鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第176回:7月23日~7月27日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


7月23日

■■ エプソン、USB 2.0対応の2,400dpi A4スキャナなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010723/epson.htm

●フォトダイオード(photo diode[PD])

 光を電気に変換する半導体素子。

 電気が流れやすいものを導体、流れにくいものを絶縁体といい、これらの中間的な性質を持つものを半導体という。単体で半導体の性質を持つのが、シリコン(ケイ素)やゲルマニウムで、常温ではほとんど電気を流さない絶縁体の性質が、温度を上げたり僅かな不純物を添加することによって変化する。

 例えば、シリコンにヒ素を加えると電子が余った状態に、ホウ素を加えると電子が足りない状態になり(※1)、電気が流れやすくなる。これは、前者は余った電子が、後者は電子の足りないホール(正孔)が電荷の伝導を担うからで、電子が担う電子過多の半導体をN型半導体(Nは負電荷を表すNegativeの頭文字)、ホールが担う電子不足半導体をP型半導体(Pは正電荷を表すPositiveの頭文字)という。そして、これら2種類の半導体を接合し(PN接合)、両端に端子を付けた半導体素子がダイオードである。

 PNの接合面付近は通常、N型の電子とP型のホールが中和しあい、電荷を運ぶ電子や正孔が不在の状態になっているが(空乏層という)、ここに光をあてると光のエネルギーによって電子とホールの対が発生する。ダイオードのP型に「-」、N型に「+」の電圧をかけたとしよう(逆方向バイアスという)。通常はほとんど電流は流れないのだが、空乏層に電子とホールが発生すると、発生した電子とホールの量……すなわち光エネルギーの強さに応じて電流が流れるようになる。これを検出すれば、光を検知したり光量を測定したりできるというわけだ(※2)

 ちなみに、ダイオードという名前は、もともとは二極真空管の意味で、現在はこのような2端子型の半導体素子のことを指す。3端子型のものはトランジスタといい、フォトトランジスタは、ベースに光をあてるとコレクタに電流が流れる。また、フォトダイオードと全く逆の動作をするものもあり、電流を流すと光るのがお馴染みの発光ダイオード(LED~Light Emitting Diode)。発光ダイオードとフォトダイオードを向かい合わせれば、電気信号を光学的に伝送することができ、これを1つのデバイスの中で行なっているのが、フォトカプラである。

※1 原子を結びつける最外殻電子(いちばん外側の軌道にある電子)が、シリコンには4個(4価の元素)あり、通常は電子を2個ずつ共有する形で(共有結合)シリコン原子どうしが結びついている。ヒ素は5価の元素で、これがシリコンの中に入り込んで結合すると、ヒ素の原子1個につき電子が1個が余ってしまい、電子余剰状態になる。一方のホウ素は3価の元素で、これが結合すると電子が1つ足りない電子不足状態になる。

※2 光電変換の基本原理は太陽電池も同じであり、光の検出や計測を目的に設計されているのがフォトダイオード、電力を得ることを目的に設計されているのが太陽電池である。


7月24日

■■ プラネックス、ファイアーウォール機能を強化したローカルルータ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010724/planex2.htm

●ステートフル・パケット・インスペクション(stateful packet inspection)

 パケットの状態を監視し、通過の可否を判定するファイアーウォール技術。ステートフル・インスペクション・パケット・フィルタとも。

 インターネットとLANの間に設置し、外部からの不正なアクセスを防止する機能を提供する、ハードウェアやソフトウェアをファイアーウォール(fire wall)という。簡単にいうと、インターネットとLAN間でやりとりされるパケットの中継役であり、その際に、一定のルール(ポリシー)に基づいてパケットをそのまま通過させたり、一部を変更して通過させたり、遮断したりといったことを行なう。

 中継の可否を決めるためのもっともオーソドックスな方法であるパケットフィルタリングは、パケットに含まれる各種ヘッダ情報をチェックし、パケット通過の可否を判定する。ヘッダ情報には、送信元や送信先のIPアドレス、プロトコル、ポート番号、パケットの種類といった情報が含まれており、これらの情報に基づいた判定情報をあらかじめ登録しておく。ファイアーウォールは、LAN側やインターネット側から受け取ったパケットのヘッダと、判定情報を照らし合わせ、中継するか否かを決めるわけだ。

 このパケットフィルタリングに、セッションの状態やアプリケーションレベルのプロトコルまで含んだ監視を加えたものを、ステートフルインスペクションと呼んでいる。

 例えば、『接続はLAN側の特定のマシンから開始し、接続終了までの間だけ、相手のパケットをそのマシンに配送ことを許可する』というようなルールを実行するためには、ファイアーウォールが刻々と変化する通信状態を把握していなければならない。

 『このプロトコルを使った接続では、特定のあるいは特定範囲のポートに、接続先のマシンから接続要求が来るので許可したい』というのは、オンラインゲームなどによくあるパターンだが、このような通信に臨機応変に対応し、なおかつ不用意な接続は断固拒否する堅牢性も備えたいということになると、ヘッダ情報で識別する静的なフィルタリングでは対処できず、ファイアーウォール自身がアプリケーションレベルのプロトコルまで解釈しなければならない。ステートフルインスペクションは、このような通信全体を監視して機能するフィルタリング技術である。

●マルチNAT(Multi NAT[Network Address Translator])

 LANで使用しているプライベートなIPアドレスを、インターネットで使用するグローバルなIPアドレスを変換し、プライベートアドレスしか持たないLAN内のマシンが、インターネットにアクセスできるようにする機能。

 オーソドックスなNATは、グローバルアドレスとプライベートアドレスを1対1で対応させる。したがって、同時にインターネットに接続できるのは、用意したグローバルアドレスの数が上限となる。これに対し、ポート番号の変換も同時に行ない、1つのグローバルアドレスで複数台のマシンがインターネットを利用できるようにするタイプもあり、一般向けのローカルルータ(ブロードバンドルータ)やダイヤルアップルータには、このタイプが多い。機能の呼称はベンダーによってまちまちで、「IPマスカレード」、「PAT(Port and Address Translation)」、「マルチNAT」などと呼ばれている。

 これら低価格なルータでは、グローバルアドレスを1つに限定したものが多い。あらかじめ複数のグローバルアドレスを用意し、ローカル側に静的あるいは動的に割り当てるという、NAT本来の機能は提供できなかったりするのだが、このような機能をサポートしている製品もあり、これを「マルチNAT」と呼んでいるベンダーもある。

【参考】
□NAT
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971105/key5.htm#nat
□IPマスカレード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971007/key1.htm#ip_masquerade


7月26日

■■ 沖データ、プライベートショウ「PRNCOM2001」開催
   ~MICROLINEシリーズ新製品や未発表製品を展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010726/oki.htm

●SIDM(Serial, Impact, Dot Matrix)
 エスアイディーエム、シリアルインパクトドットマトリックスプリンタ

 プリンタの種類の1つ。

 SDIMは、プリンタの種類を分類する際に使われる、シリアル方式、インパクト方式、ドットマトリックス方式という3つの技術の名称を並べたもので、一般には「ドットマトリックスプリンタ」や「ドットインパクトプリンタ」、「ワイヤードットプリンタ」 といった、もう少し短い名前で呼ばれている。

 シリアル方式は、印字単位の分類で、文字を1文字ずつ印刷するタイプがシリアル方式である。ほかには、行単位で印刷するライン方式、ページ単位で印刷するページ方式がある。

 インパクト方式は、印字機構に機械的な衝撃力を使用したタイプの総称で、機械的な方法によらないものをノンインパクト方式という。広く普及しているインクジェットプリンタやレーザープリンタ(※1)は、みなこちらのノンインパクト方式に分類される。

 インパクト方式のプリンタは、ワイヤー(ピン)を横や縦に並べた、あるいは縦横に束ねたヘッドを制御し、インクリボンに小さな点を打ち出して紙に文字を印刷する。このような、マトリックス状の点の集まりで文字を構成する方式を、一般にドットマトリックス方式と呼んでいる。文字数の多い日本語プリンタには、このドットマトリックス方式のインパクトプリンタしか無いが、文字数の少ない英語環境では、タイプライターのように字型を使うタイプもあり、円盤状の字型を使ったデイジーホイールプリンタやバンド状の字型を使ったフォーリーフォームプリンタなども使われている。

 インパクト方式のプリンタは、構造的に動作音が大きく高速化も難しいため、現在は一般的な用途でほとんど使われなくなってしまった。が、複写式伝票に出力する際には、このインパクト方式でなければならないため、伝票の出力には欠かせない存在である。

 PC関連の記事では、「SIDM」と言うような4文字略語はあまり用いられないが、一般なプリンタの呼び名と分類上の略称は、次のように対応する。

一般的な呼称略称
インクジェットプリンタSNIJ(Serial, Nonimpact, Ink Jet)
レーザープリンタPNPP(Page, Nonimpact, Plain Paper)
熱転写プリンタSNTT(Serial, Nonimpact, Thermal Transfer)
感熱プリンタSNDT(Serial, Nonimpact, Direct Thermal)



※1 レーザープリンタは、分類上は電子写真方式と呼ぶのが正しく、その中の1つで、光源にレーザーを使うタイプに限定される。電子写真方式には、液晶シャッター方式 やLED方式などもあるのだが、一般にはレーザープリンタという名で総称されることが 多い。

【参考】
□熱転写方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971216/key11.htm#thermal
□インクジェット方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971216/key11.htm#inkjet
□LED方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981203/key57.htm#LED


■■ 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
   DDRの新規格登場、来年DDR333、2003年にDDR IIが登場か
  --Platform Conferenceレポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010726/kaigai01.htm

●FBGA(Fine pitch Ball Grid Array)
 エフビージーエー

 表面実装用のICパッケージの種類。

 ICパッケージの端子には、一般にリードやピンが使われているが、パッケージの裏 面に入出力用の丸いパッドを並べたタイプがあり、このようなタイプをBGAという。 端子の多い表面実装用のチップに用いられるこのパッケージは、リードに接続するた めの余分な配線が不要なため、特性的にも工数的にも有利であり、実装スペースも最 小限に押さえることができる。

 このBGAタイプのパッケージの中で、端子間のピッチが1mm以下(現行製品で0.5~1mm) のものをFBGAといい、高密度実装が進む小形携帯機器向けのチップやメモリチップな どを中心に、このFBGAの採用が進んでいる。

【参考】
□BGA(Ball Grid Array)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980113/key13.htm#SPGA
□CSP(Chip Size Package)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010330/key159.htm#CSP
□TSOP(Thin Small Outline Package)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010330/key159.htm#TSOP

[Text by 鈴木直美]


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