メモリ屋社長のちょっとタメになるメモリ話

DRAM屋 兵どもが 夢の跡

 みなさま、こんにちは。センチュリーマイクロ株式会社代表の嶋野です。前回のコラム、初めての体験だったもので勝手がわからずドキドキしていましたが、「あ、メモリーカードマンだ!」や「あ、センチュリーカードマンだ!」など、温かい反応をたくさんいただきました。

 実は一番多かったのが、「あの写真は合成なのか?」という質問でした。まったく予想していませんでしたが、コラムの内容よりも写真の話題で先行してしまったようですね。いずれにせよ、リアクションをいただけるのはうれしいものです。ありがとうございます。

メモリ企業の変遷

 さて、前回のコラムは、かなり技術寄りの専門的な内容だったので、今回は半導体の話を私視点でゆるーく解説しようと思います。

 半導体といっても多種多様です。私はメモリ屋ですから、メモリモジュールに搭載しているDRAMを中心にお話ししたいと思います。

 現在、DRAMと言えば、韓国のSAMSUNGやSK hynix、アメリカのMicronなど海外のメーカーばかりが思い浮かぶと思いますが、かつて日本にもDRAMメーカーが多数存在していた時期がありました。

 ということで、まずはDRAMの歴史のお話。時代は1980年代まで遡ります。ゲーム機で言うと、セガ・マークIIIくらいの時代です。スペースハリアーやアウトランなど名作が多数ありましたね。その中でも私はファンタジーゾーンが大好きでした。みなさん、どんなゲームが好きでしたか?

 ……と、いきなり話が脱線しそうなので、セガ・マークIIIな気持ちを抑え、強引に話を元に戻します。

 1980年代、日本メーカーのDRAMは世界シェアの約80%をしめていましたが、1990年代以降、韓国を始めとした海外勢との競争に苦戦し、2010年には約20%まで落ち込みました。当時、日本のDRAMメーカーと言えば、東芝、三菱、NEC、日立、富士通など、日本の大手企業が自社ブランドのDRAMを取り扱っていました。しかし現在では、日本のDRAMメーカーはなくなってしまっています。

 国内最後のDRAMメーカーだったエルピーダは、NECと日立の合弁会社(NEC日立メモリ株式会社)が発祥でした。Micronに買収されましたが、いまでも根強いファンがいる個人的にも思い出深いメーカーです。

 改めて振り返ると、半導体業界は撤退・合併・買収・倒産など、再編の嵐が常に吹き荒れている感じがします。

 例えば、SK hynixですが、HYUNDAI(現代)→hynix→SK hynixと社名を変更しています。社名が変わる度にDRAMの刻印が変わるので、DRAMの在庫管理や部品表の変更に、ひじょうに苦労した記憶があります。

 そしてHYUNDAIと言えば、ご存知(?)TC-10Pです。Pentium IIとK6-2のベンチマーク競争が激化している頃の話です。通常の使い方ではベンチマークのスコアが頭打ちになるため、CPUやメモリのクロックを規定値以上に設定する、いわゆるオーバークロックが大流行しました。HYNDAIのTC-10PはSDRAM PC66というスペックでしたが、ちょっと設定を変更するだけでPC133くらいは平気で動いてしまう超絶イケてるDRAMだったのです。ベンチマーカーはこぞってこのDRAMが搭載されているメモリを探していました。

 ちなみに私が自作PCにハマったのも、まさにこの時代です。給料のすべてをPCパーツにつぎ込んでいました。何をするワケでもなく、本当ベンチマークのためだけに、パーツをとっかえひっかえしていましたね。HD Bench、ファイナルリアリティ、Celeron 300AとかVooDoo IIの2枚挿しとか、こんなワードでピンときちゃう人は、マニアかアラフォーのどちらかです。

 ……と、この頃の話をすると時間がいくらあっても足りないので、ベンチマーカーな気持ちを抑え、DRAMメーカーの話をしたいと思います。

DRAMの刻印の読み方

 現在、自社で工場を持っているDRAMメーカーは主にSAMSUNG、Micron、SK hynix、NANYA、Winbondの5社だけです。この5社以外のメーカー名やブランドがDRAMに刻印してあるものは、DRAM生産工程における「後工程/レーザーマーキング」にて印字されていることがほとんどです。

 今ではあまり見かけなくなりましたが、昔は非JEDECのメモリモジュールや聞いたこともないようなブランド名が刻印されていたときもありました。

 DRAMの仕様は、各DRAMメーカーのホームページで確認することができます。調べ方はとても簡単です。下記のご参考までに。ここではSK hynixのDRAMを例に取り上げて説明します。製品の型番は「H5AN4G8NAFR」となります。


    1. DRAMの刻印を見て、製品型番を確認する。
    2. DRAMメーカーのホームページから上記型番を検索し、製品ページへ行く。製品ページの下にある「Technical Data Sheet」を参照する。
    3. データシートから、1で調べた型番を探し、DRAMのbit構成、クロック周波数、CAS Latency等を確認します。

 以上のことから、このDRAMは、SK hynixのDDR4-2400/512Mx8(4Gbit)/17-17-17ということがわかります。

 購入のさいは、これを知っておくことで、トラブルに遭遇する確率を大きく下げることができます。でも、トラブルも自作の醍醐味の1つですからね。あーでもないこーでもないとやっているウチに、知識や技術が向上することもあります。ちなみに私は、思いっきりこのクチです。

 ということで、以上が2回目のコラムとなります。ちょっとタメになりましたでしょうか。3回目のネタこそは、みなさまからいただいたお題からチョイスしたいと考えておりますので、弊社Twitter宛てにリクエストをお寄せください。

 それではまた!

嶋野 康生

センチュリーマイクロ株式会社代表取締役社長。PCパーツショップのサポート、台湾系マザーボードメーカーを経て、2005年7月にセンチュリーマイクロに入社。マーケティング担当として入社したが、Webマスター・営業などさまざまな業務を担当後、現職に至る。PC、スマホはもちろん、カメラやクルマ、バイクなど多趣味かつ新しいモノ好き。たまにものすごく脱線します。