レビュー
本日発売、Intelの極小コンピュータ「Edison」インプレッション
(2014/10/25 06:00)
Intelが米国時間の9月10日に発表し、国内では10月25日に発売されるAtom搭載の超小型コンピュータ「Edison」。IoTデバイス開発向けのハードウェアとして先行して発売していた「Galileo」シリーズより大幅に小型化した上に、無線LAN機能などもそのまま搭載するのが特徴。今回、この評価機を発売前に借用できたので、簡単なインプレッションをお届けする。詳細なレビューについては別途お伝えする予定だ。
SDカード大の基板にx86プロセッサや無線LANを搭載
Edisonには、Edison単体のパッケージのほか、Arduino Uno 3互換のピンデザインを提供する拡張ボード「Edison Board for Arduino」をセットにした「Edison Kit for Arduino」と、より小型で全インターフェイスを利用可能な「Edison Breakout Board」をセットにした「Edison Breakout Board Kit」の3パッケージが発売される。今回借用したのは「Edison Breakout Board Kit」だ。
そのパッケージは本体同様に非常にコンパクト。Galileoではパッケージ表面にサングラスをかけたガリレオ・ガリレイが描かれ、そのサングラスにガリレオの業績である天文学にちなんだ星空が映り込むデザインとなっていた。
Edison Breakout Board Kitのパッケージは段ボールで、そこにスライドするスリーブが巻かれている。そのスリーブには、やはりサングラスをかけたエジソンと、彼の発明品である白熱電球が描かれている。
段ボールのパッケージも、内側に無人航空機や人工衛星、ロボット、電灯、ファン、手袋など多彩な図柄が描かれている。さまざまな物に組み込めることをイメージしたデザインなのだろう。
Edison本体は35.5×25×3.9mm(幅×奥行き×高さ)。1月にEdisonの計画が明かされた当初はSDカードサイズに収めるとされていたが、4月に深センで開催されたIDFにおいて形状を変更。SDカードよりも一回り大きいサイズとなった。
高さが3.9mmとボードサイズに比して厚めなのは、表面、裏面ともにシールドが取り付けられているためだ。基板上は、2.4GHz帯/5GHz帯対応のアンテナと、外部アンテナ用コネクタ、そしてIO用の70ピンコネクタのみが露出しており、そのほかの部分は全てシールドで覆われている。
IDFの資料では、そのシールド内部の様子も明らかにされており、表面に4GBのeMMC、無線LAN/Bluetoothコントローラ、ULPIインターフェイスのUSB 2.0トランシーバを搭載。無線LAN/Bluetoothコントローラは、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0に対応したBroadcom「BCM43340」を採用する。
裏面にはプロセッサとメモリをPOP(Package on Package)実装したチップと、パワーマネージメントICを実装。パワーマネージメントICはTexus Instrumentsの「SNB9024」を採用している。
さて、先述の通り、Edison本体のIOは70ピンのコネクタで提供されているが、これはヒロセ電機の「DF40C(2.0)-70DS」シリーズを用いている。そのピンアサインはIntelのWebサイトで公開されている「Edison Module Hardware Guide」の13~14ページに記載されているが、ここには、40本のGPIOが備わっており、うち24本は、SDカード×1、UART×2、I2C×2、SPI×1、I2S×1として利用することができる。
Edisonはそのコンパクトさゆえ、本体をそのまま機器に組み込んでの利用も想定されているが、開発に際して、この70ピンコネクタを介したIOを利用しやすいように提供されるのがBreakout Boardである。Edison Board for Arduinoも似たような役割だが、より“メイカーズ”寄りの製品となっている。
Breakout Boardは、実測で60×29mm(幅×奥行き)とEdison本体より一回り大きい程度。これにEdisonを取り付けた状態での機器組み込みも想定していると考えられる。ここに56個のピンホールと、Micro USB×2、電源入力用ジャンパピンなどを備える。
ちなみに、EdisonのIOは70ピンで、Breakout Boardのピンホールは56個となっている。これは、Edison側の70ピンのうち4本は未使用であること、Groundが6本割り当てられていること(Breakout Board側は1個)、USBインターフェイスを物理コネクタとして搭載していることにより、Breakout Board側のピンホールが56個でも、Edisonの全てのインターフェイスを利用可能になっている。
【お詫びと訂正】初出時、Breakout Boardの実測サイズを幅40mmと記しておりましたが、60mmの誤りです。お詫びして訂正いたします。
Edisonの取り付けは、Edisonの2つのねじ穴とBreakout Boardの2つのボルトで位置合わせし、70ピンコネクタへ差し込むだけ。固定するための専用のナットも付属する。
Edisonを取り付けると、Breakout Boardのピンホールは表面からは見えなくなる。EdisonとBreakout Boardの間に実測で2mm弱の隙間はあるのでシールド線の1~2本は通せるだろうが、基本的にはボード裏側から信号を取り出すことになるだろう。そうしたことを見越してか、ピンナンバーもボード裏面側に記載されている。
Breakout Boardにはこのほか、2つ一組のジャンパピンが3カ所、Micro USBが2個備わっている。3カ所のジャンパピンは電源の入出力用で、ひとまず覚えておく必要があるのは、Micro USB脇のジャンパピン(J21)から7~15Vの電力を入力できることだろう。
2個のMicro USBは、J16と書かれた側のMicro USBはUSB OTGに対応。PCと接続することでEdisonに搭載されたフラッシュメモリ内の所定の領域へアクセスできる。もう1つのMicro USBコネクタ(J3)はFTDI(Future Technology Devices International)のUSB-シリアルUART変換チップを介して接続されており、こちらのMicro USBとPCを接続することでシリアル通信が可能になる。
電源供給については、先述の通り、J21ジャンパピンから7~15Vの電力を供給できるほか、J16と書かれた側のMicro USBからも供給できる。なお、PCをホストとして利用する場合は必ず外部電源が必要とされている。実際、J16側の電力供給だけでは動作したりしなかったりと非常に不安定な状態になっていた。Breakout Boardを使ったEdisonへの電力供給については、同社Webサイトにある「Edison Breakout Board Hardware Guide」の8~9ページを参照されたい。また、Breakout Boardの回路図もこちらに公開されている。
PCからの利用に際してのドライバは、同社のWebサイト内「Edison - Software Downloads」ページから、ダウンロードできる。また、シリアル通信を行なうためには、USB-シリアル変換チップのドライバが必要になるが、FTDIのWebサイトから入手できる。
インストール後にEdisonを装着するとドライバは自動的に組み込まれる。USBシリアルコンバータやシリアルポートがUSB-シリアル変換チップによるもので、そのほかの仮想COMポートなどはEdisonのUSB端子へ接続した状態で認識するものとなる。
まず始めは、ターミナルでEdisonにrootログインし、いくつかの設定を行なうべきだろう。例えば、Edisonのデバイス名、パスワードの設定などを行なえる。また、EdisonのファームウェアはGalileo同様にYocto ProjectのLinuxが採用されているので、このバージョンも確認しておきたい。
こうしたEdisonの設定を行なうために「cofigure_edison」というコマンドが用意されており、「configure_edison --help」でオプション一覧を表示できる。また、configure_edisonコマンドを利用して「One-time Setup」を有効化すると、Edison自身を無線LANのアクセスポイントとして動作させ、その上でデバイス名やパスワード、無線LANの設定を行なうこともできる。
無線LANの設定はconfigure_edisonコマンドでも可能。「configure_edison --wifi」を実行すると、検出された無線LANアクセスポイントが表示されるので、任意のアクセスポイントの選択とセキュリティキーの入力を行なうことで接続が確立する。こうしておくとビルドしたバイナリを無線LAN経由で送信できるようになるなど利点が大きいので、この設定も初期に行なっておくと便利だろう
余談ながら、今回の試用中、先のダウンロードページにある「Edison Yocto complete image」を用いてファームウェアの初期化を行なったのだが、借用した直後のEdisonは古いバージョンのファームウェアが入っていたようで、初期化前後でconfigure_edisonの機能も大きく変わっていた。特に初期の製品にはつきものの出来事であり、ファームウェアのバージョンチェック/更新は欠かさず行なった方が良さそうだ。なお、イメージファイルを用いたファームウェア初期化方法は「Flashing Edison (wired) - Windows」などで解説されている。
以上、今回はBreakout Board Kitの仕組みや初期導入までに触れてみた。マイコンボードとしての使い勝手に触れるところまで達していないが、コンパクトな基板でどのように製品化され、どのように使っていくかの一端は見られたと思う。
なお、本稿とは別に、実際にコンピュータやマイコンボードとして使うといった、より詳細はレビューも予定している。ご期待いただきたい。