やじうまPC Watch

科学技術振興機構ら、高真空中で気体と液体の放出を防ぐ「ナノスーツ」を発明

従来法(化学固定法)で作製した、死んだ試料(A、B)と、新規ナノスーツ法で生きたまま観察した試料(C、D)の電子顕微鏡像
4月16日 発売

 科学技術振興機構(JST)、浜松医科大学、東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)は16日、高真空中でも気体と液体の放出を防ぐ「ナノスーツ」を発明したと発表した。

 電子顕微鏡観察では、対象を高真空下に置く必要があるが、このような極限状態では、生物の体表を覆う細胞外物質が内部物質の放出を抑制できず、体積が収縮し、表面微細構造が大きく変形するという問題がある。

 今回、3者による研究グループは、ショウジョウバエやハチの幼虫など一部の生物が持つ細胞外物質に電子線またはプラズマを照射することで、高真空下でも生物内部に含まれる気体や液体が奪われることを防ぐナノ重合膜(ナノスーツ)が形成されることを明らかにした。さらに、細胞外物質に類似した化学物質を塗布して、ナノスーツを形成させることで、生きたままで高分解能な電子顕微鏡観察が可能になった。

 同グループでは、これにより、生物の持つ未知の生命現象や行動の解明が期待されるとしている。この研究成果は、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」のオンライン速報版で現地時間4月15日の週に公開される。

ナノスーツ処理した蚊の幼虫(ボウフラ)の電子顕微鏡画像。ナノスーツ(Tween20を塗布)で保護していない試料は、電子顕微鏡内の高真空環境に耐えられずしわくちゃになって死んでしまうが(A)、ナノスーツで覆われた生物は、形態変化を起こすことなく動く様子が観察できる(B)。30分後でも活発に運動を続ける(C)。Bの胴体部分や、Cの尾部の写真のブレは活発な動きによるもの。各スケールバーは、300μm

(若杉 紀彦)