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Arm、2026年の新GPUでAIアクセラレータを追加。GPUの負荷を最大50%低減

AIアクセラレータと超解像技術を組み合わせたNSSを利用すると最大50%の負荷軽減を実現

 英Armは、8月12日(現地時間)に報道発表を行ない、同社が今後発表する予定の新GPUにおいて、AIアクセラレータの機能を実装することを明らかにした。既にAMD、Intel、NVIDIAなどのGPUには、AI推論処理を高速化するアクセラレータが内蔵されているが、Armもそれに続くことになる。

 また、Armは既に超解像技術「Arm ASR」(Arm Accuracy Super Resolution)」の開発意向表明を行なっているが、今回はAIアクセラレータの機能を利用した「Arm NSS」(Arm Neural Super Sampling)の開発意向表明も行ない、GPUのレンダリングエンジンへの負荷を最大50%減らしながら、より高品質なゲーム描画などをモバイル機器でも可能にする計画だ。

ArmのGPU「Immortalis」でAIアクセラレータ内蔵計画が発表される

Armの次世代GPUでAIアクセラレータ(Armの呼び方はニューラルアクセラレータ)が導入される

 AMDは「AIアクセラレータ」、Intelは「XMX」、NVIDIAは「Tensorコア」など、各社それぞれ呼び方や機能などは異なっているが、AI推論を高速に処理するアクセラレータをGPUに内蔵している。主に行列演算などを高速に処理することで、AI推論時の性能を引き上げる役割を担う。

 俗に「xxTOPS(Tera Operations Per Second)」と呼ばれる数字で表現されるのがその性能で、このGPUは100TOPSという時には、GPUに内蔵されているAIアクセラレータの性能が100TOPSだということを意味している。最近はAIへのニーズの高まりにより、そうした性能が重要な指標の1つになりつつある。

 一方現在のところ、Armが顧客に提供しているGPUの最新版となる「Immortalis G925」にはこうしたAIアクセラレータは搭載されていない。AIの演算は、レンダリングエンジンになる浮動小数点演算ユニットを利用して演算することになるため、専用のAIアクセラレータで演算する場合に比べて性能的に不利になってしまっていた。

ArmのGPU技術導入の歴史

 そこでArmは、2026年に登場する見通しの未発表GPUにおいて、新開発するAIアクセラレータ(Armの呼び方としてはニューラルアクセラレータだが、以下AIアクセラレータで統一する)を実装する計画だと明らかにした。現時点では詳細は明らかにされていないが、AMD、Intel、NVIDIAが既にGPUに内蔵しているようなAIアクセラレータであることが想定される。

 なお、通常Armは6月に新しいCPUやGPUのIPデザインを発表する。昨年(2024年)で言えば、6月に開催されるCOMPUTEXに合わせてCPUの「Cortex-X925」とGPUの「Immortalis-G925」が発表されているが、今年(2025年)はCOMPUTEXのタイミングでは新しいCPUやGPUは発表されていない。今回2026年に出荷される機器に採用されるGPUでAIアクセラレータが内蔵されると明らかになったことで、今後どこかのタイミングでそのGPUが発表される可能性が高くなってきた。

AIアクセラレータを利用した超解像技術「NSS」の提供計画も明らかに

超解像度技術「ASR」にAIアクセラレータを利用した機能を追加するNSSも導入予定

 Armは今年前半にArm ASRと同社が呼んでいる超解像技術を将来のGPUに搭載する開発意向表明を行なっている。今回、AIアクセラレータの2026年製品採用GPUに内蔵されると明らかにしたことに合わせて、その機能を利用したArm NSSの開発意向が示された。

 Arm NSSは、ASRに処理にAIアクセラレータが利用されるもので、最大で4msという低遅延で超解像処理を行なえるという。Armによれば、こうしたNSSを利用することでGPUの負荷を最大で50%軽減することが可能になる。

NSSを利用することでGPUの負荷を50%軽減できる
NFRUやNSSDなどの機能拡張が行なわれる予定

 こうしたAIアクセラレータを利用したスーパーサンプリングは、今後フレームレートのアップスケーリング(Neural Frame Rate Upscaling)、デノイズ機能を伴うスーパーサンプリング(NSSD: Neural Super Sampling Denoising)などに発展させていきたい意向で、今後も機能拡張が続けられる計画だ。

Neural Graphics Development Kitを提供
Vulkan APIにArm ML拡張が追加される予定

 なお、こうしたArmのGPU向けAIアクセラレータに対応するソフトウェア開発キット「Neural Graphics Development Kit」は、オープンな開発キットとして提供される計画。NSSのモデルはHugging Face経由で提供され、サンプルコードはGitHub経由で提供されることなどが明らかにされている。今後ゲーム開発者向けなどにアーリーアクセスプログラムなどが提供予定だ。