イベントレポート
先端デジタルテクノロジー展で、空間ディスプレイや空間触覚デバイスなどを体験
2019年4月4日 13:03
東京ビッグサイトにて開催されているコンテンツ東京 2019にて、最先端のVR/AR/MR技術などを展示する「先端デジタルテクノロジー展」が本日から4月5日までの期間で実施されている。
一般は受け付けておらず、業界関係者向けのハードウェア/ソフトウェア製品の商談の場となっており、約110社が参加。公共/娯楽施設や作業現場といった用途へのVRソリューションの提案が行なわれている。ここでは会場でとくに目を引いた出展物を紹介していきたい。
“横G”を再現したVRドライビングシミュレーター
株式会社アイロックは、VR HMDを組み合わせたドライビングシミュレーターを展示していた。キモとなっているのは4軸モーションに対応するシートで、車体そのものの動きによる振動のフィードバックのほか、ハンドルを切った反対側にシートを動かすことで横Gによる慣性力のフィードバックをも可能にしている。
ドライビングシートにはアクセル/ブレーキ/クラッチ/ギアまで細かく用意されており、物理モデルによってより現実的なフィードバックが得られるようになっているという。実際に仮想のF1マシンに試乗してみたところ、アクセルを踏みすぎてコーナーを曲がりきれなかったりしたさいの、振動や横Gは確かに現実に近いものを感じられた。
もちろん筆者はレーシングカーのようなものには乗ったことがないので、どのくらいの正確さがあるのかは不明だが、実際にドライビングスクールなどに導入済みとのことで、かなり精密に作られているようだ。
横Gがない2軸のモデルも用意されており、こちらはブレーキの衝突テストを試すことが可能だった。前方の車に当たる嫌な感触や、急ブレーキ時の制動距離内での反動などもきちんとフィードバックされており、こちらのほうが筆者としてはわかりやすかった。
なお、VR HMDにはSamsungのOdysseyが使われていた。
4K表示に対応するスタンドアロン型VR HMD
国内では法人向けとして4月末に出荷予定とする中国Pico Technologyが開発したスタンドアロン型VR HMD「pico G2 4K」が展示。その名のとおり、4K(3,840×2,160ドット)解像度に対応しており、緻密な映像表示が可能。
プロセッサはSnapdragon 835を採用し、液晶ディスプレイのリフレッシュレートは75Hz、遅延は20ms以内。3,500mAhのリチウムイオン電池を搭載し、約3時間の連続稼働が可能。コンシューマ向け製品ではないため、用意されているSDKでソフトウェアの開発を行なう必要があり、現行で対応しているVRプラットフォームはないという。
バッテリを後頭部のサポート部分に配置することで、重量配分が前部にかかりすぎないようになっており、首への負担が少ないとしており、実際に装着感は良好だった。残念ながらデモは実写のクワガタの映像を見るだけと、インタラクティブなものは用意されていなかったが、4KによるVR HMDでの効果は抜群で、現状の2Kクラスのものと比較すると、より没入感を得られるという実感があった。
超音波を使用したハプティックデバイス
英ブリストル大学発のUltrahapticsは、触覚フィードバックを使ったハプティクス技術として、超音波を使用して空中で触覚を与えるデバイス「STRATOS Explore」を展示。体験者はとくになにかにさわることなく、皮膚感覚を得られるのが特徴だ。
STRATOS Exploreは指先ほどの大きさの超音波発信器が多数敷かれた平面デバイスで、各発信器は独立動作する。手をかざすと手前にあるセンサーが手の位置を読み取り、コンテンツの内容に応じて適切に発信器を作動させ、指先や手のひらに振動を与えるようになっている。
超音波装置は人体の診断装置など、世のなかで広く使われているが、触覚が得られるように40kHz程度の振動を変調をかけつつ発しているという。実際に手をかざしてみると、下から微弱な風が当てられたような感触が得られる。デモ機ではオーブのようなものに手をかざすと、魔法でオーブが放電するような演出がとられており、その放電が手の位置や角度に応じて触覚を与えていた。
このほかにも、ものをさわったり、壊したりといったデモが用意されていたが、確かに手の位置を的確に検出して振動を与えているものの、感触の強さが一様であり、どれも同じように手に風が当たっているようにしか思えなかった。ただ、係員に聞いたところでは現在デバイスの出力を40kHz以上に高めても人体に影響が出ないか、検証/確認を行なっているとのことで、さらに出力を高められるのであれば、多様な変化を演出できるかもしれない。
導入事例としては、米国ラスベガスのカジノにて、ホログラフィックでマシンから流れてくるコインにふれた感触であるとか、パズルを並べるマシン(係員はスロットマシンと言っていた)でのパズルのピースの操作のフィードバックなどに使われているとのこと。車載や家電装置、VR/AR体験でのフィードバックとして展開を行なっているという話だった。
回転するLED搭載ブレードによる残像を利用したディスプレイ
株式会社Life is Styleは、3D映像を空間上に表示できる「3D Phantom」を展示。残像で文字などを浮かび上がらせるLEDペンライトがを見たことがある人は多いと思うが、技術的にはその応用となっており、LEDライトが組み込まれたブレードを飛行機のプロペラのように搭載させ、それを550~1,500rpmで回転させて残像を作り出し、複数個を組み合わせて縦横にならべることで、大型ディスプレイとして映像を表示可能にしている。
ブレードの数は1本または4本で、ブレードが多いほうが高解像度化が可能。1つあたり最大で1,024×1,024ドット、輝度は1,600cd/平方mのものまで用意されている。各装置は無線でオペレーション用のPCに接続されており、一括で操作する。クラウド経由でデザインを入手することも可能。モーターが熱を持つため、18時間に一度は1時間程度の停止が必要という。
ブレードが高回転で回っているとのことで、当然ファンのような音がするが、アクリルカバーをつけるなどして多少抑制できる模様。ライブイベントやSHIBUYA109の運営施設などでの導入例があるそうで、見かけた方も多いかもしれない。なお、単体での価格は50~70万円程度とのことだった。
霧を使ったインタラクティブなディスプレイ
ポーランドION Conceptはプロジェクタの映像を霧に表示させるとともに、Kinectを使って映し出されたアイコンなどを操作可能にした「ミストディスプレイ」を展示。
霧を噴出する幅300mmの装置が入り口のように設置されており、その霧に対して高輝度対応のプロジェクタの映像を当てることでディスプレイとして機能させている。霧に表示させているので、空気の流れを受け映像はふらふらと不安定だが、逆に幻想的な演出を与えることに成功している。なお、1時間で4Lの水を消費するとのことで、外部にタンクが設置されているそうだ。
オプションとしてKinectを利用できるインタラクティブキットが用意されており、前述のように表示されたオブジェクトへのタッチ操作に応じて、別のオブジェクトに入れ替えたり、文字を書いたりといった動作をさせることができる。展示会やイベントなどで利用されているとのこと。
複数人でVR空間を共有するマルチプレイヤー型のVRシステムなど
株式会社ソリッドレイ研究所は、複数のVR HMDを1つの仮想空間上で使用可能にするシステムの「OmegaSHIP」を展示。
VR HMDはVIVEが用いられ、VIVE 1台につきPCも1台使用するが、それらを取りまとめるオペレーション用PCを別途用意。各PCは有線LAN経由でオペレーション用PCと接続され、それによって空間の共有を可能にしている。
各種製品の複数人による検証やアミューズメント施設向けの提供を考えているとのことで、デモでは3人で宇宙人を倒すゲームを体験することができた。
このほか、会場では工事といった現場向けのシミュレーション用VRソリューションを多く見かけた。