平均で約9.99mmという極限の薄さを実現するとともに、液晶を開いた状態での特異な形状などで話題となっている、デルの超薄型ノートPC「Adamo XPS」の販売が、11月18日より開始となった。今回、短時間ではあるがAdamo XPSを試用する機会を得たので、ファーストインプレッションをお届けする。なお、今回試用したAdamo XPSは、英語キーボード、256GB SSD、英語版Windows 7搭載と、日本での販売モデルと仕様の異なる試作機である。この点を、あらかじめご了承願いたい。
まず、本体の外観からチェックしていこう。箱から取り出して本体を見た第一印象は、とにかく薄いの一言。本体を真横から見ると、この薄いボディ内に、ノートPCを構成するパーツが詰め込まれていることに疑問を感じてしまうほどだ。ちなみに、実際の厚さは、本体前面が9.7mm、後方が10.3mmと、前方がわずかに薄く、後方がわずかに厚くなってはいるものの、その差はほとんど感じられず、ほぼフラットと考えていい。
これだけ薄いにも関わらず、本体の剛性はかなり高い。本体の角のみをつかんで本体を持ち上げても、本体がしなることはないし、本体側面を持ってねじってみてもビクともしない。天板中央部こそ、ややぺこぺこしているものの、全体的な剛性は申し分なく、薄さから来る堅牢性の不安がほとんど感じられない点は特筆すべきだろう。
この際立った薄さに対し、フットプリントは340×272mmとかなり大きい。DOS/V POWER REPORT誌との比較からも、その大きさがわかると思うが、17型クラスの液晶を搭載するノートPCに匹敵するサイズだ。極限までの薄さを実現するには、これだけのフットプリントが必要だったのだろうが、少し大きすぎるようにも感じる。
ボディカラーは、素材であるアルミニウムのシルバーカラーをそのまま採用。側面後方のポート付近こそブラックとなっているが、天板のロゴも目立たないように配慮されており、見た目は非常にシンプルだ。ちなみに、その薄さや、シルバーカラーでシンプル、また角や周辺部が曲面となっている点などを見ると、アップルのMacBook Airを彷彿とさせる。実際にMacBook Airと並べて比較してみても、天板から見た印象は非常に近いものがある。
本体重量は、実測値で1,426g。この数字を見ると、特別軽いという印象は受けないと思うが、フットプリントが大きいこともあって、実際に手に持つと、数字以上に軽く感じる。ただ、これだけの大きさがあると、収納する鞄はかなり大きいものが必要となり、携帯性は特段優れているとは言い難い点もある。
本体底面は、本体キーボード面が液晶パネル面に完全に収納されるという、Adamo XPS独特の形状を反映して、一般的なノートPCにはない雰囲気だ。また、空冷ファンの吸気口や排気口、スピーカ部などのスリットが左右対称に配置されている点も、デザイン面のこだわりが感じられる点だ。だが、むき出しになっているネジや、ヒンジや本体と液晶面との境界線などは、もう少し目立たないような工夫があっても良かったように思う。
Adamo XPSは、その形状に加え、本体を開く操作も非常に独特だ。液晶面に収納されるキーボード面は、液晶面上部の左右に用意されている2つのツメによって固定されている。このツメは、天板手前の溝が掘られた部分に収納されているタッチセンサーを指で横になぞることで開放され、本体を開けらるようになる。動画を見てもらうとわかるように、センサー部を指でなぞると、その手前のLEDに光が流れ、センサーが働いていることを目でも確認できる。あとは、本体手前を上に引きあげれば、本体を開くことが可能。ただし、液晶部のみを持って開こうとしても、途中からキーボード面が付いてきてしまうため、パームレスト部を押さえつつ開くのが基本となる。
ちなみに、このような機構を採用しているのに加え、物理的にツメを開放する機構が用意されていないため、ACアダプタとバッテリを外した状態やバッテリ切れでは本体を開けることはできない。ツメを引き込む機構は、おそらくソレノイドが利用されているものと思われる。
本体を開いた形状は、一般的なノートPCと比べると、やはり大きな違和感を感じる。ただ、底面のゴム足によって、完全に開いた状態だけでなく、液晶面の角度を調節しても安定性は申し分ない。また、キーボード面の剛性も非常に高く、パームレストに手を置いてやや力を入れてみてもしなりなどはほとんどなく、不安がない。ただ、ヒンジ部は比較的柔らかく、少々不安を感じる。液晶面を必要以上に奥に開くような操作は行なわない方が良さそうだ。
液晶ディスプレイは、1,366×768ドット表示対応の13.4型ワイド液晶を採用。バックライトには白色LEDを採用しており、輝度は申し分ない。ただ、液晶表面の光沢処理がきつく、周囲の映り込みがやや激しい点と、上下の視野角が狭く、見る角度によって大きく色合いが変化する点は気になった。液晶上部中央には、200万画素のWebカメラが目立たないように搭載されている。
キーボードは、キーが独立したアイソレーションキーボードを採用。ストロークはかなり短いものの、キーピッチは約18.5mm(実測値)と十分な余裕があるとともに、クリック感もしっかりしており、見た目以上に扱いやすい。ただ、最上段のファンクションキーの列はボディと同じ高さに埋め込まれたボタン型となっているため、少々扱いづらい。ポインティングデバイスのタッチパッドは、パッド面積が大きく、指2本を利用したスクロールや拡大/縮小などの操作も行なえ、十分に扱いやすい。
【動画】センサーを指でなぞると手前のLEDが光り、本体を固定するツメが開放される | 【動画】正面から見た本体を開く様子 | 【動画】横から見た本体を開く様子 |
基本スペックは、CPUが超低電圧版Core 2 Duo SU9400(1.40GHz)、チップセットがIntel GS45 Express、メインメモリが4GB(DDR3-800)、ストレージが容量128GBのSSDで、これら仕様は固定となっている。OSは、64bit版のWindows 7 Home Premiumが採用されている。
この薄型ボディに、超低電圧版とはいえCore 2 Duoを搭載するため、熱への対処が少々気になるが、Adamo XPSはファンレス仕様ではなく、本体左側面後部に空冷ファンが取り付けられている。ただ、非常に薄いファンということもあって、風量はかなり少なく、側面の排気口に手を近づけてようやくわずかな風が感じられるといったもので、このファンによってCPUなどの熱を効率良く放熱できるのか、少々不安も感じる。
ただ、ベンチマークテストなど高負荷のアプリケーションを実行していると、キーボードとヒンジの間の部分がかなり熱くなるものの、動作が不安定になることはなかった。Adamo XPSの独特な形状によって、本体下部に大きな空間が確保されており、ファンによる排熱だけでなく、筐体からも効率良く放熱されていると考えて良さそうだ。また、パームレスト部も若干温かくなるものの、高温になるのはキーボードより奥の部分であり、利用していて不快な熱さを感じることもない。ちなみに、空冷ファンの音は非常に小さく、ファン付近に耳を近づけるとかろうじて動作音が聞こえる程度で、静音性はファンレス+SSD搭載マシンとほとんど変わらない。図書館など、静かな場所での利用も安心だ。
バッテリは、容量20Whのリチウムポリマーバッテリを採用。バッテリ駆動時間は、公称で最大2時間36分とされている。今回は試作機ということもあり、バッテリ駆動時間は検証しなかったが、おそらく通常利用でのバッテリ駆動時間は2時間を切るものと思われる。ただ、バッテリ駆動時間を重視するなら、オプションで用意されている容量40Whの大容量バッテリを利用すればいいだろう。大容量バッテリの公称駆動時間は約5時間17分とされている。
最後に、いくつか実行したベンチマークテストの結果を掲載しておこう。ただし、今回試用した試作機は、冒頭でも記しているように英語キーボードおよび英語版Windows 7搭載で、一部スペックも販売モデルと異なる点があるため、この結果はあくまでも参考値と考えてもらいたい。詳しいレビューやベンチマークテストは、日本仕様の販売モデルが入手できた段階で改めて行なう予定だ。
PCMark Vantage | |
PCMark Suite | 3956 |
Memorys Suite | 2632 |
TV and Movies Suite | 2269 |
Gaming Suite | 3002 |
Music Suite | 5314 |
Communication Suite | 3593 |
Productivity Suite | 5346 |
HDD Test Suite | 19906 |
PCMark05 | |
PCMark Score | N/A |
CPU Score | 3246 |
Memory Score | 3056 |
Graphics Score | 1097 |
HDD Score | 20812 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |
LOW | 2169 |
HIGH | 1492 |
(2009年 11月 24日)
[Reported by 平澤 寿康]