期待の新人登場!? 2種類の新ビデオカードが登場



 先週秋葉原に2種類の新ビデオカードが登場した。1つは、MillenniumシリーズでおなじみのMatroxが送り出す最新ビデオカード「Millennium G550」。そしてもう1つは、Silicon Integrated Systems(SiS)の最新ビデオチップ「SiS315」を搭載する「3D THRILL 315 PRO」だ。

 Millennium G550は人気のMatroxの新製品、またSiS315はハードウェアT&Lエンジンを搭載しGeForce2 MX400に匹敵する3D描画能力が実現されているにもかかわらず非常に安価に発売されるということで、双方とも発売前から話題となっていた。今回はこれら2種類のビデオカードを取り上げ、それぞれどの程度のパフォーマンスを持っているのか検証してみることにしよう。

Millennium G550 APOLLO 3D
THRILL 315 PRO


●Millennium G550

Matrox G550
 Millennium G550は、Matrox G450以来となる新ビデオチップ「Matrox G550」を搭載し、いくつかの新機能が実現されている。

 Matrox G550の新機能の中で最大の特徴と言えるのが、「Head Casting Engine」という3D描画機能だろう。Head Casting Engineとは一種のハードウェアジオメトリエンジンで、DirectX 8のプログラマブルバーテックスシェーダーを拡張したもの。このHead Casting Engineを利用することで、人間の頭部のアニメーションをスムーズに描画できるようになる。

Millennium G550に付属する「Head Casting Engine」対応アプリケーション「HeadFone」。基本的にはVoIPソフトだが、声に応じて3Dキャラクターが動き、テレビ電話を利用しているかのような感覚で利用可能。ちなみに、自分の顔写真(正面と横の2枚)をメーカーに送ることで、自分そっくりのモデルが作成される
 例えば、Head Casting Engineに対応するLIPSincの「HeadFone」というソフトは、一種のテレビ電話ソフトだが、ユーザーがしゃべる言葉に合わせて頭部の3Dモデルがリアルタイムで動き、画面内で相手がしゃべっているかのような感覚で電話を楽しめるというもの。また、PowerPoint用のプラグインも用意されており、そちらを利用すれば、頭部3Dモデルを利用したプレゼンテーションが可能となる。

 また、チップ内に2系統のTMDSトランスミッタを内蔵し、2系統のDVI出力をサポートする点も特徴の1つだ。もちろん、従来同様1枚のカードでデュアルディスプレイ表示ができる「DualHead」をサポートしており、2枚のデジタルディスプレイパネルを利用したデュアルディスプレイ表示が可能となっている。

 ただ、このような変更点があるものの、Matrox G550はMatrox G450をベースに開発されていることもあり、基本的な描画能力は大きく向上していないようだ。レンダリングエンジンのパイプラインが従来の1本から2本に増えてはいるものの、Head Casting Engineは対応ソフトでしか利用できず、3D描画能力はMatrox G450よりも20%ほど高速化されているだけにとどまっている。このあたりは後ほどのベンチマークテストで検証することにしよう。

 今回入手したMillennium G550(バルク品)は、Low Profileのカードで、出力端子としてアナログRGB端子とDVI端子が用意されている。カード上にはDDR SDRAMが32MB搭載されており、ビデオチップ上にはヒートシンクのみが取り付けられている。また、DVI→アナログRGB変換コネクタとドライバやアプリケーションが収録されたCD-ROMが付属する。

 ただし、Low Profile用ブラケットや、コンポジットまたはSビデオ出力端子変換コネクタなどは付属しない。ちなみに、このモデルでは2系統のDVI端子は用意されておらず、デジタルディスプレイパネルを2台同時に接続して利用することは不可能。もし2台のデジタルディスプレイパネルを同時に接続して利用したいのであれば、2系統のDVI出力をサポートするモデルを購入する必要がある。


●SiS315

SiS315
 対するSiSの最新ビデオチップ「SiS315」は、SiSとして初めてハードウェアT&Lエンジンを搭載するビデオチップだ。当初からNVIDIAのGeForce2 MXシリーズに匹敵する3D描画能力を持つと言われていたこともあり、大いに期待されていた。

 SiS315は、SiS300の後継ビデオチップで、冒頭の通りハードウェアT&Lエンジンを搭載する点が最大の特徴と言っていいだろう。256bitの3D描画エンジンとハードウェアT&Lエンジンにより、メーカー曰く「NVIDIA GeForce2 MX400程度の3D描画能力」を発揮するとしている。フルスクリーンアンチエイリアシング(FSAA)もサポートされており、機能的にはGeForce2 MXシリーズとほとんど遜色がないと言っていいだろう。

 ただ、SiS315の動作クロックは、コアが166MHz、ビデオメモリが166MHz(DDR SDRAM利用時には実質333MHz)となっている。ビデオメモリの動作クロックはGeForce2 MXシリーズと同じだが、コアの動作クロックはGeForce2 MX200の175MHzよりも遅い。そうなるとSiS315がGeForce2 MX400程度の3D描画能力を発揮するとはやや考えにくい。しかし、ビデオメモリのバンド幅がSDR SDRAM利用時最大2.9GB/sec、DDR SDRAM利用時最大5.8GB/secとされており、GeForce2 MXシリーズよりも優れているため、総合的にはGeForce2 MXシリーズと張り合える可能性も十分にあると言えるだろう。

 また、SiS315のもう1つの特徴が、搭載製品の価格が非常に安価に設定されているという点だ。もともとSiS315は100ドル以下のローエンドビデオカードをターゲットとしているとはいえ、現在発売されているSiS315搭載製品は、今回用意したJOYTEC製の「APOLLO 3D THRILL 315 PRO」のように、サポート最大容量である128MBのビデオメモリを搭載する製品ですら1万円を下回る価格で販売されている。そのため、実際の描画能力によっては、コストパフォーマンスでGeForce2 MXシリーズを大きく凌駕する可能性も十分考えられる。

 ちなみに、SiS315は、SiS300同様Video Bridgeチップ「SiS301」を利用することで、ビデオ出力やDVI出力を実現したり、マルチディスプレイ表示も可能となる。そして、今回用意したJOYTEC製の「APOLLO 3D THRILL 315 PRO」は、標準でSiS301を搭載しており、アナログRGB端子に加えてDVI端子とSビデオ出力端子を備え、マルチディスプレイ表示をサポートするなど、機能面はかなり優れており、これだけでも十分魅力的な製品と言えるかもしれない。


●G550はG450の約2割増し、SiS315はGeForce2 MX200とMX400の中間程度

クリエイティブメディアの最新ビデオカード「3D Blaster GeForce2 MX400」
 では、Matrox G550とSiS315のパフォーマンスを、ベンチマークテストを通して検証してみよう。今回利用したベンチマークソフトは、本連載でビデオカードを取り上げるときにいつも利用しているものだ。テスト環境は下に示したとおりである。

 また、比較のために、GeForce2 MX400を搭載するクリエイティブメディアの最新ビデオカード「3D Blaster GeForce2 MX400」と、GeForce2 MX200を搭載するInnoVISIONの「TORNADO GeForce2 MX200」、Matrox G450を搭載する「Millennium G450」、そしてST Microelectronics製のビデオチップKYRO IIを搭載するギルモの「3D Prophet 4500」の4種類のビデオカードを用意して、同じテストを行なった。

 ちなみに、ビデオドライバは基本的に付属のものを利用しているが、Millennium G450と3D Prophet 4500、そしてTORNADO GeForce2 MX200に関しては、各ホームページに掲載されている最新ドライバを利用している。

【テスト環境】
CPU:PentiumIII 800EB MHz
マザーボード:ASUS CUSL2
メモリ:256MB PC133 SDRAM(CL3)
ハードディスク:IBM DTLA-305040
OS:Windows 98 Second Edition + DirectX 8.0a


●2D描画能力

 2D描画能力の測定には、Ziff-Davis,Inc.のWinBench 99 Version 1.2に含まれるBusiness Graphics WinMark 99とHigh-End Graphics WinMark99を利用した。

【WinBench99 Ver1.2】

【Business Graphics WinMark99】
1,024x768 16bpp 352
327
344
333
352
303
1,024x768 32bpp 335
311
332
276
328
243
Millennium G550
3D SHRILL 315 PRO
3D Blaster GeForce2 MX400
TORNADO GeForce2 MX200
Millennium G450
3D Prophet 4500

【High-End Graphics WinMark99】
1,024x768 16bpp 987
917
963
954
985
663
1,024x768 32bpp 962
905
952
930
961
694
Millennium G550
3D SHRILL 315 PRO
3D Blaster GeForce2 MX400
TORNADO GeForce2 MX200
Millennium G450
3D Prophet 4500

 結果は表の通りで、Matrox G550はMatrox G450同様かなり高い数値となっており、従来通り高い2D描画能力が実現されている。また、SiS315がわずかながら低い数値となっているものの、体感できるような差ではなく、全く気にする必要はないだろう。


●DirectX環境下での3D描画能力

 次に、DirectX環境下での3D描画能力だ。MadOnion.com( http://www.madonion.com/ )の「3DMark2000」および「3DMark2001」を利用し、1,024×768ドット、1,280×1,024ドット1,600×1,200ドットの16bitおよび32bitカラーモードにおける描画能力を測定した。

【3DMark2000】
1,024x768 16bpp 2,958
4,224
4,745
2,892
2,404
4,710
1,024x768 32bpp 2,150
2,136
3,366
1,754
1,792
4,576
1,280x1,024 16bpp 1,879
2,873
3,319
1,852
1,486
3,968
1,280x1,024 32bpp 1,275
2,056
2,131
 972
1,030
3,608
1,600x1,200 16bpp 1,315
2,100
2,450
1,284
1,025
3,139
1,600x1,200 32bpp  876
1,400
1,339
 606
 670
2,762
【3DMark2001】
1,024x768 16bpp 1,301
2,072
2,725
1,907
1,267
1,564
1,024x768 32bpp 1,119
1,714
2,059
1,081
1,029
1,560
1,280x1,024 16bpp 1,009
1,418
2,132
1,295
 924
1,519
1,280x1,024 32bpp  743
1,073
1,018
 567
 670
1,504
1,600x1,200 16bpp  780
1,038
1,650
 911
 692
1,442
1,600x1,200 32bpp  524
 730
N/A
N/A
 432
1,407
Millennium G550
3D SHRILL 315 PRO
3D Blaster GeForce2 MX400
TORNADO GeForce2 MX200
Millennium G450
3D Prophet 4500

 まず、3DMark2000の結果を見ると、SiS315はGeForce2 MX400には劣るものの、GeForce2 MX200をかなり上回るパフォーマンスが発揮されている。また、高解像度の32bitカラーモードではGeForce2 MX400を上回る部分も見られる。これは、ビデオメモリが128MB搭載されていることによる結果と考えていいだろう。かなり健闘していることは間違いない。

 これに対しMatrox G550だが、こちらはGeForce2 MX200の結果を若干上回る程度であった。従来モデルのMatrox G450がベースになっているとはいえ、約1~2割ほどのパフォーマンスアップが実現されている。ただ、SiS315には大きく劣っており、満足のいくパフォーマンスとまでは言えないだろう。

 次に3DMark2001の結果だ。こちらもおおむね3DMark2000の結果とほぼ同じ傾向になっている。SiS315の結果は、16bitカラーモードではGeForce2 MX200をやや上回る程度だが、32bitカラーモードではGeForce2 MX400に匹敵するパフォーマンスが発揮されている。これもやはり、ビデオメモリが128MB搭載されているからだろう。

 またMatrox G550だが、こちらは16bitカラーモードではGeForce2 MX200に劣っているものの、32bitカラーモードではGeForce2 MX200を上回るパフォーマンスとなっている。GeForce2 MX200はビデオメモリのバス幅が64bitとなっているためメモリのバンド幅が狭く、高解像度や32bitカラーモードでパフォーマンスがやや悪くなる傾向が顕著に現われる。Matrox G550のメモリバス幅も64bitだが、DDR SDRAMを搭載しているためメモリバンド幅が広くなり、32bitカラーモードではMatrox G550のほうがパフォーマンスが上回る結果となったのだろう。とはいっても、やはりSiS315の結果には大きく劣っており、やはり今1つという印象を受ける。


●OpenGL対応3Dゲームにおける3D描画能力

 最後に、OpenGL対応3Dゲームソフトであるid Software( http://www.idsoftware.com/ )Quake III Arenaを利用して、OpenGL環境での3D描画能力を測定した。

【QuakeIII】
800x600 16bpp 065.6
086.0
111.5
077.3
051.5
103.2
800x600 32bpp 050.4
065.6
085.9
045.1
038.8
102.8
1,024x768 16bpp 044.4
061.6
085.5
049.7
033.1
092.3
1,024x768 32bpp 030.9
042.4
055.0
027.6
024.0
089.8
1,280x1,024 16bpp 027.5
038.8
053.7
029.8
020.5
065.1
1,280x1,024 32bpp 018.3
024.0
032.3
014.6
014.0
059.7
Millennium G550
3D SHRILL 315 PRO
3D Blaster GeForce2 MX400
TORNADO GeForce2 MX200
Millennium G450
3D Prophet 4500

 こちらもほぼDirectX環境での結果とほぼ同じ傾向だった。SiS315がGeForce2 MX400とGeForce2 MX200の中間程度のパフォーマンス、またMatrox G550はGeForce2 MX200同等程度のパフォーマンスだった。


●SiS315は健闘が光るが、Matrox G550はやや期待はずれ

 ベンチマークテストの結果を見ると、SiS315はGeForce2 MX400に匹敵するほどではないが、GeForce2 MX200を大きく上回る3D描画能力を誇っており、期待通りのパフォーマンスが発揮されていると言っていいだろう。また、パフォーマンス面だけでなく、マルチディスプレイ表示をサポートしたり、DVI端子が用意され、しかもビデオメモリが128MB搭載されているにもかかわらず、1万円を切る価格で販売されている点は非常に魅力となるはずだ。

 対抗モデルであるGeForce2 MX200やGeForce2 MX400搭載カードでマルチディスプレイ表示をサポートしたりDVI端子が用意される製品が1万円を切る価格で販売されている例はあまりない。しかもSiS315搭載カードの1万円程度という価格は先週の秋葉原でのもので、これが初物価格であると考えると、今後さらに販売価格が下落すると予想できる。そうなると、SiS315のコストパフォーマンスはより高くなり、より魅力が増すはずだ。

 対するMatrox G550搭載のMillennium G550だが、2系統のDVI出力を利用できる(対応モデルである必要がある)という点や、従来より定評のあるDualHeadによる高機能なマルチディスプレイ環境を構築できるという点を除き、これといった魅力が見あたらない。従来モデルのMatrox G450と比較して約1~2割程度のパフォーマンス向上が実現され、高い2D描画能力や定評のある表示品質を考慮に入れたとしても、SiS315搭載カードの2倍近い販売価格では、なかなか魅力が伝わってこない。また、3D描画機能の「Head Casting Engine」についても、一般的な3D描画ソフトでは全く効果が発揮されず、やはり魅力とは言い難い。

 それなりの3D描画能力と機能を持つ製品をとにかく安価に購入したいというユーザーにはSiS315搭載カードを自信を持っておすすめできる。また、Millennium G550は3D描画能力を必要としないユーザーや、2系統のDVI出力、Dual Headによるデュアルディスプレイ表示機能などに魅力を感じるユーザーならば購入する価値はあるだろう。Matrox G400以降2年以上完全な新モデルと呼べる製品を投入していないMatrox。以前のMatroxの勢いを考えると寂しい限りだが、個人的にはMatroxの今後の巻き返しを大いに期待したい。

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(2001年8月31日)

[Reported by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]


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