イベントレポート

DDR3とDDR4を同じソケットで利用できる「UniDIMM」構想

~個人向けPCのDDR4対応はSkylake世代に

DDR/DDR2/DDR3/DDR4の違い。DDR4は最大で3,200MHzまでに対応可能で、駆動電圧が1.2Vになっている

 Intelが開催したIDFの2日目となる9月10日(現地時間)には、DDR4メモリに関する技術説明会「DDR4:The Right Memory for Your Next Server and High-End Desktop System」が行なわれた。DDR4メモリは、8月の末に発表されたCore i7-5970X(別記事参照)、IDFの直前となる9月8日発表されたXeon E5-2600 v3(別記事参照)で採用されており、今後現行のDDR3を置き換えとなる。

 現時点では、DDR3とDDR4はスロット形状が異なるため相互利用できないが、説明の中で、DDR3、DDR4、そしてLPDDR3を利用できるようにする新しいDIMMソケット「UniDIMM」の構想を明らかにした。

Skylake世代では上位SKUがDDR4に対応、メインストリーム向けはDDR3対応

 DDR4メモリは、DDR3メモリの後継としてJEDEC(メモリの標準化団体)により策定された規格で、駆動電圧をDDR3/DDR3Lの1.5V/1.35Vから1.2Vに下げているため、DDR3Lとの比較で消費電力を最大35%削減できる。また、最大で3,200MHzまで対応可能なため、帯域幅を容易に上げられる(ただし現時点では2,133MHzが主流)。

DDR4はデータ転送速度が上がっているが、消費電力は減っている

 DDR4を最初にサポートした製品は、8月末に発売されたCore i7-5960X(Haswell-E)などの超ハイエンドデスクトップ向けCPUとなった。9月8日(現地時間)に発表された2ソケットサーバー向けのXeon E5-2600 v3(Haswell-EP)が2番目となる。ただし、実際には両製品は同じダイを利用しており、Haswell-EPの8コア用ダイをハイエンドデスクトップ向けに転用したのがHaswell-Eだ。

 Haswell-EPはサーバー用になるので、RDIMM(Registered DIMM)とLRDIMM(Load-Reduced DIMM)といったサーバー用メモリモジュールに対応しており、より大容量を実現できる。一方Haswell-EはUDIMM(Unbuffered DIMM)と呼ばれる通常のDIMMのみに対応している。

SK Hynix社のDDR4メモリモジュール
Samsung Electronicsの64GB DDR4 RDIMM(サーバー用)
MicronのDDR4メモリモジュール

 現時点ではこの2種類のコアのみがDDR4をサポートしているが、今後はどうなるのだろうか。Intel メモリイネーブリング&Appsエンジニアリング担当ディレクター ジェフ・ファインドレイ氏は「一般個人向けPCではSkylake世代でDDR4をサポートする。同時にメインストリーム向けの製品ではDDR3もサポートする」と述べ、同社が2015年の後半に計画している次世代プロセッサ「Skylake」(スカイレイク、開発コードネーム)では、DDR3とDDR4の両方をサポートし、上位製品でDDR4に対応する計画を明らかにした。

 ノートPC向けも同様で、SkylakeにおけるHプロセッサではDDR4とLPDDR3を、UプロセッサではDDR4、DDR3、LPDDR3をサポートし、2-in-1/タブレット向けとなるYプロセッサ(つまりはCore MのSkylake版)はLPDDR3のみになる。

 エントリー向けSoCに関してはDDR3のみ、タブレット向けのSoCはLPDDR3とDDR3に対応すると説明しており、2015年に登場が予定されているCherry Trail(チェリートレイル、Bay Trailの後継となる14nmのAtom)と、そのエントリーPC向けとなるBraswellが依然としてDDR3のサポートに留まることを示唆した。

Intelのメモリロードマップ。将来のところに書かれているのが2015年の製品のサポート状況。SkylakeはDDR4とDDR3、LPDDR3の3つに対応する
サーバー向けはすべてDDR4へと移行する。タブレット向けのCherry Trailは依然としてLPDDR3とDDR3のサポートに留まる

DDR4とDDR3の交差は、8Gbit品が普及が進み価格差がなくなる2016年に

 ファインドレイ氏は「IntelはDRAMベンダーではないので、DRAMデバイスに対してどのようなロードマップをを各社が持っているのか言及することはできないが、各社に聞き取りを行ない、業界全体のトレンドとしてどうなのかを説明したい」とした。

 「DDR4に関しては現在2,400MHzの製品まで生産が開始されているが、今年(2014年)中は2,133MHz品がスイートスポットになると考えている。来年(2015年)には2,400MHz品へと移行するだろう。メモリデバイスの密度(デンシティ)に関しても、現状では4Gbitがほとんどで、唯一SK Hynixだけが8Gbit品の量産に成功している」とする。

 モジュールに関しては「クライアントに関してはUDIMMがメインで、SO-DIMMに関してはSkylakeでDDR4をサポートする来年になる。サーバーに関してはRDIMMとLRDIMMが用意されており、前者が90%後者が10%というところだ」と説明した。

IntelがDRAMベンダーに聞き取りを行なってまとめたメモリデバイスのトレンド

 メモリ市場におけるDDR4の立ち上がりに関しては「これまでの新しいメモリは、まずはボリュームゾーンであるPCクライアントで立ち上がって、その後サーバーにというのが流れだったが、DDR4は歴史上初めてサーバーから立ち上がる製品になる、このため市場に占める割合は、今年はまだ低いままだろう。しかし、Skylakeがサポートする2015年以降は急速に立ち上がっていく」と述べ、市場の立ち上がりは2015年に入ってからになるという見通しを明らかにした。

今後数年はMobile DRAM(LPDDR3/LPDDR4)が40%前後を占め、残りがPC用DRAM(DDR3/DDR4)が占める。DDR3とDDR4の交差点は2016年になると予想

 DDR4の価格に関しては価格に関しては、今年は20~25%、来年には5~10%程度のプレミアム(価格の上乗せ)があるが、それが2016年の前半~半ばにかけてそれが0に近づいていくだろうとした。このため、DDR3とDDR4のコストや生産量などが逆転するのは8Gbit品のボリュームが増え、価格のプレミアムがなくなってくる2016年のどこかのタイミングになるだろうとした。

DRAM密度のトレンド
DDR3とDDR4の価格差の予想。2014年中は20~25%と大きく、2015年には5~10%になり、2016年には差が無くなると予想されている

 また、モバイル製品(モバイルPC、スマートフォン、タブレット向け)のDRAMとなるLPDDR3やLPDDR4に関しては、今年はLPDDR2が急速に減っていき、LPDDR3へのシフトが進むとした。その上で、数週間前にJEDECでLPDDR4の仕様策定が終わったことを受け、DRAMベンダーがLPDDR4の製品化を始めたと述べ、来年から徐々にLPDDR4への移行が始まり、2016年にはLPDDR4が大多数になるだろうという見通しを明らかにした。

Mobile RAMの市場動向。すでにJEDECではLPDDR4の規格策定は終わっており、DRAMメーカーは試作に成功している。2016年にはLPDDR4が急速に立ち上がると予想されている

3種類のメモリが混在することになる2015年に向けてUniDIMMの仕様を提案

 続いて登壇したのはIntel 主任エンジニア メモリ・ストレージアーキテクトのベッキー・ループ氏。ループ氏はCore i7-5970Xなどでサポートされている、DDR4の自動オーバークロックプロファイルとなるIntel Extreme Memory Profile 2.0(XMP 2.0)について説明した。

 すでに説明した通り、現在市場に出回っているDDR4は2,133MHzが定格だが、PCゲーマーの中にはより広帯域のメモリ帯域を確保するために、メモリをオーバークロックするユーザーも少なくない。そうしたユーザーが、より簡単にオーバークロックできるように設計されたのがXMP 2.0で、利用することで簡単に2,667MHz、2,800MHzへとオーバークロックできる。メモリモジュールにはSPDと呼ばれる設定プロファイルを格納するROMがあるのだが、そこを拡張したのがXMP 2.0だ。

 このXMP 2.0はKingston、Crucial、G.SKILL、CORSAIR、ADATA、PATRIOTといったメジャーなメモリモジュールメーカーからキットとして4枚1組で提供されている。4枚1組なのは、Core i7-5970Xのメモリが4チャネル構成であるためで、異なるモジュールを混在させるとオーバークロックの成功率が下がるためだ。

XMP2.0対応のメモリモジュールは、Kingston、Crucial、G.SKILL、CORSAIR、ADATA、PATRIOTなどから発売されている

 そしてループ氏は、メモリベンダーに提案している、Universal DIMMないしはUniDIMMと呼ばれる構想に関しての解説を行なった。「DDR4が登場したことにより、今後はDDR3、LPDDR3に加えてDDR4も選択肢に加わり、DDR3からDDR4への移行が発生する。システムを設計する時にはどれを採用すべきか迷うだろう。その時にUniDIMMを採用すれば柔軟にメモリを選択できる」と述べ、IntelがOEMメーカーなどに対してUniDIMMを提案していることを明らかにした。

 ループ氏によれば、UniDIMMはDDR3、DDR4、LPDDR3の3つ種類のメモリのどれかを搭載できるメモリモジュールで(もちろん混在はできない)、BIOS側に搭載されているメモリを検出する機構を用意することで、システムの出荷時に搭載するメモリを選択できるようになる。

 コネクタはどのメモリにも対応できるSO-DIMMよりも若干小さなサイズ(横は同じ69.6mmだが、縦が30mmから20mm)になっている、製造コストなどを削減するためコネクタは既存の260ピンのSO-DIMMを流用する一方で、モジュールの切り欠きの位置を変えることで従来のSO-DIMMと区別する。現在KingstonとMicronがUniDIMMに賛同をしており、他のDRAMベンダーにも採用を呼びかけている段階だという。

 基本的にDRAMそのもの、SoCの側に関しては変更を加える必要は無いが、マザーボード上に搭載されている電圧変換器(VRM)は、必要に応じて電圧を変更する仕組みを導入する必要がある。ただそのコストは25~50セント(日本円で約25~50円)程度と安価に済むという。

 LPDDR3を搭載しているシステム場合、現行のデザインではすべてメモリをマザーボード上に実装しているのに対して、UniDIMMではメモリソケット分高さが出てしまうので、薄くしたいデザインなどには向かないが、Ultrabookや2-in-1デバイスなどでそこそこの薄さがあれば良いという製品や、薄さがあまり問題にならない製品で、出荷時にDDR3とDDR4を切り替えて対応したいというOEMメーカーの製品などがターゲットになる。

Intelが提案するUniDIMMの仕様。コネクタは既存のSO-DIMMを流用し、縦方向のサイズが若干小さくなっている。また切り欠きの位置がSO-DIMMとは異なっている
基本的にCPU、コネクタなどは変更する必要は無いが、マザーボード上に新しい電圧変換器(VRM)を実装する必要がある
コストアップは25~50セント(日本円で25~50円前後)と大きくないが、メモリソケットをマザーボード上に実装する必要があるので、マザーボードのサイズは厚くなってしまう。薄さ優先のタブレットなどには向かないが、メインストリーム向けのノートPCなどには適したソリューション

(笠原 一輝)