イベントレポート
RealSense搭載一体型PCや新方式ペンを採用したタブレットPCが参考出品
~CEATEC JAPAN 2014レポート
(2014/10/8 06:00)
IT・エレクトロニクス関連の総合展示会「CEATEC JAPAN 2014」が、10月7日~11日の5日間、千葉・幕張メッセで開催中である。CEATEC JAPAN 2014では、PCやスマートフォンから自動車、パーツまでさまざまな展示が行なわれているが、ここでは、PC Watch読者の関心が高いと思われる話題を中心にレポートする。
富士通が手のひら静脈認証機能搭載PCやRealSense搭載一体型PCを展示
富士通は、手のひら静脈認証機能を搭載した法人向けノートPC「LIFEBOOK U904/H」と法人向けタブレットPC「ARROWS Tab Q704/PV」を展示していた。手のひら静脈認証は、センサーの上部に手のひらをかざすだけで、非接触で本人認証が可能であり、指紋認証と比べても、認識精度や速度などで優位性があるという。どちらもすでに出荷が開始されている製品で、ARROWS Tab Q704/PVは、ふくおかフィナンシャルグループが2,000台導入し、渉外活動用端末として活用している。
また、インテルが開発を進めている、NUI(Natural User Interface)技術である「RealSense」を搭載した一体型PCの試作機が参考出展されていた。液晶上部にRealSenseカメラモジュールが搭載されており、顔の輪郭抽出や深度センサーによるジェスチャー操作、3Dスキャンなどが可能だ。富士通のRealSense搭載製品の発売時期は未定とのことだが、早ければ2014年末、遅くとも2015年春頃には、各社からRealSense搭載製品が登場すると見られている。RealSenseは3Dスキャナとしても利用できるため、3Dプリンタとの連携も考えられる。富士通のデモでも、隣にパーソナル3Dプリンタ「Cube」が置かれていた。
東芝が新方式のペンを採用したタブレットPCを参考出展
東芝は、新方式のペンを採用したWindows 8.1搭載タブレットPCを2機種参考出展していた。このペンは、ワコムと共同開発した「アクティブ静電結合方式」を採用しており、電磁誘導方式に匹敵する滑らかな書き心地を実現していることが売り。
2,048段階という、高精度な筆圧検知に対応しており、ペン先も細いので、表現力が豊かだ。タブレットPCは、8型と10.1型の2モデルが展示されており、ペンに合わせて開発された本格ノートアプリ「TruNote」も搭載されている。あくまで参考出展とのことで、製品化などは未定とのことだったが、製品としての完成度は高く、すぐにでも製品化できそうであった。
また、6日に発表されたコミュニケーションアンドロイド「地平アイこ」の展示とデモも行なわれていた。地平アイこは、手話のできるロボットを作りたいという社員の想いから生まれたアンドロイドで、世界最高レベルの人間らしい表情と静かで滑らかな動きを実現している。高圧空気で動作するエアシリンダーで動作しており、全部で43カ所の可動部を持つ。受付窓口や展示会の案内係用ロボットとして、2015年度の実用化を目指しているとのことだ。
次世代ディスプレイ「MEMS-IGZO」搭載タブレットのデモを行なったシャープ
シャープは、6日に発表された次世代ディスプレイ「MEMS-IGZO」搭載タブレットのデモを行なっていた。
MEMS-IGZOは、シャープとQualcommの子会社であるPixtronixが共同で開発した次世代ディスプレイであり、液晶とは全く異なる原理で表示を行なう(そもそも液晶が使われていないので、液晶ではない)。MEMS-IGZOでは、バックライトの光をRGBの順で繰り返し点灯させ、画素ごとに用意されたMEMSシャッターがバックライト点灯のタイミングに合わせて機械的に開閉する。開閉時間の長さでRGBの階調を調整し、フルカラー表示を行なうというものだ。
液晶とは異なり、偏光板やカラーフィルタを必要としないため、バックライトの光を最大限に活かすことができ、同じ輝度なら液晶に比べて半分程度の消費電力で済むことが利点だ。また、色域も広く、NTSC比120%の色域を実現できるとのことだ。
シャープは2015年上半期にMEMS-IGZO搭載7型タブレットを発売する予定だが、今後は、大型化なども視野に入れているようだ。ただし、液晶を置き換えていくわけではなく、従来の液晶とは棲み分けていくことになるという。現時点では、製造コストも液晶に比べると高いようで、量産によるコストダウンを期待したい。
TransferJet関連製品やソリューションのデモ
TransferJetブースでは、関連製品やTransferJetを利用したソリューションのデモが行なわれていた。TransferJetは、もともと2008年1月に開催されたInternational CESで、ソニーが参考展示した技術であり、3cm以内の至近距離で通信する近接無線転送技術だ。機器同士をかざしたり、触れさせることでデータ転送を行なう。2008年7月にはソニーや東芝、セイコーエプソン、オリンパスなどが中心となって、TransferJetの相互接続仕様の確立を目的としたコンソーシアムが設立された。TransferJetは、広帯域を使うことで、560Mbpsという高速な転送を実現していることが利点であり、ソニーや東芝などから対応製品が発売されている。
CEATEC JAPAN 2014のTransferJetブースでは、東芝が発売しているTransferJetアダプタ(USB対応とMicro USB対応の2製品がある)を利用して、開発中のTransferJet対応SDカードを挿入したデジタルカメラで撮影した写真をノートPCに転送するデモや、デジタル放送に対応した次世代コンテンツ保護技術「SeeQVault」をTransferJetの物理層に乗せた、「SeeQVault over TransferJet」のデモが行なわれていた。また、TransferJetを利用してアイドルの動画などを配信する情報ステーションや、TransferJet内蔵Windows 8.1タブレットPCのモックアップも参考出展されていた。
さらに、次世代規格についてもプレゼンテーションが行なわれた。現行規格は中心周波数が4.48GHzで転送速度は560Mbpsだが、中心周波数60GHzで転送速度10Gbps以上を実現する次世代規格の策定が進んでいるほか、その中間的な仕様として、中心周波数は同じ4.48GHzのまま、変調方式の改良などによって2Gbpsを実現する規格も策定中とのことだ。60GHzのTransferJetは、2016年から2017年に規格が策定される見込みで、改札でのSuicaなどをタッチするのと同時に大容量コンテンツをダウンロードしたり、4K動画ファイルの転送といった用途が考えられるとしている。
村田製作所のチアリーダーロボットやスケルトニクス、卓球ロボットなどのデモも
CEATEC JAPAN名物ともいえる村田製作所のロボットデモだが、今年は9月25日に発表されたばかりの10体の玉乗りロボットによる「村田製作所チアリーダー部」が登場し、注目を集めていた。
村田製作所チアリーダー部は、ボールの上でバランスを保ちながら全方向に移動できるロボットであり、身長は35cm。10体によるフォーメーションダンスを行なえることが特徴で、ステージ上に設置されている発信器から出される超音波と赤外線を、ロボットに搭載したセンサーで受信することで、ステージ上での位置をリアルタイムに把握する。筆者が訪問したのが初日となる7日だったためか、ロボット同士がぶつかって止まってしまうというアクシデントもあったものの、一糸乱れぬ動きに歓声が上がっていた。
また、フレッツ光フレッツネクストの「ギガ速い」CMでもお馴染みの、動作拡大型スーツ「スケルトニクス」も2機展示されており、人だかりができていた。
スケルトニクスは、基本的に動力を持たず(指の部分だけモーターで動かしている)、人間の動作をリンク機構によって拡大して動くロボットスーツである。慣れればかなり自由で素早い動きが可能で、自分が大きなロボットになったかのような感覚で動ける。
今回の展示では、安全のため歩行は許されてなかったが、上半身は動かすことができる。筆者も乗せてもらったが、とても楽しい経験であった。動作拡大ということで、力がかなりいるのではないかと思ったのだが、腕の動きに関しては思ったよりも力はいらなかった。代表取締役の白久レイエス樹氏によれば、より外装が増えているものなど、スケルトニクスのバリエーションは多岐にわたっており、海外でも多くのイベントで使われたという。
オムロンのブースでは、卓球ロボットとの対決が行なわれていた。こちらも時々ロボットがミスすることもあったが、ある程度速い打球にもちゃんと対応しているのは見事であった。