【特別企画】Windows 7インストール実験レポート
~Pentium Mマザーボード採用のミニタワー


Pentium Mマザーボード採用ミニタワーPC

 これまで、ネットブックを中心に取り上げてきたが、今回はデスクトップPCを取り上げることにする。取り上げるマシンは、チップセットとしてIntel 855GMEを搭載するマザーボードが採用された、ミドルタワーPCだ。
●SATA II RAIDコントローラ以外は互換性に問題なし

 今回利用したミニタワーPCは、PC Watch編集者が、以前自宅での作業などに利用していたものの、現在は物置の奥に放置されていたものだ。自作PCではなく、いわゆるホワイトボックスPCだが、見た目や利用されているパーツを見ると、自作PCに限りなく近いマシンであると言っていい。

 このマシンの仕様は、表にまとめたとおりだ。マザーボードに搭載されるチップセットは、第1世代Centrinoとして位置付けられている、Intel 955GME。ノートPC向けチップセットであるとともに、Windows 7の動作要件を満たすチップセットとして最古の部類に属するものだ。対応CPUもノートPC向けのPetium M/Celeron Mで、このPCではPentium M 1.70GHzが搭載されていた。

【今回利用したマシンの仕様】
マザーボード:AOpeni855GMEm-LFS)
CPU:Pentium M 1.70GHz
メモリ:PC3200 DDR SDRAM 512MB+1GB、計1.5GB
ビデオカード:GeCube GC-R105LPA-C3(Radeon X1050/128MB)
HDD:Western Digital WD3200JB(マスター)、WD5000AAJB(スレーブ)
光学式ドライブ:日立LGGSA-4160B
無線LANカード:バッファローWLI2-PCI-G54S

 古いPCでWindows 7を動作させる場合の最大のネックになるのは、メモリ搭載容量とグラフィック機能だが、今回利用したPCでは、この点に付いて問題はなかった。

 対応メモリは400MHz動作のPC3200 DDR SDRAMで、最大2GBまで搭載可能となっているが、利用したマシンでは512MBのDIMMが2枚、計1GB搭載されており、この時点でWindows 7のシステム要件を満たしている。

 グラフィック機能は、チップセット内蔵機能ではなく、グラフィックチップとしてATI Radeon X1050を搭載するAGP接続のビデオカード「GeCube GC-R105LPA-C3」が利用されていた。Shader Model 2.0対応にとどまるものの、DirectX 9対応グラフィックチップであり、こちらもギリギリWindows 7のシステム要件を満たす。

 拡張カードは、ビデオカード以外に、バッファロー製のIEEE 802.11 b/g対応のPCI接続無線LANカード「WLI2-PCI-G54S」が搭載されていたが、バッファローからWindows 7対応ドライバが配布されており、動作に支障はなさそうだ。

 とうわけで、この時点で、このPCでのWindows 7の動作はほぼ問題ないと考えられることになるが、念のため、マイクロソフトが配布している「Windows 7 Upgrade Advisor」を利用して対応状況を確認してみた。すると、1つ問題が見つかった。それは、マザーボードに搭載されている、Promise製のSATA II RAIDコントローラ「PDC20579」で、「互換性不明」と表示されたのだ。このコントローラは、2ポートのSATA IIポートを持つPCI接続のSATA II RAIDカード「FastTrak TX2200」に搭載されているコントローラと同じものだが、PromiseのホームページをチェックしてもWindows 7用ドライバは配布されておらず、Windows 7での動作は微妙だ。この点は、実際にWindows 7をインストールした上で確認したいと思う。

 ちなみに、搭載されていたHDDは、IDE接続のもので、SATA II RAIDコントローラには接続されていない。そういった意味では、今回利用したPCに限って考えれば、SATA II RAIDコントローラがWindows 7で動作しないとしても、ほぼ実害はない。

 また、チップセットのIntel 855GMEには、グラフィック機能「Intel Extreme Graphics 2」が統合されているが、このグラフィック機能はDirectX 7準拠のため、Windows 7のシステム要件を満たさない。一応、こちらもWindows 7での動作をチェックしてみようと思う。

側面から見た様子。見た目は限りなく自作PCに近い搭載マザーボードは、AOpenの「i855GMEm-LFS」。チップセットにIntel 855GMEを採用する、Micro ATX仕様のマザーボードだ搭載CPUは、Pentium M 1.70GHzだった
メインメモリはPC-3200 DDR SDRAMで、512MB DIMMと1GB DIMMの2枚、計1.5GB搭載されていた拡張カードは、GeCube製Radeon X1050搭載ビデオカード「GC-R105LPA-C3」と、バッファロー製のIEEE 802.11 b/g対応無線LANカード「WLI2-PCI-G45S」の2枚が取り付けられていた。ビデオカードはAGP接続、無線LANカードはPCI接続だ
HDDは、Western Digital製の「WD3200JB」と「WD5000AAJB」を搭載、双方ともIDE接続のHDDだ光学式ドライブは、日立LG製の「GSA-4160B」を搭載。こちらもIDE接続ドライブだ

●当初作業につまずくも、BIOS設定の初期化でトラブル解消

 このPCは、もともと個人利用のPCであるとともに、しばらく放置されていたものだったため、念のため、HDDを初期化するとともに、初期導入OSであるWindows XP Professionalをクリーンインストールした上で、Windows 7へのアップグレードやパフォーマンス比較を行なうこととした。ただ、この時点で少々トラブルが発生。クリーンインストールしたWindows XPの動作が非常に不安定だったことに加え、Windows 7インストール終盤でPCがブルースクリーンを表示して落ちてしまい、正常にインストールが進められなかったのだ。

 そこで、無線LANカードなど不要な拡張カードを外したり、BIOS設定を見直して、不要なデバイスを全てDisaledに設定するとともに、CPUやメモリの動作クロックなどもチェックし、問題のないことを確認したうえで作業を再開してみたが、それでも状況は変わらなかった。マザーボードBIOSがアップデートされていないかもチェックしたが、既に最新BIOSが導入された状態だった。

 さすがにこれはお手上げか、とも思ったのだが、念のためBIOSから「Load Setup Defaults」を選択してBIOS設定を初期化してみたところ、それまでの問題が嘘のように解消され、Windows XPも安定して動作するようになっただけでなく、Windows 7のインストール中にブルースクリーンで落ちることもなくなった。PCがしばらく放置されていたことで、BIOSのバックアップバッテリが消耗し、BIOS設定になんらかの問題が発生していたのだろう。もし、古いPCでWindows 7インストール時に問題が発生するようなら、BIOS設定を見直すだけでなく、初期化を試してみてもらいたい。

 Windows 7のインストール作業は、これまでと同じで、パッケージ版の「Windows 7 Professional アップグレード」を利用して、Cドライブに新規インストールを行なった。ただし、当初トラブルが発生したため、念のためバッファローの無線LANカードは取り外した状態で作業を進めた。

 不具合の解消以降、Windows 7のインストールは全く問題なく行なえた。インストール直後の段階で、SATA II RAIDコントローラ以外のデバイスのドライバが自動的に導入され、インストール終了直後のWindows Updateでも、最新のデバイスドライバが導入されることはなかった。もちろん、各デバイスメーカーが配布しているWindows 7用デバイスドライバを別途ダウンロードして導入してもいいが、今回利用した範囲内では、標準導入のドライバのままでも特に問題なく利用できた。

 また、インストール時に外していた無線LANカードを、Windows 7インストール後に取り付けてみたところ、カードを取り付けて再起動した段階で自動的にドライバが導入されるとともに、Windows Updateを実行すると、最新ドライバが見つかり、バッファロー配布のWindows 7用ドライバを導入せずとも利用可能となった。ただし、カードを取り付けた段階で有線LANコネクタからLANケーブルを抜いていると、正常にドライバが導入できなかった。

 懸案のSATA II RAIDコントローラについては、やはり自動でドライバが導入されることはなかった。ただ、Windows 2000/XP、Windows Server 2003用として配布されているドライバを指定してみたところ、警告は表示されたものの、ドライバは正常に導入され、デバイスマネージャーから警告の「!」マークが解消された。

 最後に、チップセットであるIntel 855GMEの統合グラフィック機能の動作を確認するために、ビデオカードを外して起動してみた。しかし、起動途中で動作が止まり、Windows 7が起動することはなかった。また、セーフモードで起動しようとしても、起動途中で動作が止まってしまう。

 そこで、Intel 855GME統合グラフィック機能を利用した状態でWindows 7をインストールする必要があるのかと考え、実際にこの状態でWindows 7をインストールしてみようとしたが、その場合でも、インストーラの起動途中で動作が止まってしまった。さすがにこういった状況なので、今回のPCでは、Intel 855GME統合グラフィック機能利用時のWindows 7の動作検証は断念した。

 ただ、Intel 855GM統合グラフィック機能を利用したWindows 7の動作報告もあるため、この点については、今回利用したPC固有の問題としておく。

 以上で、Windows 7のインストール作業は終了とする。

Windows 7 Upgrade Advisorでは、オンボードデバイスのPromise製SATA II RAIDコントローラ「PDC20579」が互換性不明と表示されたが、それ以外に問題は表示されなかった当初、Windows XPのクリーンインストールやWindows 7のインストールでトラブルが発生していたが、BIOSで「Load Setup Defaults」を実行することで不具合は解消されたWindows 7インストール直後のデバイスマネージャー。オンボードのSATA II RAIDコントローラーにのみ「!」マークが付いているが、それ以外は全て正常にドライバが導入された
Windows Updateを実行しても、搭載されるデバイスのドライバは何もダウンロードされないSATA II RAIDコントローラは、PromiseまたはAOpenのサポートページで配布されている、Windows XP用ドライバをダウンロードしてデバイスマネージャーから指定することで、正常にドライバが導入された再起動後、SATA II RAIDコントローラの「!」マークが消え、全デバイスが正常に利用できるようになった
SATA II RAIDコントローラのSATAポート接続したHDDも問題なく認識され、利用できた(ディスク2が、SATAポートに接続したHDDだ)バッファローの無線LANカードは、バッファローが配布するWindows 7用ドライバを導入してもいいが、Windows Updateからも最新ドライバが導入され、簡単に利用できるようになる

●デバイスの動作に問題はなく、快適度も大幅に下がることはない

 Intel 855GME統合グラフィック機能を利用した動作は確認できなかったものの、それ以外の機能については全て問題なく利用できた。

 Radeon X1050では、標準でWindows Aeroが利用できたし、オンボード機能もサウンドやLAN、IEEE 1394など全て正常に利用できた。また、ドライバがなく動作が不安だったSATA II RAIDコントローラについても、Windows XP用ドライバを利用することで動作を確認。実際にSATA HDDを接続して、領域の確保やデータの保存など、全く問題なく利用できた。Intel 855GME統合グラフィック機能を利用しない限り、Windows 7は問題なく動作すると考えていいだろう。

 パフォーマンスに関しては、Windows XP時と比べ、やや動作が重くなったかな、という印象もあるが、全体的には我慢できる範囲内で、大幅に重くなったという感覚は受けなかった。OSの起動時間は、Windows XPに比べてWindows 7の方がやや遅くなっているが、OSの終了はほぼ同等。また、Internet Explorer 8を利用して、起動からPC Watchのトップページが表示されるまでの時間を計測したところ、こちらもほぼ同等の速度であった。さらに、PCMark05の結果も、Windows XPとWindows 7との間に大きな差はなく、この結果からもWindows 7時のパフォーマンスがそれほど重くないということがわかるはずだ。

 もちろん、他のアプリケーションでは差が出るものも存在するとは思う。それでも、基本的にはWindows 7を導入したからといって、Windows XPと比べて快適度が大きく落ちるということはないと考えていいだろう。

 今回、Intel 855GMEマザーボードを搭載するデスクトップPCにWindows 7をインストールしてみたが、事前に、ほぼ問題なく動作すると想定してはいたものの、用意されているデバイスのほとんどがWindows 7で正常に利用できるのはもちろん、快適度もWindows XPに比べ大きく下がることがなかったのは、正直驚きだった。これなら、Windows 7へのアップグレードも十分におすすめできそうだ。

OSの起動時間Windows XPWindows 7

40.6247.84

43.5648.22

4048.78
OSの終了時間Windows XPWindows 7

9.979.87

10.8710.1

11.5310.15
IEの起動時間Windows XPWindows 7

5.476.54

6.346.81

6.687
PCMark05Windows XPWindows 7
PCMark Score22412231
CPU Score27042569
Memory Score23362271
Graphics Score10751091
HDD Score48624705
全デバイスが正常動作するとともに、Windows Aeroも問題なく利用できた。動作もそれほど重くならず、かなり快適に利用できる

 Pentium M 1.70GHzが登場したのは、2003年6月のこと。これは、ノートPC向けのCPUだが、当時のデスクトップPCでは、CPUはFSBクロックが800MHzのPentium 4、チップセットはIntel 865シリーズを採用するものが中心。また、それ以前では、CPUはFSBクロックが533MHzのPentium 4、チップセットはDDRメモリをサポートした第2世代Intel 845シリーズが広く採用されていた。今回の検証結果から考えると、基本的に、それら仕様のデスクトップPCであれば、Windows 7も問題なく動作するものが多いと考えられる。

 第2世代Intel 845シリーズ以前のチップセットを採用するPCでは、メインメモリ搭載容量などの点でWindows 7に対応しないものも増えるが、やや動作クロックの低いノート向けCPUを搭載する今回のマシンでも、現在市販されているAtom搭載マシンより十分快適に利用できたことを考えると、2003年頃に購入したデスクトップPCの多くは、Windows 7へのアップグレードも十分考慮に値すると結論づけていいだろう。


□インストール手順の注意事項

・インストール前に必ず「Windows 7 Upgrade Advisor」で環境をチェックしよう
・HDD内のデータは必ずバックアップしよう

□今回の結果

・Windows 7およびデバイスの動作に問題はなく、快適度も大きく下がることはない
・Windows XP用ドライバを利用することで、SATA II RAIDコントローラも正常動作する
・今回のPCでは、Intel 855GME統合グラフィック機能は利用できなかった

(2009年 12月 9日)

[Reported by 平澤 寿康]