やじうまPC Watch

VIAのCPUが気付かないうちに進化を遂げていた模様

~28nmプロセスで最大クロック2GHz、AVX2命令もサポート

最新製品の1つである「ETX-8X90-10GR」。CPUのパッケージはこれまでにない形だ

 かつてIntel x86互換プロセッサと言えば、AMDのほかにCyrixやIDTなどがあったのだが、忘れてはいけないのが台湾VIA Technologiesだろう。

 VIAはIDTからCyrixIIIの開発/設計を行なっていたCentaur Technologyを買収し、2000年に「C3」をリリース。その後2005年に改良製品である「C7」、2008年にアーキテクチャを一新した「Nano」、2011年にそのデュアルコア製品である「Nano X2」、「Nano X2-E」、「Eden X2」、およびクアッドコア製品の「QuadCore-E」、「Eden X4」を投入している。

 話をこのNanoシリーズから始めるが、NanoはIsaiahアーキテクチャをベースに設計され、65nmプロセスルールで製造されていた。Nano X2では40nmにシュリンクされ、デュアルコアをシングルダイに詰め込んだ。CuadCore-EはこのX2をベースにMCM構成で1チップに収めた製品となる。

 それからVIAは開発の中心をARMのボードに移行したため、長らくx86新製品に関してはリリースの音沙汰がなかったのだが、どうやら昨年(2015年)には28nmにシュリンクしたx86の新プロセッサを投入したようである。

 「どうやら」や「ようである」といった推測の言葉を使っているのは、もちろんVIAが公式でそのような情報を載せていないからだ。しかしネット上にある複数の情報をまとめてみたところ、新プロセッサの姿が浮かび上がってきた。

 1つ目はVIA自身がリリースしているMini-ITXマザーボード「EPIA-M920」のスペック。このマザーボードは2012年9月のリリース時には、1.2GHz駆動のQuadCore-E、または1GHz駆動のEden X2を搭載するとしていたが、現在の製品情報には2GHz駆動のQuadCore-E、1.6GHz駆動のEden X4、または1GHz駆動のEden X2を搭載するとされている。特にクアッドコア製品についてはリリース時から動作クロックが大きく向上しており、28nm版に変わっている可能性が高い。

EPIA-M920

 もう1つは、VIAと中国・上海の政府が共同出資した半導体メーカー「兆芯」の製品情報に基づくものだ。兆芯もやはりARMを主要ビジネスとしているCPUメーカーだが、デスクトップ向けの製品情報を見るとx86互換の「ZX-A」と「ZX-C」の2つのCPUが用意されている。いずれもコンパニオンのチップセットに「VX11H」を採用しており、VIAのOEM品と見て間違いないだろう。製品情報を見ると、ZX-Aは40nmプロセスとなっているが、ZX-Cは28nmプロセスに変更されており、ZX-Aとピン互換があるとされている。これもVIA自身が28nmプロセス採用の製品を投入したことを示唆している。ちなみに対応チップセットのVX11Hは、Chrome 640/645グラフィックスを内包し、これがDirectX 11をサポートしているという。加えてUSB 3.0も統合されており、システム全体で進化を遂げている。

 VIAの公式Twitterでは、2月に開催されたEmbedded World 2016でVIAのブースに訪れた1人のユーザー(Juraj Tralalak氏)のYouTube動画を紹介している。そこには、シングルコアと見られる「Eden X1」を搭載したボード「ETX-8X90-10GR」の紹介があり、動画の紹介文によると、Eden X1は開発コードネーム“CNR”のプロセッサで、1.06GHz駆動、28nmプロセス製造、しかもIntelのHaswell世代でサポートされたAVX2命令に対応すると書かれている。これがVIAの最新プロセッサであることに間違いはないだろう。

ETX-8X90-10GRはEXTDB1に載せることでMini-ITXマザーボードへと変化する。PCIスロットやISAスロットなど、レガシーデバイスが使用可能だ

 ちなみに先に挙げたマザーボード「EPIA-M920」はWindows 10向けドライバも用意されているため、Windows 10もきっちり動作する模様。加えてTralalak氏が投稿している動画を追っていくと、VIA QuadCore-E C4650という型番のCPUとGeForce GTX 960ビデオカードの組み合わせでゲームをプレイしているのが確認できる。VIAは組み込み向けに戦略を注力しているため、日本国内では秋葉原の店頭で製品を見かけることはすっかり少なくなったが、時代のニーズに沿ってしっかり進化を遂げているようだ。

 PC Watchではこの新設計のプロセッサについてVIA Technologiesへ問い合わせ中で、詳細情報が得られ次第お伝えする。

【8月21日訂正】初出時、EPIA-M920のリリースが2015年としておりましたが、正しくは2012年です。また、製品名をNano X4としておりましたが、正しくはQuadCore-Eです。お詫びして訂正します。

(劉 尭)