イベントレポート
Symposium on VLSI Technologyが10日開幕
~紙を基板にしたメモリや心電計内蔵Tシャツの発表も
(2014/6/11 06:00)
- 2014 Symposium on VLSI Technology
- 会期:6月10~12日(現地時間)
- 会場:米国ハワイ州ホノルル市 Hilton Hawaiian Village
- 2014 Symposium on VLSI Circuits
- 会期:6月11~13日(現地時間)
- 会場:米国ハワイ州ホノルル市 Hilton Hawaiian Village
半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する研究成果を発表する国際会議「Symposium on VLSI Technology」(VLSI Technology)と、半導体の回路技術に関する最新の研究成果を発表する国際会議「Symposium on VLSI Circuits」(VLSI Circuits)が、米国ハワイ州ホノルル市で開催される。
VLSI TechnologyとVLSI Circuitsは半導体の研究開発コミュニティでは良く知られており、一括りにして「VLSI XXXX」(XXXXは西暦)と呼ぶことが多い。日本では「ブイエル」と略して呼ぶこともある。両者の会場は同じで、開催都市は西暦の偶数年が米国のハワイ州ホノルル市、西暦の奇数年が日本の京都府京都市となっている。今年(2014年)の「VLSI 2014」は、ハワイ開催の年である。
次世代不揮発性メモリ「STT-MRAM」の研究成果が続出
今年のVLSIシンポジウムを概観すると、次世代不揮発性磁気メモリ、特にスピン注入メモリ(STT-MRAM)に関する発表がとにかく多い。プログラムを眺めていくと、10日(火曜日)に3件、11日(水曜日)に2件、12日(木曜日)に1件の講演が予定されている。
最近の傾向としては、キャッシュにSTT-MRAMを応用しようという試みが活発である。しばらく前には、STT-MRAMの研究開発は大容量化によってDRAMを置き換えようとする研究が多かった。しかし現実には大容量化がかなり困難なことから、待機時消費電流の高いSRAMキャッシュを不揮発性(すなわち待機時消費電流がゼロ)のSTT-MRAMに置き換えようとする動きが強まっているように見える。
キャッシュを意識したSTT-MRAMを発表予定なのは、東芝(講演番号C12.1、ここで「C」はVLSI Circuitsを意味する)と、Qualcomm(講演番号T5.2、ここで「T」はVLSI Technologyを意味する)である。東芝はラストレベルキャッシュ(LLC)の候補技術としてSRAM、DRAM、STT-MRAMの3種類を選び、CPUの消費電力当たりの性能を比較した。Qualcommは、プロセッサの内蔵メモリにSTT-MRAMを使った待機電力の少ないモバイルSoC(System on a Chip)を開発している。
TDK(講演番号T5.5)は、完全に動作する8Mbit STT-MRAMの試作結果を発表する。これもロジック半導体への埋め込みを想定したSTT-MRAM技術である。Samsung Electronics(講演番号T7.3)とInfineon Technologies(講演番号T7.4)はそれぞれ、STT-MRAMの熱安定性を議論する。Samsungは15nm以下の微細化を想定した研究の成果を、Infineonは8Mbitチップを試作して評価した結果を示す予定である。
DRAMはダイを積み重ねて高速化と大容量化を並進
DRAMでは、シリコンダイを積み重ねてシリコン貫通ビア(TSV)技術によって相互接続し、高速化と大容量化の両方を達成しようとする研究の発表が少なくない。SK Hynix(講演番号C4.2)は、TSV技術によってDRAMシリコンダイを積層した容量8Gbit、速度128GB/secのDRAMモジュール「HBM(High Bandwidth Memory)」を発表する。Samsung Electronics(講演番号C4.1)は、TSV技術による積層を前提としたDDR4タイプSDRAMの高速性と低コストを維持する技術を報告する。また東京工業大学などの研究グループ(講演番号T3.3)は、300mmウェハのシリコンダイをわずか4ミクロンに薄くする技術を報告する。40nm技術の2Gbit DRAMに適用した。
DRAM技術ではこれらのほか、Intel(講演番号C14.5)がプロセッサ混載用埋め込みDRAM技術を発表する。2013年のVLSIシンポジウムで発表したHaswellプロセッサ向けDRAM技術「eDRAM」の第2世代に相当する。