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■■ ソニー、5GHz帯を利用するIEEE 802.11a無線LANシステム
~転送速度は最大54Mbps
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011001/sony.htm
●IEEE 802.11a
アイトリプルイーはちまるにいてんいちいちエー
IEEEが'99年に標準化した、5GHz帯を使い最大52Mbpsの伝送速度を実現する無線LANの規格。
IEEE 802.11は、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers ~米国電気電子技術者協会)の802.11委員会で標準化が行なわれている無線LANの規格である。'97年に策定された最初の規格では、2.4GHz帯の無線と赤外線の2種類の物理層を使用。無線はさらに、周波数を高速に切り替える周波数ホッピング方式のスペクトラム拡散(FHSS~Frequency Hopping Spectrum Spread)と、擬似雑音を加えて広い帯域に拡散する直接拡散方式のスペクトラム拡散(DSSS~Direct Sequence Spectrum Spread)の2方式が規定されており、いずれも最大2Mbpsの伝送速度を実現する。
'99年には、IEEE 802.11aとIEEE 802.11bの2つの規格が承認される。802.11bは、従来の2.4GHz帯を使うDSSS方式の無線LANに、最大11Mbpsの伝送モードを追加した拡張規格で、一般に使われている無線LANがこのタイプ。現在は、さらなる高速化(20Mbps以上)を図る802.11gの標準化も進められている。
一方の802.11aは、物理層に5GHz帯の無線を使用する。この帯域は、米国では5.15~5.25GHz(200mW)、5.25~5.35GHz(1W)、5.725~5.825GHz(4W)の3バンド……計300MHzが、無免許で利用できるU-NII(Unlicensed National Information Infrastructure)として認可されている。日本国内では、気象レーダーなどに使われている帯域と重複するため、無免許の特定小電力無線で利用できるのは5.15~5.25GHzの100MHzのみ。 空中線電力は10mW以下で、屋内での使用に限定されている。
802.11aでは、狭帯域の搬送波を複数使って伝送する、OFDM(Orthogonal FrequencyDivision Multiplex~直交周波数分割多重)という変調方式を用いる。1チャンネルあたりの占有周波数帯幅は16.6MHzで、国内で使用できる5.2GHz帯には、ガードバンド含む20MHzの帯域が4チャンネル用意されている。伝送は、この帯域内を0.3125MHzの狭い帯域に分け、それぞれに搬送波(サブキャリア)を立てる。サブキャリアは、データ48本、パイロット信号4本の計52本あり、個々のサブキャリアを0.25MHzの変調速度で個別に変調。全体を使ってデータを伝送する。
サブキャリアの変調には、1bit変調のBPSK(※1)、2bitのQPSK(※2)、4bitの16-QAM(※3)、6bitの64-QAMの4種類。コーディングレート(データビットを割り当てる割合)には、1/2、2/3、3/4の3種類があり、表のような8種類の伝送速度が規定されている(※4)。ちなみに1/2コーディングが必須で、残りはオプションである。
【IEEE 802.11aの8種類の伝送速度】
伝送速度 | 変調方式 | コーディングレート |
---|---|---|
6Mbps | BPSK | 1/2 |
9Mbps | BPSK | 3/4 |
12Mbps | QPSK | 1/2 |
18Mbps | QPSK | 3/4 |
24Mbps | 16-QAM | 1/2 |
36Mbps | 16-QAM | 3/4 |
48Mbps | 64-QAM | 2/3 |
54Mbps | 64-QAM | 3/4 |
なお、誤解の無いよう付け加えておくと、802.11aが802.11bよりも高速なのは、周波数が高いからではなく、より高度な技術を用いて電波を効率良く使っているからである。よく高い周波数帯の方が高速伝送に向いているといわれるが、これは、一般に高周波帯の方がより広い帯域幅が利用できるからだ。同じ技術を用いた場合には、占有周波数帯幅が広いほど高速な伝送が行なえるのだが、802.11a/bにはこれは当てはまらない。むしろ、2.4GHz帯の802.11bの方が、若干広い帯域を占有している。法令上も、5.2GHz帯の占有周波数帯幅が18MHzなのに対し、2.4GHz帯は26MHzまで許容されているので、国内の場合には、2.4GHz帯の方が高速化に向いているといえる。
※1 BSPK(Binary Phase-Shift Keying)は、反転する2つの位相の遷移にビットを割り当てて変調する方式。
※2 QPSK(Quaternary Phase Shift Keying)は、90度間隔の4種類の位相の遷移に2bitのシンボル(ビットパターン)を割り当てて変調する方式。
※3 QAM(Quadrature Amplitude Modulation)は、位相と振幅を組み合わせた変調方式で、直交する(位相差が90度)2つの信号をそれぞれ振幅変調して合成する。16-QAMは4レベルで、64-QAMは8レベルで振幅変調するので、それぞれ16、64通りの状態を表すことができ、これにシンボルを割り当てる。
※4 例えば64-QAMは「6bit×0.25MHz×48キャリア=72Mbps」の容量があるが、54Mbpsはこの3/4を使ってデータを伝送。残りの18Mbps分をエラー訂正用のコードに割り当てる。したがって同じ変調速度と変調方式であっても、低速な方が誤り率が低い。
□802.11 Working Group
http://www.ieee802.org/11/
□ARIB(Association of Radio Industries and Businesses of Japan)
社団法人電波産業会:国内の技術基準を策定している機関
http://www.arib.or.jp/
□TELEC(Telecom Engineering Center)
財団法人テレコムエンジニアリングセンター:技術基準適合証明を行なっている機関
http://www.telec.or.jp/
【参考】
□IEEE 802.11b
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991007/key93.htm#IEEE_802
□Wi-Fi(WIreless FIdelity)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001201/key145.htm#WiFi
□直接拡散方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991125/key99.htm#DSSS
□周波数ホッピング方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000622/key124.htm#FH-SS
□各種デジタル変調(Broadband Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/broadband/column/infra/2001/09/26/
■■ 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
ゲーム機向けの機能拡張を最小限のコストで実現したゲームキューブの「Gekko」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011003/kaigai01.htm
●FIFO(First-In First-Out)
ファイフォ、フィフォ
先入れ先出し方式。
先に格納したものから、格納した順に取り出すことのできるメモリ。あるいは、そのように構成された記憶装置、記憶方法。バッファなどに用いられるタイプがこれで、格納した逆順……すなわち最後のものから順に取り出すタイプは、FILO(First-In Last-Out~ファイロ、フィロ)という。スタックメモリの場合は、こちらのFILOタイプだ。
■■ カシオ、Pocket PC 2002を搭載したPDA「E-200」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011005/casio.htm
●StrongARM
ストロングアーム
Pocket PCなどのPDA(Personal Digital Assistant)に採用されている、Intelの32bit組込み用RISCプロセッサ。
StrongARMは、ARMとDEC(Digital Equipment Corp ~'98年にCompaq Computerに買収)が共同で開発したARMアーキテクチャのCPUで、'95年にリリースされた。'97年、DECとIntelとの間で、特許侵害に関する訴訟合戦が繰り広げられ、同年10月に和解する。この和解条件の1つとして、DECは、マサチューセッツにあるAlpha製造ラインをIntelに譲渡。この譲渡に伴なって、IntelはStrongARMの権利も獲得し現在に至っている。
ARMアーキテクチャのCPUは、ARMがCPUコアを設計し、チップベンダがそのライセンスを受けて製造する。したがって、通常はARMのコアがそのまま搭載されるのだが、Intelの場合には、コアを改良する権利も有しており、2000年には、改良されたマイクロアーキテクチャとARMの最新命令セットを搭載した、新しいStrongARMをリリース。これを「XScale」と呼んでいる。
□StrongARM Processor Home(Intel)
http://www.intel.co.jp/jp/developer/design/strong/index.htm
【参考】
□RISC(Reduced Instruction Set Computer)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971216/key11.htm#RISC
■■ シチズンとIBM、Linux搭載の“腕コン”「WatchPad 1.5」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011011/citizen.htm
●ARM(Advanced RISC Machine)
アーム
RISCマイクロプロセッサの設計開発とライセンシングを行なっている英国のIPベンダ。および同社が設計したCPUコア、それを使ったCPU。
ARMは、元々は英国のAcorn Computerが、同社のパソコン用に開発した32bitのRISCプロセッサで、Acorn RISC Machineの頭文字をとって「ARM」と命名された。'90年には、同社をスピンアウトした開発者がAdvanced RISC Machineを設立し、ARMの設計開発は同社に移転。社名からARMプロセッサの名はそのまま継承され、'91年に最初の組込み用RISCコア「ARM6」をリリース。'98年には、社名もARM Limitedに変更された。
ARMは、チップそのものを製造する一般的な半導体ベンダとは異なり、設計したモジュールを他社にライセンスするIPベンダ(※1)である。したがってARM社製のCPUなどは存在しないが、同社のパートナーには、大手半導体ベンダーが名を連ねており、ARMコアのCPUや制御チップが各社からリリースされている。
高性能で消費電力が少ないARMプロセッサは、携帯電話やデジタルカメラなどの組込みCPUとして人気が高く、任天堂のGAMEBOY ADVANCEのCPUにも使われている。Intelからは、DECとの共同開発から生まれたStrongARMコアを使ったCPUがリリースされており、Windows CEやPocket PCマシンに採用されている。
※1 IP(Intellectual Property)は、一般には知的所有権という意味だが、半導体業界ではチップ内の機能モジュールのことをIPといい、これを設計する会社をIPベンダと呼ぶ。
□ARM
http://www.arm.com/
[Text by 鈴木直美]