の静止画像や動画を生成でき、手書きのラフイラストからリアルなイメージを生み出すこともできる。

 2,048×2,048ドットという高解像度の静止画像も1枚あたり70秒で生成し、1,408×896ドット、4秒の動画は140秒程度で完成した。イラストからの画像生成は数秒~10秒ほど。OLEDディスプレイのおかげで画像の見栄えも上々だ。クラウドで利用できる最新の画像生成AIに比べれば不自然さが残るところもあるが、資料に差し込むイメージ画像として使う分には十分に役立つだろう。

ローカルでの画像生成も問題なし
2,048×2,048ドットの高解像度な静止画を生成
1,408×896ドットの動画もサクッと出来上がる
落書きのようなイラストが高精細なグラフィックスに

高性能NPU搭載のCopilot+ PCで、Web会議、調べものが効率的に

 ProArt PX13 HN7306EAはCopilot+ PCということで、ローカルAI処理に長けた50TOPSのNPUを活用するOS機能も利用できる。その1つは、Webカメラの映像に対して背景ぼかしや自動フレーミングの効果を加えられる「Windows スタジオ エフェクト」。NPUが処理を支援してCPUやGPUの負荷を減らすため、Web会議中にほかの作業がもたついたりしないのがメリットだ。

Windows スタジオ エフェクト
CPUとGPUの負荷を最小限に抑えながら背景ぼかしなどができる「Windows スタジオ エフェクト」

 Windowsキーを押しながらマウスクリックすると、画面のスナップショットを撮影して、その中の任意の要素に対してアクションを実行できる「Click to Do」という機能もNPUがサポートする。画像内の文言をテキストとしてコピーしたり、選択した画像をCopilotに送って質問したり、といった操作を簡単にこなせる機能だ。

Click to Do
画面のスナップショットから情報抽出してさまざまなアクションを実行できる「Click to Do」
Webから抽出した画像をもとにCopilotに質問してみたところ

 そして、ある意味その全自動版といえるのが「リコール」機能だ。ユーザーのデスクトップ作業の履歴をスナップショットとして自動記録し、後で振り返ることができるもの。過去に何をしていたかを確認できるだけでなく、その時々のスナップショットからテキストや画像を抽出できたりもするので、操作ミスで失ってしまった過去データを復元する助けにもなる。

リコール
過去の作業を遡って確認し、情報の抽出もできる「リコール」機能

本格3Dゲームもヌルヌル動く高いポテンシャル

 Ryzen AI MAX+ 395とRadeon 8060S Graphicsという組み合わせのProArt PX13 HN7306EAは、ゲーミング性能が高いのも強みの1つだ。たとえば「モンスターハンター ワイルズ」で一定のルートで歩き回ったときの平均フレームレートを計測した結果が下記のグラフ。

「モンスターハンター ワイルズ」でのフレームレート計測結果

 AMD FSRによるフレーム生成が効果的に働き、2,560×1,600ドットと解像度が高いにも関わらず、画質プリセットを「ウルトラ」にしても80fpsを超えた。アップスケーリングも行なわれているが、画質の劣化は感じられない。ゲーミングノートとしてもいうことなしの実力だ。

いよいよモバイルノートでローカルAIを使いこなす時代に

  これまでだと、ローカルAIにまともにチャレンジしようと思えば巨大なGPUを搭載したデスクトップPCが必要、というのが当たり前だった。しかし、そんな時代はもう終わりを告げつつあるようだ。

 余計なコストやセキュリティ不安なしにAIツールを使い倒すことができ、Copilot+ PC準拠でNPUを活用した効率的な作業も可能。そして、ゲームも息抜き用のカジュアルなものだけでなくバリバリの本格3Dまで平気でこなせてしまう。これらをどこにでも持ち運べる13型クラスのノートPCで実現している、というのはなかなかのインパクトではないだろうか。

 それを可能にしているのはRyzen AI MAX+ 395と64GBの大容量ユニファイドメモリで、今後はこうしたAI処理向けプロセッサと大容量メモリがトレンドの中心になるように思える。筐体そのものやディスプレイの品質も高いASUSの「ProArt PX13 HN7306EA」は、その中で大本命の1台になりそうな予感だ。