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東大をあきらめた“東ロボくん”の偏差値が急上昇

~東大模試数学で偏差値44.3から76.2に

数学問題を解く手順。言語理解部、数式の変形によるソルバ部が今年(2016年)度機能拡張した部分

 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)は14日、人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」(東ロボ)において、東京大学第2次学力試験に向けた論述式模試の「2016年度 第1回東大入試プレ」および、マークシート式大学入試センター試験模試の「2016年度進研模試 総合学力マーク模試・6月」に挑戦し、昨年(2015年)を大幅に上回る成績を上げたと発表した。

 東ロボは数学チームと物理チームに分かれており、数学はNII、富士通研究所、名古屋大学らが担当。物理は富士通研究所、サイバネット、東京大学らがそれぞれ開発を担当している。なお、東ロボは今年(2016年)の11月に現在の技術では東大合格の水準に達することが難しいとの判断から、進路変更を決定していた。

 数学についてはこれまで解けなかった三角関数の問題に対し、限量記号消去を適用できる形に変換して解く技術を開発。また、言語処理部分では数式解析部と文間関係解析部の開発、文法と辞書の拡充、構文解析技術の改良などを図り、自動で解ける問題の範囲を広げた。

 これにより、代々木ゼミナールの論述式模試「東大入試プレ」において、問題文を入力後、問題文の解釈から、自動求解、解答の作成までをAIで完全に自動で行ない、6問中4問を完答した結果、偏差値76.2(得点80点=120点満点)を獲得。昨年度は駿台予備学校の論述式模試を受験し、数学は偏差値44.3(20点)だった。

 一方の物理は、言語処理が生成可能と想定される内部形式から状況を表す条件式を構築し、限量記号消去法で解いてシミュレーションの初期条件を生成する技術を開発。さらに、つりあいなどシミュレータに扱いづらい問題を画像の情報も活用して解けるようにした。

 物理の試験は昨年と同じくセンター試験模試の「進研模試 総合学力マーク模試」に挑戦。シミュレーション設定の一部で人が介入したが、現時点の自然言語処理技術と画像処理技術を用いれば生成可能と想定される内部形式から、AIによる自動求解の結果、偏差値59.0(62点=100点満点)を達成。昨年比で偏差値は12.5ポイント、得点が20点向上した。

 今後は、構文解析処理や文間関係解析処理といった個々の言語処理ステップのさらなる高精度化や、言語処理と数式処理の中間段階での処理手順の工夫、言語処理と数式処理のさらなる融合で“考えながら読む”技術の研究開発を進め、より多様な問題に解答する技術開発を目指すとしている。

 東ロボのプロジェクトは「AIが人間に取って代わる可能性のある分野は何か」といった問題を考える際の指標となり得るAIの進化の客観的なベンチマークを指し示すことを目的としており、2011年4月にスタート。2013年から毎年大学入試の模試に挑戦している。

物理問題を解く手順。青、赤で囲まれた部分がそれぞれ2015年度、2016年度の模試において自動で動作した範囲