イベントレポート
HP、企業戦略をクラウドサービスに転換
(2013/6/27 15:07)
米Hewlett-Packard(HP)は6月24日~25日にかけて、中国・北京でプライベートイベント「HP World Tour」を開催した。基調講演や報道関係者向けの個別インタビュー、顧客向けの製品展示など、多数のプログラムが用意され、会場には300人を超える報道関係者と、2,000人を超える顧客が集まった。
イベントの中で繰り返し強調されたのが、HPの企業顧客向けのクラウド移行サービスとサポートであった。
この背景には、4月から6月にかけて個人/企業向けPC、タブレット端末、サーバーを米国ですでに発表したことももちろん関係しているが、HPはそういったデバイスを中心とした戦略から、サービスとサポートを中心とした戦略方針に転換することを感じさせられる内容であった。
同社は2006年から「The Computer is Personal Again」と題したキャンペーンを展開し、2011年半ばまでも独自の「webOS」を展開するなど、ハードウェアからソフトウェアまでをデバイスに統合し、デバイスを中心とするAppleのような垂直統合型ビジネスを目指していた。
しかし2011年8月に、PC部門を分離させることを検討しているというニュースをリリース。その3カ月後に結果として、プリンタ事業部と統合させることで部門を留めることとなったが、今回のイベントで、そのPC/プリンタ事業ではなく、企業向けのクラウドサービス移行支援が戦略の中心であることが明らかにされた。
ITは「第4の波」に入りつつある
2日目の基調講演で、同社のExecutive Vice Presidentを務めるBill Veghte氏は、「ITの業界はこの数年間で何度も変革している。そして現在、新たな変革をまさに目の当たりにしている。1980年代のメインフレームから、1990年台のクライアントとサーバー、2000年台のインターネットへの推移し、2010年代の今はクラウド、ソーシャルメディア、ビッグデータ、そしてモバイルへ、第4の波が押し寄せようとしている」と語った。
この新しい波においては、中国の新興企業や、財力に富み、過去から未来への転換を図っていこうとする企業などが有力だ。そこでHPはこの波においてのメインのプレイヤーとしてではなく、新しい波にこれから乗ろうとしていく新しいプレイヤーをサポートしていく役として立ち回っていく。同社のCEOを務めるMeg Whitman氏は、「我々はスーパーマンのように、皆様を助ける役でありたい。でも実際のヒーローは顧客の皆様である」と説明した。
HPが今回プッシュするのは、企業の“既存サービス”を“クラウド”上に移行するための手助けをするサービス。企業の既存サービスを分析し、クラウドに移行した方が効果が高いものと、そうでないものを分離し、移行に適する場合、その手助けをする。
HPが提供するクラウドサービスはオープンプラットフォームであり、既存サービスを移行させることで、ハードウェアベンダーやOS、独自ソフトウェアの構造に縛られないサービスの展開が可能になる。またプライベート/パプリック/ハイブリッドクラウドのいずれも実現でき、また管理をHPに委ねることも、顧客が自身で管理することも選択可能であるとする。
もちろん、このサービスを実現するための新しいハードウェアも欠かせない。例えば管理の煩雑性や電力消費を含めた運用コストを低減するためには、高密度ブレードサーバー「Moonshot」のようなものが必要だし、高速に増え続けるビッグデータに対応するためにはオールフラッシュストレージ「HP 3PAR StoreServ 7450」のようなものが必要だ。また、「OpenStack」がベースのクラウド向けOS「HP Cloud OS」も新製品として紹介された。これらの製品では統一された管理UIや、優れたスケーラビリティ、オープン性などを有しており、顧客の規模に応じて自由に選択可能である。
しかしどの製品が自らにとって最適なのか、分からないケースもあるし、ハードウェア/ソフトウェア管理を煩雑だと思う顧客もいる。HPは顧客の中に入り、コンサルティングやサポートをきめ細かく行なうことで、その問題を解決することを手助けするわけである。
実はこれまでもHPはこうしたコンサルティングサービスを展開していたが、それを正式にサービスとして謳っていなかった。今回、ハードウェア、ソフトウェア、そしてサービスを唯一すべて提供できるベンダーであることをアピールし、これをパッケージ化して提供を拡大していくことが、今回のイベントの肝であった。2日間のイベント全体を見渡しても、PCとプリンタのセッションは3つしかなく、HPの企業方針転換を感じさせられるものであった。