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【懐モバ】ハンドヘルドPCのヒット作が正常進化した「シグマリオンII」

シグマリオンII

 前回、ハンドヘルドPCのヒット作「シグマリオン」を紹介した(【懐モバ】一世を風靡したハンドヘルドPCの普及機「シグマリオン」)が、その記事の予告どおり、今回はその後継機種となった「シグマリオンII」をご紹介しよう。

 シグマリオンIIはその初代のヒットを受け、純粋に正統進化を遂げたものとなっている。ゼロハリバートンとコラボしたという特徴のある天板や、189×107×27mm(幅×奥行き×高さ)という持ち運びに適した本体サイズ、そして14.1mmという“意外にもタッチタイピングできる”キーピッチ、5万円台半ばという手頃感を継承しながら、ハードウェアとソフトウェアを進化させている。

 メインとCPUは、VR4121からVR4131となった。アーキテクチャがスカラーからスーパースカラーとなり、分岐予測の対応と命令の並列実行が可能となった。また、クロックも168MHzから200MHzに向上している。バスはISAバスのサブセットからPCIバスのサブセットとなり、製造プロセスは0.25μmから0.13μmへと大幅に微細化された。

 ちなみに、シグマリオンに搭載されるVR4131は本来最大で250MHzで駆動し、Dhrystone2.1測定で425MIPSの性能を誇っている。しかし実際に搭載されているVR4131は消費電力を抑えるためか、200MHz動作となっている。動作させてみても、確かにシグマリオンから性能向上したと体感できる。

 余談だが、同じExcelだけ起動している環境で、↓キーを押し続けてスクロールさせてみたところ、シグマリオンIIで200行スクロールしているあいだ、シグマリオンでは168行スクロールする。まさにクロック差どおりの結果が出るのである。

 外観は一見大きく変わっていないように見えるのだが、じつは細かいところで変わっている。本体色は光沢のあるシルバーから、若干黄色みがかったサテンシルバーとなった。従来はCFカードスロットのところに若干の膨らみがあったのだが、これがフルフラットとなった。また、ROM交換用のカバーも廃止された。

 バッテリは7.2V/1,500mAhから7.4V/1,800mAhとなり、物理的な互換性がなくなっている。前面にはFOMA接続用(実質はUSB)の端子が追加された。分解してみないとわからない点だが、スピーカーや液晶のグランドも、従来のケーブル接続から、単純なバネ接続に変わっている。

 16MBの内蔵フラッシュメモリが用意されたのも、IIの進化点である。しかし、標準の状態でユーザーがフルにこの容量を使えるわけではない。このなかには、独自のエディタソフト「MPエディタ」やメーラー「MPメール」、ランチャー「カスタムメニュー」といった一部独自のアプリケーションや、日本語入力システム「ATOK Pocket」のカスタマイズデータが含まれており、使える容量は実質4MBほどだ。

 もちろん、これらを使わないつもりでいるならば、すべて削除してかまわないのだが、筆者のように本体だけ入手した場合、これらの内容をバックアップもせずにすべて削除してしまうと、二度と戻らなくなってしまうので注意が必要である。

 ディスプレイは65,536色表示対応のSTN液晶から、同HPA液晶に変更された。HPAとは「ハイパフォーマンスアドレッシング」の略で、単純マトリックス液晶を改良して、コントラストと応答性を高めたものとされている。シグマリオンIIだけ使っている場合あまり気づかないのだが、初代と併用してみると確かに残像が少なくなっていることが分かる。とは言え、視野角は相変わらず狭く、動画再生に耐えうるレベルのものではないのも確かではある。

 ハードウェアでこれだけ大きく変更されているのにもかかわらず、変わらなかったのはキーボードで、これはシグマリオン初代とIIで換装できる。筆者が同時に入手した初代とIIでは、IIの方が黄ばんでいて見栄えが悪かったため、高性能なIIに初代のキーボードを取り付けてみたのだ。しかしIIの方が先にバッテリの寿命が近く、長くバッテリ駆動できず、結果から言えばこの換装は痛し痒しであった。

 本機の基板はキーボード面に固定されている関係上、基板のサイズやネジ穴の位置など変わっておらず流用可能である。ただし先述のとおりバッテリの電圧が異なるため、バッテリの溝に合わせる底面が異なっている。加えて、先述のとおりスピーカーの接続法や赤外線端子の位置も変わっており、キーボード面以外の換装は難しそうだ。

 OSはWindows CE 3.0をベースとした「Handheld PC 2000」プラットフォームが採用されている。WebブラウザはPC向けの「Internet Explorer 4.0」とほぼ同等の機能を備え表現力が増したほか、Windows Media Playerのプリインストールで、MP3ファイルの再生がサポートされ、当時流行した単機能のMP3プレーヤーの代わりにもなった。一方でオフィススイートのPocket Word/Excel/PowerPoint/Accessは、アイコンこそ変わったものの、バージョンは3.01と従来のまま据え置かれている。

 初代の利点はそのまま引き継がれ、ブラッシュアップされたが、弱点も引き継がれることとなった。それが液晶部のヒンジだ。液晶ヒンジというと一般的に蝶番(ちょうつがい)構造を思い出させるのだが、シグマリオンのヒンジの液晶側は、回転する六角ボルトを、液晶側のカバーの六角形の囲いでそのまま囲むという構造になっている。

 問題は、この囲いの強度が不足しているゆえ、度重なる液晶の開閉で割れてしまい、液晶を固定できなくなってしまう点だ。このため、現在中古で取引されているシグマリオン/シグマリオンIIの多くは、液晶が角度を固定できないジャンク品だ。

 じつは筆者も以前、社内の廃品回収時にヒンジが壊れたシグマリオンを拾ったことがあり、修理方法をネットで検索したことがある。そのやり方とは、すべてをいったん分解し、ヒンジ部の囲いをパテや樹脂など強化するというものだ。

 このヒンジ部、筐体が大幅に変更された「シグマリオンIII」では改善されているのだが、シグマリオンIIIはOSがWindows CE .NET Ver.4.1となったため、WordやExcelを搭載しておらず、Microsoftが定義するハンドヘルドPCとは言えない。初代から進化した時点で改善していれば、中古市場でジャンクとして出されることなく、ハンドヘルドPC銘機としての顔に泥を塗る結果にならなかったことだろう。

 幸い今回入手したシグマリオンは、ヒンジのトルクがさほど強くなく、それが16年経った今もなおヒンジ受けが割れずに済んでいる原因かもしれない。

新たにFOMA接続用端子が追加された。実質USB接続だ
左側面のインターフェイスは従来どおり
右側面にCFカードスロットとストラップホール
ゼロハリバートンとコラボした特徴的な天板
初代(右)から若干色合いが変わり、黄色味がかった「サテンシルバー」となった。初代に慣れるとむしろ日焼けした風合いに見える
底面のデザインも変更されている
受け側が弱いヒンジ部(汚れがそのままで恐縮)

 基板のサイズは初代とほぼ同一だが、実装部品は当然異なる。しかしその大半は、はんだ付けされた銅板で覆われており、非破壊での分析は困難だ。

 露出されてそのまま見える「VRC4173」は、VR4122(本機ではVR4131)用のコンパニオンチップセットで、PCIバスで接続。液晶ドライバやオーディオ、タッチ機能、96キーのキーボードコントローラ、USBコントローラ、PCカードコントローラを内蔵する。0.35μmプロセスの3層アルミ配線で、1,570万トランジスタを集積している。しかし本機ではVRC4173の液晶ドライバを使わず、MediaQ製の2Dアクセラレータ「MQ-200」を使用していると見られる。

 CFカードスロットの裏側の銅板の下には、NECの「Orca」シリーズが隠れている。これに関して資料が見当たらないが、携帯電話やPHSとの接続インターフェイスとして使われている可能性はある。反対側の銅板の下には、ちょっと覗いた感じだと、心臓部のVR4131と、三菱製のSDRAMが隠れていると思われる。

 一方、不揮発性メモリと、ウリのフラッシュメモリはドーターボードの形式で実装されている。前者はNEC製の「μPD23C128040L」で、これは初代と同じ。後者は東芝製の「TV58128FT」で、書き換え可能なNAND EEPROMだ。

 この時代の国産デバイスの主要半導体は、ほぼ日本製で固められており、今のPCやスマートフォンでは考えられないことだ。子供の頃NECの社員になることを夢見た筆者にとって、願わくばいつしか再来してほしいものである。

基板の裏側
基板の表側
VRC4173はVR4122用のコンパニオンチップセットとして開発された
MediaQ製の2Dアクセラレータ「MQ-200」。初代から若干刻印が変わった。MediaQはこのあとNVIDIAに買収される
上から2番めの写真で言う左の銅板の下はNECのOrcaシリーズのチップが見える
μPD23C128040Lは不揮発性メモリ
ドーターボードの裏側に東芝製のNAND EEPROM「TV58128FT」を備える
旭化成のオーディオコーデック「AK4543VQ」
MAXIM製のRS-232Cトランシーバー「MAX3243CAI」