やじうまPC Watch
【懐パーツ】画質と価格に注力したロングセラー「Matrox Millennium G550」
~ついでに世界初のPCI Express x1ビデオカードも紹介
2016年11月9日 06:00
久しぶりにMatroxのビデオカードを紹介したい。2001年に発表・投入されたバリューセグメントのMatrox製ビデオカード「Millennium G550」である。
Millennium G550は2001年6月に発表されたビデオカードである。Millennium G450の後継にあたり、ハードウェアT&Lエンジンを内蔵することで3D性能を強化した。とは言え、このハードウェアT&Lエンジンは通常のアプリから利用できず、「HeadCastingエンジン」と呼ばれる独自エンジンの中に内包し、独自アプリからでしかアクセスできなかった。
もちろんこれは当時の戦略に基づいている。当時の同社は「PC市場全体の80%以上にとって3D機能は意味がない」と言い、だからこそG550では3D機能の対応をバッサリ切り捨て、マルチディスプレイや2D品質、そして低価格に特化した。
この戦略は半分当たり、半分外れだったと言える。“当たり”は、G550は世代交代が激しいビデオカードの市場において、異例なほどのロングセラー商品になった点。AGP版はさすがにもう手に入らないが、PCI Express版は今なお普通に購入できる(リンク先は価格コム)。“外れ”は、競争が著しいコンシューマ向けGPU業界から、完全に振るい落とされた点だ。もっとも、完全に振るい落とされたのは、もう少し後のParheliaからだが……。
さてG550だが、0.18μmプロセスルールで製造されており、AGP 4Xモードに対応する。特徴として、これまで同社が推し進めていたデュアルディスプレイ技術「DualHead」をさらに強化した点で、2つのTDMSトランスミッタを内蔵することで、1チップで2系統のDVI出力ができるようになっている。
実は当時さほど問題にならなかったが、今やこのスペックは使い物にならない。というのも、G550のデジタル出力解像度は1ディスプレイあたり1,280×1,024ドット(SXGA)止まりだからだ。ちなみにアナログ出力は、メインディスプレイは2,048×1,536ドットまで対応するが、セカンドディスプレイは1,600×1,200ドットまでと、これも制限がある。やはりG550は過去の遺産と見た方がいいだろう。
G550自体性能があまり高くないため、電源回路の実装などはシンプルであり、カードは比較的スッキリしている。ヒートシンクも小型のもので、ファンレスで駆動する。メモリはSamsung製のDDR SDRAM「K4D263238D-QC50」で、1Mワード×32bit×4バンクの128Mbit品である。G550ではこれを2枚実装することで、32MBという容量を実現している。クロックは400MHz相当なので、転送レートは1.6GB/sと言ったところだろう。
先述の通りG550は今でもPCI Express x1版が買えるが、せっかくなのでここでそれを紹介したい。「Millennium G550 PCIe」は2005年7月に発表された製品で、実は“世界初のPCI Express x1カード”だったのだ。このようなサウスブリッジに接続できるビデオカードは、オーバークロッカーの間で重宝されたりする。
ちなみに先述の通り、G550自体はデュアルDVI出力を備えているが、AGP版でデュアルDVI出力を備えたモデルはない。正確には、LFH-60→DVI×2に変換する二股分岐ケーブルを使用するモデルは存在するのだが、カード単体でデュアルDVI出力が可能になったのは、このMillennium G550 PCIeからである。いずれにしても、性能的にあまり使い物にならないのだが。
ちなみにMatrox製カードに共通して言えることだが、採用パーツや品質など、やはり他社とは一線を画している感じはある。カードの表裏からブラケットに至るまでMatroxのロゴやコピーライトが入っており、ヒートシンクのプッシュピンの色といった細部にまで手が込んでいる。パーツの実装も手堅く、手にするとその小ささとは相反してずっしりとした重さがある。画質が綺麗なビデオカードはやはり理由があるのだ。