デスクトップAPU初のトリプルコア製品「AMD A6-3500」を試す


 AMDのデスクトップ向けAPUとして、初のトリプルコア製品「AMD A6-3500」が登場した。Llanoベースのデスクトップ向けAPUとして先に登場したAMD A8-3850、AMD A6-3650との比較を交えながら、本製品のベンチマーク結果を紹介する。

●TDP 65WのトリプルコアAPU

 AMD A6-3500は、CPU部分に動作クロック2.1GHzのCPUコアを3つ備える。既存のLlanoが備える4コアのうち1コアを無効にしたことで、L2キャッシュも4MBから3MBへ減少している。一方、A6-3500では、既存のデスクトップ向けLlanoでは無効にされていた、自動オーバークロック機能のTurbo COREに対応しており、Turbo Core時は最大2.4GHzまで動作クロックが上昇する。

 GPUコアには、443MHz動作のストリーミングプロセッサーを320基を備える「Radeon HD 6530D」が採用されている。これはAMD A6-3650の内蔵GPUと同じものだ。その他、内蔵メモリコントローラのDDR3-1866対応、動画の手ブレ補正を行なう「AMD Steady Video」、HDMI 1.4aのサポートなど、先に登場したAMD A8-3850やAMD A6-3650と同等の機能をサポートしている。

 同じAMD A6 シリーズのAMD A6-3650から機能面で削減されたのは、CPUコア数、CPUクロック、L2キャッシュの3つで、その分TDPは65Wとなり、先に登場したAMD A8-3850とAMD A6-3650の100Wから大幅に引き下げられた。

【表1】仕様比較
CPUAMD A6-3500AMD A6-3650AMD A8-3850
コア数34
CPU動作クロック2.1GHz2.6GHz2.9GHz
TurboCORE(最大クロック)2.4GHz
L2キャッシュ3MB4MB
内蔵GPURadeon HD 6530DRadeon HD 6550D
GPU動作クロック443MHz600MHz
GPU Streaming Processor320400
AMD Dual Graphics
対応ソケットSocket FM1
TDP65W100W

AMD A6-3500CPU-Zの画面GPU-Zの画面

●テスト環境

 それではAMD A6-3500のベンチマーク結果を紹介していく。

 テストには、ASUSのA75 チップセット搭載マザーボード「F1A75-V PRO」を利用し、比較対象としてAMD A8-3850とA6-3650を用意した。その他、テスト環境については表2の通り。なお、今回はAMD A6-3500のTurbo COREを有効にしてテストを行なった。

【表2】テスト環境
CPUAMD A6-3500AMD A6-3650AMD A8-3850
マザーボードASUS F1A75-V PRO (BIOS:1102)
メモリDDR3-1866 2GB×2 (9-10-9-27)
内蔵GPURadeon HD 6530DRadeon HD 6550D
ストレージWestern Digital WD5000AAKX
グラフィックスドライバ8.86-110512a-119838C (Catalyst 11.8)
電源Silver Stone SST-ST75F-P
OSWindows 7 Ultimate x64 SP1

●CPU処理中心のベンチマークテスト

 まずは、CPU処理とメモリ周りが中心のテスト結果から紹介する。テストは「Sandra 2011.SP4c 17.77」(グラフ1、6、7、8)、「PCMark05」(グラフ2、3)、「CINEBENCH R10」(グラフ4)、「CINEBENCH R11.5」(グラフ5)、「PCMark Vantage」(グラフ9)、「PCMark 7」(グラフ10)だ。

 4タスクを同時実行するPCMark05 CPU TestのMultithreaded Test 2をはじめ、3スレッド以上の処理に対応しているテストではスコアの落ち込みが際立って見えるものの、同じLlanoベースのCPUなだけあって、スコア自体はおおむねコア数と動作クロックに見合ったスコアになっている。メモリ周りに関しても同様の結果いえよう。

 同じA6シリーズのA6-3650に比べ、マルチスレッド対応のテストで6割強程度、シングルスレッドで9割弱程度の結果となっている。CPUコアが1つ少ないことによるスコア差が際立つ一方で、定格動作クロックではAMD A6-3650(2.6GHz)の8割程度のAMD A6-3500(2.1GHz)が、CINEBENCH R10のRendering(Single CPU)など、シングルスレッドで動作するテストで9割弱のスコアとなっているのは、動作クロックを2.4GHzまで引き上げるTurbo COREが有効に働いたものと思われる。

【グラフ1】Sandra 2011.SP4c 17.77(Processor Arithmetic/Processor Multi-Media)
【グラフ2】PCMark05 Build 1.2.0 CPU Test(シングルタスク)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0 CPU Test(マルチタスク)
【グラフ4】CINEBENCH R10
【グラフ5】CINEBENCH R11.5
【グラフ6】Sandra 2011.SP4c 17.77(Memory Bandwidth)
【グラフ7】Sandra 2011.SP4c 17.77(Cache and Memory)
【グラフ8】Sandra 2011.SP4c 17.77(Memory Latency)
【グラフ9】PCMark Vantage Build 1.0.2
【グラフ10】PCMark 7 Build 1.0.4

●GPU処理中心のベンチマークテスト

 続いて、3Dベンチマークテストの結果を紹介する。検証したテストは「3DMark06」(グラフ11)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ12)、「MHFベンチマーク【絆】」(グラフ13)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ14)、「3DMark Vantage」(グラフ15、16、17)、「3DMark11」(グラフ18、19、20)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ21)、「Unigine Heaven Benchmark 2.5」(グラフ22)だ。

 同じRadeon HD 6530Dを内蔵するAMD A6-3500とAMD A6-3650のスコア差はCPU性能の差と見ることができる。GPU負荷の軽くなるテストや設定ではAMD A6-3500とAMD A6-3650のスコア差が大きくなり、逆にGPU負荷の高いテストになればスコア差も小さくなる。この傾向は3DMark Vantageの総合スコア(グラフ)を見るとわかりやすい。描画負荷の低いEntryでは2割程度の差がついているが、Performance、Extremeと、描画負荷が大きくなるほどスコア差は小さくなっている。

 ファイナルファンタジーXIVやMHFベンチマーク、Lost Planet 2など実際のゲームをベースにしたテストの結果でも、AMD A6-3500とAMD A6-3650との差は数パーセントに収まっている。このことから、AMD A6-3500のCPUクロックの低さやコア数の少なさは、Radeon HD 6530Dの大した足枷にはなっていないといえるだろう。

 AMD A6-3650と比較すると、CPU性能の割に健闘しているAMD A6-3500のテスト結果だが、上位のRadeon HD 6550Dを内蔵したA8-3850には大きく差をつけられている。同じLlanoベースのAPUであっても、AMD A8 シリーズのRadeon HD 6550DとAMD A6 シリーズのRadeon HD 6530Dでは、グラフィックス性能に少なからず差があることは意識しておいたほうがいいだろう。

【グラフ11】3DMark06 Build 1.2.0
【グラフ12】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ13】MHFベンチマーク【絆】
【グラフ14】Lost Planet 2 Benchmark(DX9・テストタイプB)
【グラフ15】3DMark Vantage Build 1.1.0
【グラフ16】3DMark Vantage Build 1.1.0(Graphics Score)
【グラフ17】3DMark Vantage Build 1.1.0(CPU Score)
【グラフ18】3DMark 11 Build 1.0.2
【グラフ19】3DMark 11 Build 1.0.2(Graphics Score)
【グラフ20】3DMark 11 Build 1.0.2(CPU Score)
【グラフ21】Lost Planet 2 Benchmark(DX11・テストタイプB)
【グラフ22】Unigine Heaven Benchmark 2.5

●消費電力の比較テスト

 最後にシステム全体の消費電力を測定した結果を紹介する。

 消費電力の測定は、サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を利用して行なった。アイドル時の消費電力のほか、ストレステストツールの「OCCT Perestroika 3.1.0」で、CPUに負荷を掛ける「CPU:OCCT」、GPUに負荷を掛ける「GPU:OCCT」、CPUとGPUの両方に負荷を掛ける「Power Supply Test」をそれぞれ実行した際の消費電力を測定した。

 アイドル時の消費電力は43Wで横並びとなったが、CPU:OCCTとPower Supply Test実行時は、AMD A6-3500がAMD A6-3650に28~29W、AMD A8-3850より34~37W低い消費電力だった。AMD A6-3500は比較対象のCPUに比べ、TDP枠が100Wから65Wと35Wも引き下げられているが、消費電力比較の結果もちょうどそれに当てはまる結果だ。

【グラフ23】システム全体の消費電力

●用途次第ではA6-3650より魅力的な製品

 以上の結果から、CPU部分の削減によるCPU性能低下は大きいが、グラフィックス性能を中心としてみた場合、AMD A6-3650との性能差はさほどないといっていいだろう。

 さすがにAMD A8-3850のグラフィックスパフォーマンスと比べると1ランク劣るものの、比較的描画負荷の軽い3Dオンラインゲームを動作させるのに十分なグラフィックス性能は持っている。これに加え、TDPが65Wまで引き下げられたことで、電源容量や冷却が制限される小型ケースへ組み込みやすくなったことも魅力だ。ゲームプレイや動画視聴などが中心の用途として考えると、AMD A6-3650より魅力のある製品ともいえるだろう。

 まだまだ選択肢の少ないデスクトップ向けAPUだが、AMD A6-3500の登場で、パフォーマンス優先ならAMD A8-3850、消費電力やコストを重視するならAMD A6-3500という選び方ができるようになった。これを歓迎するとともに、未発売モデルの中でも期待度の高いAMD A8-3800を含め、今後のデスクトップ向けAPUのラインナップ拡充に期待したい。

(2011年 9月 15日)

[Reported by 三門 修太]