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●進化するDDRメモリ
DDRメモリは、今後数年でメモリ帯域を現在の2.5倍に引き上げる。来年には現行のDDR I規格の高速版「DDR333」が、そして2003年中に新規格DDR IIの最初の「DDR400」が登場、その後「DDR533」、「DDR667」へとステップアップするという。以下がDDR全体の表、その下がDDRのロードマップ、その下がDDR333のモジュール規格だ。
チップ | モジュール | モジュール帯域 | 市場登場時期 | |
---|---|---|---|---|
DDR200 | PC1600 | 1.6GB/sec | 出荷中 | ↑DDR I |
DDR266 | PC2100 | 2.1GB/sec | 出荷中 | |
DDR333 | PC2700 | 2.7GB/sec | 2002年 | |
DDR400 | PC3200 | 3.2GB/sec | 2003年 | ↓DDR II |
DDR533 | PC4300 | 4.3GB/sec | 2004年 | |
DDR667 | PC5400 | 5.4GB/sec | 2005年 |
DDRロードマップ |
【DDR333のモジュール規格】
PC2700 | MicroDIMM |
---|---|
PC2700 | SO-DIMM |
PC2700 | Registered DIMM |
PC2700 | Unbuffered DIMM |
半導体業界団体EIAの下部組織JEDECは、6月にDDR333やDDR IIといった新スペックを承認した。その結果、正式なJEDEC規格の333MHz DDRが「あと1~2四半期で登場、生産は来年スタートする」(Bill Gervasi氏, Chairman, JEDEC Memory Parametrics)ことになった。DDR200/266の市場がまだきちんと立ち上がっていないのに、早くも次の規格が登場、さらに4年先まで展望するカタチになったわけだ。このあたりには、加熱したメモリウォーの影響が感じ取れる。
ちなみに、Intelが中心となるメモリ業界団体ADT(Advanced DRAM Technology)で策定している次世代メモリ規格は6GB/sec以上のメモリ帯域になることを、Intelのパトリック・ゲルシンガ副社長兼CTO(Intel Architecture Group)が3月に明らかにしている。ADTは2003年以降のメモリ規格なので、DDR IIは時期的にこのDDR IIと重なる。また、Rambusも同じ時期に最大9.6GB/secをモジュールで達成する構想を明らかにしている。つまり、DRAMはまだ帯域スペック競争を続けているわけだ。
●実際には時間がかかるDDR333の普及
DDR333は、現行のDDRの延長線上にある規格だ。基本的にはベースクロックをDDR266の133MHzから166MHzに引き上げて高速化する。高速化のためにDLLデザインをよりタイトにするなどの工夫をする。スペックがきつくなる分、製品の歩留まりは悪くなるが、チップセット側やモジュールはやや楽になる。DDR333はDDR200/266からの選別品になるが、当初はかなり採れる量が限られるだろう。もっとも、今年後半から来年にはDRAMベンダー各社が0.13μmプロセスへ移行し始める予定で、微細化の効果でDDR333はある程度は採れるようになると予想される。そのため、0.13μmがランプアップするにつれて徐々に市場にチップが出てくるだろう。
とはいえ、市場側の準備ができていないためDDR333の浸透にはかなり時間がかかる。例えば、DDR333対応チップセットは、すでにVIA Technologies社などが開発を表明しているが、登場するのはまだかなり先の話。Intelチップセットにいたっては、来年頭に登場するDDR対応版Intel 845(Brookdale-D:ブルックデール-D)はDDR200までしか対応しない。DDR266対応も、来年後半のBrookdale-Gからになりそうな気配だ。現状は、DDRの本格立ち上げは事実上Brookdale-D待ちになってしまっているため、DDR200→DDR266→DDR333の3ステップを上がるのはかなり先になりそうだ。
現行DDRの延長にあるDDR333だが、スペックに大きな違いもある。それは、メモリチップのパッケージが従来のTSOPと新しいFBGAの2種類あることだ。
じつは、DDR333に関しては従来から使われていてコストが安いTSOPと、電気特性に優れるがコストの高いFBGAのどちらを使うかの議論があった。結局は、両方とも採用することになったが、これは、FBGAが量産効果でコストが下がってくるまで並存させるためだという。基本的には、DDR系チップもFBGAへと向かう。TSOPとFBGAはパッケージが大きく異なるため電気的な特性も異なるが、これはパッケージごとにデバイスのパラメータを変えて、データ(キャプチャ)ウインドウの幅などを合わせることで対応する。
●DDR IIまでの長い道のり
DDR IIに関しては、基本的なスペックは昨年のドラフトからそれほど変わっていない。SDRAM/DDR SDRAMで受け継がれてきたRAS/CASコマンド方式でPCでは64bit幅インターフェイスを基本とする。つまり、SDRAMからの進化路線であり、RDRAMのようにパケットプロトコル狭インターフェイス幅で革新するというアプローチは取らない。基本的なスペックは以下の通りだ。スペック上の帯域を引き上げるだけではなく、実効帯域を上げるための工夫も入っているところがポイントだ。つまり、単純にDDR Iを400MHzの転送レートにした場合よりも、パフォーマンス的には上となる。
・1.8V駆動(DDR Iは2.5V)
・プリフェッチ4
・FBGAパッケージ
・4バンク
・ディファレンシャルデータストローブ信号
・コマンド効率の向上
・バースト長4固定
DDR IIに関しては、多くのベンダーが早期にサンプルを出すと言っている。Platform Conferenceで講演したJEDECのBill Gervasi氏は「年内にサンプルが出るという噂もある」と言っていた。そのため、来年にはサンプルがある程度見られるだろう。
ただし、DDR IIが浸透するのはDDR333の先、それもかなりかかりそうだ。Gervasi氏は、DDR IIがDDRからの進化であり、シームレスに移行すると強調しているが、DRAMベンダーのニュアンスはそうではない。まずは、対応しやすいポイントツーポイントでオンボードのソリューションで持ってきて、モジュールやソケットなどクリティカルな要素の入ってくるPC向けはその先というスタンスだ。実際、DDR IIのモジュールはまだ規格化の最中だ。また、チップセットベンダーは、DDR IIは視野にもほとんど入っていない状況だ。そうしたことを考慮すると、2003年中に登場しても、しばらくはネットワーク機器など組み込み用途の世界に留まると思われる。身近なPCに降りてくるには相当な時間がかかると思っていていい。
ベンダーも、取りあえず0.13μm世代で本格的に突っ込んでくるつもりはなさそうだ。スペック的にもかなり厳しいため、微細化が進まないと経済的な歩留まりのレベルに達しないだろう。そのため、プロセス世代は少なくとも0.10/0.11μmといった世代になるだろうし、容量世代的には512Mbit以降だと思われる。また、最初のDDR400から次の世代へは「12カ月から18カ月づつかかる」(Gervasi氏)ため、DDR533は早くても登場するのは2004年となる。このことは、逆を言えば、DDR Iの時代が相当長く続くことを意味している。
(2001年7月26日)
[Reported by 後藤 弘茂]