特集

薄さ8.4mmのシンセイ製WiMAXルーター「URoad-Aero」を試す

URoad-Aero
2月20日 発売

価格:オープンプライス

 UQコミュニケーションズ株式会社は、2月20日にシンセイコーポレーション(以下シンセイ)製のWiMAX対応モバイルルーター「URoad-Aero」を発売する。モバイルルーターとして“世界最薄”を謳う、コンパクトさが売りの製品だ。

 また、待機(スリープ)時間1,000時間というバッテリ駆動時間も売りの1つ。連続通信時間も12時間と、こちらもWiMAXルーターとしては最長時間を誇る。指定した時間に電源オン状態とスリープ状態を切り替える「タイマー予約」機能を搭載することで、バッテリ駆動時間を最大限に活かす仕組みも備えている。

 発売に先立ち、本製品を借用することができたので、その機能チェックおよびバッテリ駆動時間のテストなどを行ないたい。

フットプリントはやや大きくなったが8.4mmの薄さは際立つ

 URoad-Aeroの第1の売りは、本体サイズだ。本体サイズは約63.8×106×8.4mm(幅×奥行き×高さ)と、特に本体の薄さは“モバイルルーターとして世界最薄”を謳う。実際に持ってみても、力をかければ折れてしまうのではないかと思うほど薄い。もちろん内蔵のバッテリもおかげもあって、外装はプラスチックではあるものの、簡単に折れるほど華奢ではない。

 ちなみに、前モデルである「URoad-SS10」の本サイズは約90×63×11.8mm(同)なので、フットプリントはやや広くなっている。ただ、約90×63mmというサイズは携帯電話で比較する3.5〜4型以内のサイズに収まるもので、バッグの携帯電話用のコンパートメントなどに収納する場合にも窮屈さは感じない。むしろ薄くなったことで、バッグが変に膨らまないし、ほかのアイテムを入れる余裕も広がっており、薄くすることに注力した方向性は正しいと感じる。

 このバッグの携帯電話用コンパートメントへの収納という観点では、もう1つ本製品にはポイントがある。それがボタン(スイッチ)のレイアウトだ。前モデルのURoad-SS10は、正面に電源ボタン、側面にスリープとWPSボタンを備えていたのに対し、本製品は正面にスリープボタン、側面に電源とWPSボタンを備えるレイアウトへ変更された。

 このレイアウト変更は、電源のオン/オフではなく待機(スリープ)時間を活用して使って欲しい本製品のコンセプト(詳しくは後述する)に基づくものだが、スリープボタンを正面に配置し、しかも大きくしたことによってコンパートメントを開けることなくスリープからの復帰がやりやすく、非常に実用性の高いレイアウトに感じる。

 ただ、電源とWPSボタンは一体化したもので、ボタンが小さすぎて押しにくさを感じる。先述のようなコンセプトに基づけば、電源ボタンに触れる機会は最小限になるはずで、押しやすさよりもサイズの小ささや、部品点数を少なくすることを優先した結果なのだろう。

名刺(91×55mm)とのサイズ比較
CDケース(5mm厚)との厚みの比較
同社製従来モデルとの比較。左からURoad-8000、URoad-SS10、URoad-Aero
正面中央に大きくスリープボタンを配置。その上部には各種インジケータを装備。バッテリ残量は0〜2/2〜10/10〜40/40〜100%の4段階で色や光り方が変化する
正面にスリープボタンがあることで、バッグなどの携帯電話用コンパートメントに収納した場合でも、バッグの上からボタンを押しやすく、スリープ-オンの移行が容易
側面に電源ボタン、WPSボタン。ボタンのパーツは一体化しているうえ小さく、少々押しにくい
反対側の側面にストラップホールとMicro USB。Micro USBは充電のほか、USBに接続してのインターネット接続にも対応する

 また、本製品は新たにオプションで専用クレードル「URoad-Aero Station」を用意した。バッテリ充電、URoad-Aeroをインターネット回線として利用し有線ルーターとして動作する「Routerモード」、URoad-Aeroの無線LAN機能を利用して無線LANアクセスポイントとして動作させる「APモード」の利用が可能だ。

 この辺りはシンセイにとっては競合と言って差し支えないNECアクセステクニカのWiMAXルーターでは、WM3500Rの時点で対応していた機能であり、ようやく追いついたといえる。

 ちなみに、クレードルのカラーはホワイト1色。本体色はブラック、レッド、ホワイトの3色がラインナップされているが、クレードル上部にクリアのパーツを使っていることもあってか、どのカラーと組み合わせても違和感はない。電子機器らしくないデザインなのも好印象だ。

オプションの専用クレードル「URoad-Aero Station」。カラーはホワイトのみ。シンセイ直販価格は2,980円
URoad-Aeroはクレードル接続用に30ピンの専用端子を装備している
背面には有線LANコネクタ、AC電源コネクタに加え、Router/APモード切り替えスイッチを備える
クレードルと各色の組み合わせ

指定した時刻にスリープとオンを切り替える「タイマー予約」機能

 ルーターとしての各種設定/ステータス確認はWebブラウザによる設定画面から行なえる。併せてスマートフォンアプリの「URoad Magic」が無償提供されており、バッテリ容量を含むステータス確認や一部設定をこちらから行なうこともできる。

 Webブラウザからの設定はWiMAX関連以外は、最低限の機能を持った無線LANルーターとほぼ同じ。ルーター関連の機能では、DHCPサーバーはMACアドレスによる静的割り当て機能を持つほか、MAC/IP/ポートのフィルタリング、ポートフォワーディング、ファイアウォール機能などを備える。無線LAN関連ではSSIDやセキュリティ設定が可能で、2個のSSIDに対応。WPSはプッシュボタン認証とPIN認証に対応する。

 WiMAX関連では、公衆無線LANモードに対応したこともあって、優先接続先を指定する設定画面が用意されている。

 先述したUSB接続モードについてはデフォルトではオフになっていた。利用するにはあらかじめオンに設定する必要がある。USB接続した場合は他社製品でのUSBテザリングと同様、Remote NDIS based Internet Sharing Deviceとして認識する。

Webブラウザによる設定画面のトップページ
公衆無線LAN設定は優先する接続先を指定可能。デフォルトはWiMAX優先
システム設定ではUSB接続(テザリング)モードの有効/無効を切り替えられる
USB接続した場合はRemote NDIS based Internet Sharing Deviceとして認識

 省電力関連の設定は、本製品の特徴の1つでもあるので細かくチェックしたい。まず一般的な、オンから一定時間経過後に電源をオフする設定は、10〜60分まで10分刻みで指定できる。加えて、強制的に休止(スリープ)状態へ移行するボタンも、設定画面に用意されている。

 そして、本製品の新機能として搭載されたのが「タイマー予約」設定だ。これは、スリープからオン、オンからスリープへの移行を、決められた時刻に自動で行なうもの。その設定は、本機能の有効化と、各時刻の設定、そしてどの曜日にその設定を適用するかを指定する項目が用意される。

 現状では1パターンの設定で、かつ指定した全ての曜日に同じ設定しか適用できない。例えば、月曜〜金曜に勤務中に使うのがメインなで朝9時にオンにし、18時にスリープにする、といった設定だ。朝起きてから出社までと退社から寝るまでにオン-スリープを移行させるような1日2パターンという設定や、平日と休日で別の時刻を設定しておくことはできない。

 現状では柔軟性に欠けることから利用シーンは限られるのではないかと思うが、例えば朝の通勤は時間がほぼ決まっているのでタイマーでオン-スリープさせ、帰宅時にのみ手動で操作する、といった使い方は、多少ながらも手間の軽減に繋がるだろう。タイマー予約の設定についてはシンセイでも機能強化を考えているとのことなので、より柔軟な設定を可能にすることでユーザーの手間を軽減できるように進化することを期待したい。

自動オフ時間の設定は無効もしくは10〜60分まで10分刻みで指定可能
タイマー予約設定はスリープへ移行する時刻、スリープから復帰する時刻、曜日を指定しての繰り返し設定を行なえる
タイマー予約の時間は本体内蔵時計を参照する。NTPサーバーとの同期機能も備える

 スマートフォンアプリのURoad Magicは省電力関連の機能を充実させており、電源オフ、スリープへの移行ボタンと、このタイマー予約の設定画面が用意されている。また、先に示したWebブラウザによる設定トップ画面の右上に「モバイルブラウザ用ページ」というボタンがあるが、こちらの画面は電源オン/オフやスリープへの移行ボタン、ステータスの確認程度で、設定変更などは通常のWebブラウザによる設定画面を使うことになる。

 ちなみに、本製品より1週間ほど早く発表されたNECアクセステクニカの「AtermWM3800R」では、スマートフォンアプリを使ってスリープ状態からの復帰を行なえる機能が話題になっている。本製品のスマートフォンアプリはオンからスリープへの移行のみで、スリープからオンへの移行はできない。

 この点についてシンセイの担当者は「スリープ状態でスマートフォンからの指示を待ち受けると、そのことでバッテリを消費してしまい待機時間が短くなる」と説明している。また、詳しくは最後に記すが、根本的に目指す方向性が異なる製品と考えるべきでもあり、この辺りはバッテリテストの結果からも窺うことができる。

スマートフォンアプリ「URoad Magic」。トップ画面には感度やバッテリ残量といったステータス表示のほか、WiMAX/公衆無線LANの切り替え、電源オフ/スリープボタン、タイマー予約設定のボタンが用意される
URoad MagicからSSID/暗号キーの設定やUSB接続モードの有効化などの設定は可能
Webブラウザの設定画面にモバイル版も用意されているが機能は非常にシンプルで、細かい設定を行なう場合にはPC版の画面へアクセスする必要がある
タイマー予約の設定画面。Webブラウザの設定画面で行なえることと同等の設定が可能

 参考までにWiMAXの転送速度について、電波状態の良い都営新宿線・市ヶ谷駅の改札付近で、PC(ThinkPad X121e、Pentium 957搭載)およびスマートフォン(ELUGA X P-02E)それぞれから、SpeedTest.netで測定してみた。誤差もあるので、テストは5回測定した結果の中間3回分を提示する。

 結果はPCからのアクセスは下り10.2〜15.01Mbps、上り6.91〜7.09Mbps、Pingの応答が83〜89ms。スマートフォンからのアクセスが下り14.74〜27.1Mbs、上り8.93〜9.55Mbps、Pingが166〜179msとなった。

 同じ場所、ほぼ同じ時刻に、AtermWM3500Rでも同様のテストを行なったが、PCからのアクセスが下り10.25〜26.15Mbps、上り7.05〜7.09Mbps、Pingが65〜136ms。スマートフォンからのアクセスが下り18.19〜20.91Mbps、上り7.97〜8.81Mbps、Pingが104〜109msとなっている。

30秒ごとの連続通信で13時間のバッテリ駆動

 さて、待機(スリープ)時間1,000時間、連続通信時間12時間といった、バッテリ駆動時間の長さも本製品の売りだ。

 ちなみに、本製品は前モデルとは異なりバッテリの着脱が可能になった。またバッテリも単体でオプション販売されることから、いざとなったらバッテリ交換して利用するという手段も採れる。

 搭載バッテリは前モデルのURoad-SS10が2,260mAhに対して、本製品は2,080mAhと小容量化している。にも関わらず、より長時間の駆動を可能と謳っている。ちなみに、発表時の同社の資料にはバッテリ容量が2,090mAhとの記載があるのだが、実際に搭載されているバッテリには2,080mAhと記載されている。

【2013年2月19日11時20分追記】バッテリ容量について、メーカーより販売される製品版では2,090mAhになるとのコメントを得ました。

背面カバーを開けることでバッテリの着脱が可能
バッテリは3.8V/2,080mAh。単体でオプション販売も行なわれる。シンセイ直販価格は3,500円

 では、実際にバッテリ駆動時間をテストしてみたい。テストに当たって、1アクセスごとに指定したインターバル時間を挟み、50サイトを巡回してHTTP GETを行ない続ける、Tera Termの簡単なマクロを組んだ。全ての通信に対して時刻とともにログを記録させることで、Webアクセスに成功した最初と最後の時刻からバッテリ駆動時間を導き出す。ただし、指定したインターバル時間未満の誤差は発生する。

 テストは以下の3パターンを実施した。

・パターンA:30秒のインターバルでWeb巡回を繰り返す
・パターンB:150秒のインターバルでWeb巡回を繰り返す
・パターンC:30秒インターバルのWeb巡回を繰り返す途中、タイマー予約で14時間のスリープ状態を挟む

 パターンAは単純にひたすら利用し続けた場合を想定。パターンBはパターンAとの比較から電源オンで無通信状態のバッテリの減り具合をチェック。パターンCはパターンAとの比較からスリープ状態でのバッテリの減り具合をチェック、というのがそれぞれのテストの目的だ。

 結果は以下のとおり。秒以下は切り捨てている。

・パターンA:13時間50分
・パターンB:14時間46分
・パターンC:27時間41分(13時間41分)

 まず、パターンAの、単純に30秒のインターバルでアクセスを繰り返した場合だが、14時間近く稼働するという、かなり優秀な結果を見せた。問題は1アクセスごとに発生するインターバルの存在だが、インターバル時間が5倍長いパターンBは1時間程度の駆動時間増。実際の通信回数はパターンAが1,550回、パターンBが352回となっている。この結果を併せて考慮すると、インターバル時間(つまり、無通信状態)でも、実際の通信を行なっている状態とまではいかないが、それに近い電力を消費していることが窺える。

 次にパターンCであるが、結果から14時間のスリープ時間分を差し引くと、パターンAから9分ほど稼働時間が短くなった。つまり、スリープ中もバッテリは消費していることになるが、その量は全体の駆動時間から考えると微々たるものと言っていいだろう。単純計算では、丸1日スリープで放置しても、パターンAは13時間30分ぐらいは持つことになる。

 これらの結果から、バッテリ駆動時間に関しては公称値の12時間に近いか、それ以上を期待できること、スリープ時間を活用することが本製品をうまく使ううえでのキーポイントになりそう、ということが分かる。

 ちなみに、発表/発売時期が近いだけに、どうしてもNECアクセステクニカのAtermWM3800Rと比べてしまう人も多いだろう。特にAtermWM3800Rが持つ“スマートフォンからのスリープ復帰”機能は、スリープを活用したい本製品に持っていて欲しかったと感じるかも知れない。

 ただ、文中でも少し触れたように、本製品はそもそものコンセプトが違うのだろう。シンセイの担当者は「URoad-Aeroという名前には空気のように扱ってもらえるようなWiMAXルーターという意味が込められている」と話している。つまり、タイマー予約もそうしたコンセプトから生まれたもので、ユーザーが何らアクションすることなく長時間のバッテリ駆動時間を実現し、生活の中でふと空気の存在を思い出すかのように、数日ごとにバッテリの充電を行なえば十分、といった使い方を目指しているのだと思う。

 それだけに、タイマー予約機能はもっと柔軟な設定を可能にすべきだろう。例えば、1日当たり2パターンの設定を可能にして、通勤/通学の往復それぞれのオン/スリープを自動化できるだけでもずいぶんと使い勝手は変わるだろうし、曜日ごとに異なる設定を可能にすれば、平日と休日の生活パターンに合わせて自動化できる。こうした機能のブラッシュアップには期待したい。

 とはいえ、現状でもハードウェアとしては高い完成度を持っている。収納しやすく使い勝手の良い本体のデザインもさることながら、半日程度はバッテリを気にせずに使い続けられる点で、モバイルルーターのバッテリに対しての苦労を軽減したい人にお勧めできる製品だ。

(多和田 新也)