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PC Watchの記事で振り返るHDDメーカーの栄枯盛衰

 HDDメーカーのWDがフラッシュストレージメーカーのSanDiskを買収したという21日付けのニュースは、事前にそういった憶測も流れていたものの、大きな驚きを持って迎えられた。それは、2兆円を超える買収金額の大きさだけでなく、現在HDDメーカーが立たされている岐路を端的に表わしているからだろう。

 HDDメーカー各社はこれまで、同業の競合他社を吸収合併することで、市場シェアを拡大し、生き残りを図ってきた。僚誌AKIBA PC Hotline!が掲載したこちらの記事によれば、「1986年頃には、実に76社ものHDDサプライヤー(HDDメーカー)が存在したが、年々廃業や統合によって減っていき、7年後の1993年には36社と半分以下になった。2015年の現在に至ってはSeagate、Western Digital、TOSHIBAの3社しか残っていない」とのこと。

年別HDDサプライヤー数のグラフ。2000年までに急激に数を減らしていることが分かる※出典:NAS EXPO 2015 秋でのくまなんピーシーネット代表の浦口康也氏のスライドより
HDDサプライヤーの統合の歴史。昔人気を集めていたMaxtorやQuantumもなくなり、日立もIBMを買収、その日立もWestren Digitalに買収された※出典:NAS EXPO 2015 秋でのくまなんピーシーネット代表の浦口康也氏のスライドより

 その主な推移は、弊誌でも記事に取り上げている。

 さて、今回WDが買収したのは、Seagateでも東芝でもない。ストレージはPCに必須の装置だが、その主役の座はHDDから、速度向上著しく、かつ容量辺りの単価も下がってきているSSDやeMMCへ移り変わりつつある。クライアントだけでなく、データセンターにおいてもフラッシュストレージの採用は近年めざましい。そういった状況を受け、新たな形のストレージメーカーに転身を図ろうとするのが今回のWDの決断だろう。

 WDは2013年にもフラッシュストレージメーカー2社を次々と買収している。しかし、買収金額は今回に比べれば微々たるものだ。その意味でSanDiskの買収は、同社の中期的な転身計画の大きな締めくくりと言える。

 WDはSanDiskと東芝の合弁については今後も継続すると述べているが、今後のSanDiskのブランドやフラッシュストレージの製品計画はまだ明らかにされていない。他のHDDメーカーも含め、今後のストレージメーカーの成り行きから目が離せない。

(若杉 紀彦)