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Haswellいつやるの? Macいつ買うの?

~IntelのHaswell発表から読み解く、MacのHaswell化

 5月30日の深夜、Appleは日本国内における「iPad」、「iPod」製品の価格改定に踏み切った。急激に進んだ円安に対して為替レートに応じた価格調整だが、製品型番の変更をともなわなず、かつ事前発表のないこうした価格変更は極めて異例とも言える。これまでまったく前例がなかったわけではないが、一般的には製品のモデルチェンジやマイナーチェンジ、あるいはメモリ、ストレージ容量の構成を変えるなどの型番変更のタイミングに合わせて、その時の為替レートに見合った国内価格の設定が行なわれている。

 今回、そうした仕様上の変更点がないままに国内価格の調整のみが行なわれた背景は、これらのiPadやiPod製品が現行製品としてまだしばらく製造、流通を続ける可能性が高いことを示唆している。仮に近々にもモデルチェンジがあるとすれば、そこまで我慢できる程度のキャッシュフローならばAppleは十分に保持しているからだ。

6月4日に発表された第4世代Coreプロセッサ「Haswell」

 一方で、Mac製品に関してはごく一部を除いて上記の価格調整はこのタイミングで実施されることがなかった。各モデルごとに発売時期に応じた為替レートを元に設定された国内価格が現時点では維持されている。つまり、iPadやiPodよりは製品切り替えのタイミングが近いか、あるいは製品によっては販売ボリュームの関係から、為替差損による影響がiPadやiPod等よりも少ないと判断されたと推測できる。

 言うまでもなく、製品切り替えのタイミングは現在のMacが採用しているIntel製のプロセッサのロードマップに大きな影響を受ける。弊誌でも連日報道されているように、Intelは日本時間の6月4日15時付けで、第4世代Coreプロセッサを正式発表した。いわゆる「Haswell」である。現在のMacのラインナップはMac Proを除いて、第3世代Coreプロセッサである「Ivy Bridege」を採用している。今後、モデルチェンジにともなって、Macのラインナップは順次Haswell搭載製品へと切り替わっていくことは間違いない。それが、Macユーザー待望の新製品ということになる。

新旧モデルの選択は一周だけ廻る回転寿司である

 とは言え問題は複雑だ。前述したとおり製品型番が変わると言うことは、現在の円安傾向におけるレートでMac製品の国内価格が設定されることになる。例えば、米国ではHaswell化したMacが従来製品と価格は同一という場合でも、国内では前モデルに比べ価格の上昇は避けられない。Appleの流通在庫コントロールは優秀で、新旧モデルが市場に併存する期間が非常に短い。これは現CEOであるティム・クック氏が、故スティーブ・ジョブズCEOの右腕として働いていた時の大きな実績でもある。

 言うなれば一周しか回らない回転寿司のようなもので、Ivy Bridgeを見過ごして、Haswellが流れて来たあとで、その皿が想定より高かったことに気がついても、もう取り返しがつかない。一般的にPCは世代を経るごとに性能があがり、価格は据え置きか下がる。Ivy Bridge~Haswellの転換においてもそれは変わらないだろう。だだし、米国においては、と条件が付く。そこに(相対的な)円安という要因が加わることで短期的には国内価格はあがってしまう。となれば、グレードとしては同一ながら旧世代製品を(為替レート分だけ)安く手に入れるか、多少の追加出費は覚悟の上で、新世代を待つかという微妙な位置に立たされる。特にこの週末は胃の痛む思いだろう。

 そこで、新製品発表の可能性がゼロではないWWDC 2013(米西海岸6月10日午前10時開幕)直前企画として、現在のMacの各ラインナップがHaswell化することで、どのように変わるのかを推測してみた。

 筆者は、よくある噂系サイトの情報のように「信頼できる匿名の関係者」や「Appleの製品ロードマップに詳しい人物」に知人はおらず、さらにそうした情報源をあてにしてはいない。公開されているIntelをはじめとするパーツサプライヤーの動向やロードマップ、製品情報、テクノロジートレンド、これまでのAppleの新製品発表のスパンなどをもとにした筆者独自の予測記事である。長文となるので、週末の余暇などを利用して目を通していただけたら幸いである。

 当記事の賞味期限は最短4日間の可能性から、全モデルの更新を終えるまでと幅広い。今回決めた予測のルールは、

・現状のMac製品のラインナップを維持
・製品内のグレードも現行世代を踏襲して想定。複雑になるためCTOは考慮しない
・デザインはApple以外知りえないので、価格変更をともなう予測には加えない

 メモリやストレージの構成は悩ましいところだが、基本的にこの1年間でユーザーが必要とするメインメモリやHDD、SSDなどの容量が大幅に増減しているという状況にはないので、こうしたパーツの価格は同等と仮定する。メモリはIvy Bridge、Haswellともに1,600MHzのDDR3メモリを採用している。HDD、SSDは容量あたりの単価は下げているので、その分は容量アップの方向で構成されると考えて相殺することにする。つまり、プロセッサの予測は入れるが、実際に搭載されるメモリやストレージについての詳細は入れない。

 構成パーツの中で、単体としてもっとも価格が大きく変動するとしたら、無線部分だろう。Appleは無線技術についてはかなり積極的に新技術を採用する傾向が強く、次世代製品ではIEEE 802.11acの無線LAN技術を導入してくる可能性が高いと筆者は考えている。従来のa/b/g/nに比べて、acモジュールの価格はまだまだ高価だが、これもまたその他諸々のパーツ価格が低下していくということで、相殺する。

 要は推測である以上、完全な正解にはなり得ないので、米国における製品価格(税別)をIvy Bridge版とHaswell版ですべて同一にするという条件共通化を行ったものと考えて欲しい。それでは、個々の製品に関して分析していこう。なお言うまでもなく、為替レートは6月7日を基準としているので、実際の製品発表時までに大きく動いていることもある。HaswellプロセッサはすべてIntelが発表済みの実在する製品だが、くどいようだが、あくまでこれは筆者個人の予測であると念を押しておく。

MacBook Air

MacBook Air

 まず最初はMacBook Air(以下、Air)から考えてみよう。現行モデルのAirに搭載されているIvy Bridgeプロセッサは、TDP 17Wの低電圧版に該当する。HaswellではUシリーズと呼ばれ、Ivy BridgeまではCPUとチップセットが別々の構成だったが、Haswellでは初めて1チップ化される。ダイそのものはCPUとチップセットで分離しているものの、1つのBGAチップ上に両方が載ったものだ。これまでのIvy Bridgeでは17WのCPUと3Wのチップセットで計20W必要だったものが、1チップで15Wまで省電力化が進むことになる。

 6月4日から台湾・台北で開催されているCOMPUTEXでも、このUシリーズを搭載するPC製品は続々と展示が行なわれており、いずれも従来モデルに比べて大幅なバッテリ駆動時間の延長を実現している。さまざまな条件があるとはいえ、同一のバッテリ容量ならば、ざっと1.5倍とも言われる。

 UltrabookやAirでその容積や重量の大半を占めるのはバッテリであることは言うまでもない。そこで、Haswellを搭載する次期Airに対してAppleが取ることのできるアプローチは2つだ。1つは、現在の形状や重量をほぼ維持したまま、公称スペックである11インチなら5時間、13インチなら7時間というバッテリ駆動時間を、それぞれ7時間以上、10時間以上へと大きく延長する道だ。

 そしてもう1つが、現在のバッテリ駆動時間をそのまま維持し、搭載するバッテリ容量を減らして、Air本体を更に軽く、薄い製品へとリニューアルさせることである。もちろん薄くとは言っても、キーボードや液晶パネル、加えて剛性の問題も伴うので限度はあるが、理屈の上では更なる軽量化は可能である。

 液晶パネルのRetina化を期待するユーザーも多いと思われる。例えばシャープのIGZO採用により、高精細化を進めつつ消費電力の増加を最小限に留めるというアプローチも考えられるが、後述するMacBook Proとの差別化やコストなどの面からもAirへのRetina搭載が今すぐ行なわれることはないというのが筆者の見方だ。それでは比較をしてみよう、ドン。

【表1】MacBook Airのスペック予測
MacBook Air11インチMacBook Air13インチMacBook Air
アーキテクチャIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswell
CPUCore i5-3317UCore i5-4200UCore i5-3317UCore i5-4200UCore i5-3427UCore i7-4500UCore i5-3427UCore i7-4500U
内藏GPU機能Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4400
メモリ4GB-4GB-4GB-4GB-
SSD64GB-128GB-128GB-256GB-
米国価格(税別)999ドル999ドル1,099ドル1,099ドル1,199ドル1,199ドル1,499ドル1,499ドル
日本価格(税込)88,000円98,800円98,800円108,800円108,800円118,800円128,800円148,800円
レート88.89円98.9円89.9円99.0円90.7円99.0円85.9円99.3円
初期発売月2012年6月-2012年6月-2012年6月-2012年6月-
最終価格改定日2013年2月-2013年2月-2013年2月-2013年2月-
※旧モデルスペックは2013年2月仕様※新モデルは筆者予想

 COMPUTEXで製品発表、参考出品などが行なわれてはいるものの、実機はないので、Ultrabookで数字として出せるベンチマークはまだない。国内では、6月2日の0時以降からPC自作市場向けのデスクトップ版Haswellの販売が解禁されていて、そのベンチマークが弊誌にも掲載されている。もちろんデスクトップ版と低電圧モバイル版では異なるわけだが、Airに限らず、おおまかな傾向としてCPU自体の性能向上よりも、GPUの性能向上がHaswellの特徴と把握しておいて欲しい。さらに大切なのが前述の省電力性能である。

 リニューアルのタイミングだが、COMPUTEXでUシリーズを採用したUltrabookの参考出品が相次いでいるように、Airも製品化はさほど遠くはないだろう。とはいえ、現在の報道ではPC製品の発売日までが具体的にされているものはほぼなく、量産化可能な時期については今ひとつはっきりしない。Appleの新製品発表と言えば「Today!」(今日から発売)が売り物の1つでもあり、WWDCがその場になるかどうかは不明だ。逆にWWDCにおいてAirが「Today!」と言ってしまえるなら、それはPC陣営の各種Ultrabookに対する大きなアドバンテージにもなる。

MacBook Pro Retina Displayモデル

MacBook Pro Retina Displayモデル

 2012年のWWDCで発表された新世代のMacBook Pro、それが「MacBook Pro Retina Displayモデル」(以下、Retina)だ。現行モデルのRetinaは、モバイル向けの標準電圧版Ivy Bridgeを搭載して、13インチと15インチの2サイズが発売されている。13インチはデュアルコア、15インチはクアッドコア製品になる。また、13インチはIntel HD Graphics 4000の統合型GPUだが、15インチはあわせてディスクリート型のNVIDIA GeForce GT 650Mを搭載し、GPU負荷にあわせたグラフィックス自動切替機能を有している。Haswellが該当するのは、Mシリーズと言われる製品ライン。これにそのまま置き換えると、ドン。

【表2】MacBook Pro Retina Displayのスペック予測
MacBook Pro Retina Displayモデル13インチMacBook Pro Retina15インチMacBook Pro Retina
アーキテクチャIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswell
CPUCore i5-3210MCore i5-4200MCore i5-3320MCore i5-4300MCore i7-3630QMCore i7-4700MQCore i7-3740QMCore i7-4800MQ
内藏GPU機能Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4600Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4600Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4600Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4600
ディスクリートGPU機能----NVIDIA GeForce GT 650MNVIDIA GeForce GT 750MNVIDIA GeForce GT 650MNVIDIA GeForce GT 750M
メモリ8GB-8GB-8GB-16GB-
SSD128GB-256GB-256GB-512GB-
米国価格(税別)1,499ドル1,499ドル1,699ドル1,699ドル2,199ドル2,199ドル2,799ドル2,799ドル
日本価格(税込)138,800円148,800円158,800円168,800円198,800円218,800円254,800円274,800円
レート92.6円99.3円93.5円99.3円90.4円99.5円91.0円98.2円
初期発売月2012年10月-2012年10月-2012年6月-2012年6月-
最終価格改定日2013年2月-2013年2月-2013年2月-2013年2月-
※旧モデルのスペックは2013年2月仕様※新モデルは筆者予想

 Haswell化によって、Retinaを描画するのにはやや力不足と思われていた13インチのiGPU機能が強化されるので、これは大きなメリットと考えられる。前モデル通りなら、15インチにはディスクリート型のGPUをあわせて搭載すると考えるのが妥当だが、さらに上位のIntel HD Graphics 5000番台や、あるいはIntel Iris Graphicsを搭載するHaswellを選択することで、ディスクリートGPUの搭載を見送る可能性もないとは限らない。

 本体デザインを考えれば、昨年(2012年)登場したばかりの製品ラインなので大幅な変更は考えにくい。標準電圧版プロセッサのため低電圧版ほどではないにせよ、前出のとおり、バッテリに関してはHaswell化でかなり余裕が生まれるので、動作時間の延長が期待できる。また、現行モデルではバッテリ持続時間の事情から13インチモデルが15インチモデルよりやや厚いという状況だったが、これが解消されて両モデルが同じ厚さになるものと、筆者は勝手に推測している。

 同一のプロセッサを用いると推測されるPC製品が東芝や富士通などから発売日も含めて正式発表済みである点と、変更点が少ないという意味でAirよりも準備が容易でありそうなことを考えれば、早期のHaswell化が期待できる製品だ。

MacBook Pro

MacBook Pro

 ポータブル型では唯一光学式ドライブを内蔵する製品。Ivy Bridge搭載モデルは上記のAir、15インチRetinaとともに2012年のWWDCで発表されている。前出のMacBook Proが発表された際、新世代という言葉が使われていたことからも、こちらはいずれは終息する製品ラインと考えられる。非公開なために確認はとれていないが、冒頭に述べた価格調整に際して、教育市場向けの特別価格に限って調整が入ったという情報もある。教育市場向けの場合はある程度長期にわたって同一の製品を継続提供していく必要があり、たやすくディスコンにできないため価格調整を行なった可能性は否定できない。

 AppleはWWDC以後の2012年11月に発表したiMacの新モデルからは光学式ドライブの内藏をやめており、今後もその方向性が続くことは間違いない。低価格モデルとして継続販売される可能性はあるが、Sandy Bridge~Ivy Bridgeのようにピン配置の互換性が高く再設計が容易だった前回はともかく、敢えてHaswell化するかどうかは疑問の余地があり、緩やかにフェードアウトしていくものということで、これは、ドンなし。

【表3】MacBook Proのスペック予測
MacBook Pro13インチMacBook Pro15インチMacBook Pro
アーキテクチャIvy BridgeIvy BridgeIvy Bridge
CPUCore i5-3210MCore i7-3520MCore i7-3615QM
内藏GPU機能Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000
ディスクリートGPU機能--NVIDIA GeForce GT 650M
メモリ4GB8GB4GB
HDD500GB750GB500GB
米国価格(税別)1,199ドル1,499ドル1,799ドル
日本価格(税込)108,800円138,800円168,800円
レート90.7円92.6円93.8円
初期発売月2012年6月2012年6月2012年6月
最終価格改定日2013年2月2013年2月2013年2月
※スペックは2013年2月仕様

 これら3カテゴリのポータブル製品は、13インチRetinaを除いて2012年6月に発表されている。10月には13インチRetinaが追加され、2013年2月にCPU、メモリ、ストレージなどのコンフィグレーションを見直すとともに、価格の再設定が行なわれている。本稿では発表時ではなく、この2月の価格改訂後のスペックおよび価格等を掲載している。

iMac

iMac

 現行のIvy Bridge搭載iMacは2012年10月末に発表された。出荷時期は21.5インチモデルが11月、27インチモデルが12月と当初アナウンスがあったものの、主に製造上の理由からいずれも月末まで出荷がずれこんだほか、需要を十分に満たせない時期もあったが、現在ではこうした問題は解消している。米国の教育市場向けには、2013年3月にCore i3プロセッサ(Core i3-3225)を搭載した21.5インチの廉価モデルも販売されている。この教育市場向け製品を除いて、すべての製品にディスクリートGPUを搭載するのが特徴でもある。予測では前モデルを引き継ぐ形でNVIDIA製のGPUを搭載することを前提にしているが、出荷時期によっては特に下位モデルでIntel Iris GraphicsあるいはIris Pro Graphicsを搭載したHaswellを搭載することで、内藏GPUのみになる可能性もある。

ディスクリートGPUとして搭載の可能性があるNVIDIAのGeForce 700Mシリーズ

 2012年10月にエッジの薄型化を中心にしたリニューアルを実現したばかりであり、大きなデザイン変更が入るとは考えにくい。Ivy Bridgeの発表からiMacの販売まではかなりの期間が経過しているが、これは主にデザインと製造工程に期間を要したものと推測している。外観が大きく変わらないのであれば、Haswellの搭載は、Ivy Bridgeの搭載までに要した期間よりも短期間で済むはずだ。Retina化に期待を寄せる声があるのは理解できるが、このクラスの高精細パネルが普及価格帯に移行するにはまだ期間が必要だ。予想される仕様は下記のとおり。

【表4】iMacのスペック予測
iMac21.5インチiMac27インチiMac
アーキテクチャIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswell
CPUCore i5-3330SCore i5-4570SCore i5-3470SCore i5-4670SCore i5-3470SCore i5-4670SCore i5-3470Core i5-4670
内藏GPU機能(Intel HD Graphics 2500)(Intel HD Graphics 4600)(Intel HD Graphics 2500)(Intel HD Graphics 4600)(Intel HD Graphics 2500)(Intel HD Graphics 4600)(Intel HD Graphics 2500)(Intel HD Graphics 4600)
ディスクリートGPU機能NVIDIA GeForce GT 640MNVIDIA GeForce GT 740MNVIDIA GeForce GT 650MNVIDIA GeForce GT 750MNVIDIA GeForce GT 660MNVIDIA GeForce GTX 760MNVIDIA GeForce GT 675MXNVIDIA GeForce GTX 770M
メモリ8GB-8GB-8GB-8GB-
HDD1TB-1TB-1TB-1TB-
米国価格(税別)1,299ドル1,299ドル1,499ドル1,499ドル1,799ドル1,799ドル1,999ドル1,999ドル
日本価格(税込)108,800円128,800円128,800円148,800円154,800円178,800円168,800円198,800円
レート83.8円99.2円85.9円99.3円86.0円99.4円84.4円99.4円
初期発売月2012年11月-2012年11月-2012年12月-2012年12月-
※新モデルは筆者予想

Mac mini

Mac mini

 やはりiMacと同じ2012年10月に製品発表が行なわれた。モデルチェンジはほぼ1年ごとに行なわれている。2011年1月に発表されたSandy Bridge搭載モデルが同年7月、2012年4月に発表されたIvy Brige搭載モデルが同年10月に出荷されたことを考えれば、新CPUの出荷で即製品化というカテゴリではないことがわかる。少なくとも前2モデルとも約6カ月後であることから推測すれば、Haswell化は年末商戦に向けた10月あたりだろう(あくまでも予測です。繰り返しますが念のため)。

 2011年モデルにはディスクリートGPUとしてRadeon HD 6630Mが搭載されたモデルもあったが、以降はiGPUモデルのみ。繰り返しているようにHaswell化ではGPU性能の向上が見込めることから、どのクラスのプロセッサを採用するにせよ、iGPUであることは間違いないところだろう。むしろ、PCでは同じような製品カテゴリに「NUC(Next Unit of Computing)」が登場していることから、個人的にはMac miniにはさらに面白い展開を期待したい。順当にプロセッサが更新された場合の予測は下記のとおり。

【表5】Mac miniのスペック予測
Mac miniMac mini
アーキテクチャIvy BridgeHaswellIvy BridgeHaswell
CPUCore i5-3210MCore i5-4300MCore i7-3615QMCore i7-4700MQ
内藏GPU機能Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4600Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4600
メモリ4GB-4GB-
HDD500GB-1TB-
米国価格(税別)599ドル599ドル799ドル799ドル
日本価格(税込)52,800円58,800円68,800円78,800円
レート88.1円98.2円86.1円98.6円
初期発売月2012年10月-2012年10月-
※新モデルは筆者予想

Mac Pro

 筐体の基本デザインは2003年のWWDCで発表された「PowerMac G5」。内部の構造は世代を数えて大幅に変遷したものの、外見はちょうど10周年という息の長い製品である。Macの中では、PCI Experssスロットや、5.25インチドライブベイなどを拡張できる唯一の製品で、Mac Proの新製品を待ち続けるユーザーは熱狂的であり、また少なくない。将来の計画はめったに口にすることがないAppleだが、珍しく海外のインタビューで、ティム・クックCEOが2013年内の新モデル投入をほのめかせたこともある。

 ほかのMacとは違い、ターゲットがワークステーション、エンタープライズ、サーバー用途なので、Intelのロードマップもコンシューマ向けのそれとは異なる。Haswellが発表されたからと言って、Haswellをそのままは搭載することはできない上、果たしてそれがユーザーのニーズに応えたMac Proなのかという疑問が残る。

 現行のMac Proは、2012年6月にマイナーチェンジされた。基本は2モデルで、下位がシングルソケットのXeon W3565、上位がデュアルソケットのXeon E5645。Haswellに合わせてコードネームで呼ぶと、それぞれ「Nehalem-WS」と「Westmere-EP」。つまりいずれも、Nehalemマイクロアーキテクチャ世代である。アーキテクチャの世代としてはその後、Sandy Bridge、Ivy Bridge、Haswellと続くわけだ。シングルソケットのHaswell Xeon E3は出荷されたが、デュアルソケットとなるとSandy Bridge-E系が最新で、次期Mac Proの本命と目されるIvy Bridge-E系のプロセッサは2013年第4四半期に登場するというのが現在のロードマップだ。ということで、実はMac Proは今回のHaswell祭りとは無関係に近い。

 それでも万が一、WWDCにおいて新Mac Proが発表されるとなれば、あるいはAMDのサーバー系プロセッサを採用するという、いろんなものを吹き飛ばすビッグニュースになることは間違いない。未発表である以上、すべての可能性は否定できないが、限りなくゼロに近いので、ドンはカット。


 ハードウェアの話題が先行しがちだが、OSがついて来られなければどんな素晴らしい製品であっても宝の持ち腐れになる。例えばWindows 8のConnected Standbyのように、OS側、CPU側の双方の対応で実現できる機能がある。

 WWDC 2013では、Mac向けの新しいOS Xが公開されることが予告されている。2012年はMountain Lion(10.8)が発表され、7月25日からオンラインストアでダウンロード販売が開始された。このMountain Lionは、2012年2月の時点で搭載される新機能やスクリーンショットをプレビュー済みだったが、2013年は2012年とは状況が異なる。現時点ではプレビューはおろか、コードネームも明らかにされていない(ただし、噂はある)。これが、同程度に進んでいるのに敢えて秘密にしているのか、それとも開発期間がその期間分だけ後ろにずれているのかがハッキリしない。前者であれば問題はないが、後者に近ければ、そのOS Xを前提とするMacの開発や製品発表時期にも影響を与えるだろう。

 2012年はRetinaが発表されたが、これはいわゆるノートパソコンとしては初めて高精細なパネルを搭載した製品という大きなインパクトがあった。仮に、Airが高精細化を実現したとしても、自社のRetinaはもちろんのこと、PCでも同一コンセプトの製品がすでに後を追いかけている。結果的にそのAirが予想を超えるほど素晴らしい製品であったとしても、「初めての高精細」を超えることはできない。それでは敢えてWWDCで発表する意味は小さいと言わざるを得ない。

 毎年繰り返しているように、WWDCはあくまで「世界開発者会議」であり、新製品発表の場ではない。重要なのは開発者であり、OS X、そしてiOSを開発者に紹介し、将来の製品のために準備を整える機会である。

 2013年は現在の同社の屋台骨でもあるiOSの大幅な改修とテコ入れが予測され、それ以外に話題が分散してしまうのはAppleとしても、望む方向性ではないと思われる。期待している人には申し訳ないが、筆者個人の予想としては、2013年のWWDCでフォーカスされるのはiOSおよびOS Xであり、Macの新製品ではないと考えている。仮にあったとしても、大きくクローズアップするのではなく、サイレントリリース程度にとどまるのではないだろうか。

 そのほか、為替レートの変動を受けてApp StoreおよびMac App Storeのレート調整が入るかどうかもユーザーにとっては気になっている部分と思われるが、そのあたりはWWDCの前日レポートで紹介しようと考えている。

 いずれにせよ予測は予測。当たるも八卦当たらぬも八卦である。こうして、WWDCでは出ないほうの予測を書いている筆者もそれなりに盛り上がっているので、期待をする人は大いに期待をして、それぞれにWWDCの基調講演を待つのがいいだろう。とはいえ、盛り上がった分だけ盛り下がった時の反動は大きいということはMapの一件で周知済みだ。いろいろと控えめにお願いしたいところではある。

(矢作 晃)