イベントレポート

ASUS、MWCではIA版Android搭載製品のみを展示

~Fonepad 7のLTE版とローコスト版を発表

MWCのホール2に設置されているASUSのブース

 ASUSは、MWCのホール2にブースを設置して同社のスマートフォン、タブレット製品を展示している。ブースでは、主にIntelのSoCを搭載したスマートフォンやタブレットがフォーカスされており、1月のInternational CESで発表(別記事参照)されたZenFoneシリーズ、「PadFone mini」などが中心になって展示されていたほか、今回のMWCで発表された「Fonepad 7」のLTE版(ME372CL)、およびFonepad 7のSoCをAtom Z2560(最大1.6GHz)からAtom Z2520(最大1.2GHz)に変更したローコスト版(ME175CG)の2製品も合わせて展示された。

さながらIA AndroidのショーケースのようだったMWCでのASUSブース

 ASUSのMWCでのブースはホール3に設置されており、他のブースとは異なり、ガラスで覆われた密閉空間になっているというちょっとユニークな構造になっている。今回のASUSの展示は、IA(Intel Architecture)ベースのAndroid端末にフォーカスが当てられており、展示されている製品はすべてがIAベースとなっていた(このため、「Nexus 7」などの展示はされていなかった)。

 具体的には、1月のCESで発表されたZenFoneシリーズ、PadFone mini、昨年(2013年)発売された「Fonepad Note 6」、そして今回のMWCで発表されたFonepad 7のLTE版とローコスト版になる。これらの製品はいずれもIntelのClover Trail+(Atom Z2500シリーズ)を搭載する。

 IntelとASUSは、IA版Androidを密接な関係で取り組んでおり、ASUSはClover Trail+のラインナップを増やしている。すでに、Intelは22nmプロセスルールのAtom Z3400シリーズことMerrifieldを発表している(別記事参照)が、当初はMerrifieldはどちらかと言えば、ハイエンド向けの製品となる。

ASUSのブースなのに、IntelのSoCのメリットを説明するパネルがそこら中に置かれていた

 IntelとASUSにとって問題となるのは、現在のIntelのラインナップ(MerrifieldもClover Trail+も)がいずれもハイエンド向けであり、199ドル以下の今後急成長が望める市場に適した製品が無いことだ。そこで、IntelはClover Trail+の前の世代となるMedfieldでとった手段を再びClover Trail+世代でも活用する。具体的には、IntelのモデムとローエンドのClover Trail+をセットで買ってもらった場合には、大幅に料金を割引、かつマーケティング面で協力するというオファーをするという手段だ。実際ASUSの初代Fonepadは、その仕組みの中で生まれたという背景がある。

 今回、ASUSがMWCのブースでIAベースの製品だけに絞って展示しているのは、そうした背景の中でそうなったと考えるのが正しいだろう。実際、ブースに行ってみると、そこかしこにIntelのモバイル向けSoCのメリットを紹介するボードが出ていたりと、Intelが何らかの協力を行っているという様子が伺える。

 ただ、そうした業界の事情はユーザーには何も関係の無い話。ASUSがCESで発表した「ZenFone4」は、Atom Z2520、メモリ1GB、4GBストレージ、4型800×480ドット液晶、HSPA+モデム、リア500万画素のカメラという十分すぎるスペックで99ドル(日本円で約1万円弱)という価格が注目を集めている。実際、これで1万円という価格はインパクトがあると言え、成長市場だけでなく、成熟市場でも2台目のスマートフォンなどとして十分な可能性があると言えるだろう。実際、ASUSブースでは多くのユーザーがZenFoneシリーズを試している姿が印象的だった。

CESで発表されたZenFone4。Atom Z2520、メモリ1GB、4GBストレージ、4型800×480ドット液晶、HSPA+モデム、リア500万画素のカメラという十分すぎるスペックで99ドルという価格が話題を集めている
ASUSのPadFone mini。デュアルSIMなどのユニークな機能を備えている合体系のスマートフォン+タブレット

XMM7160を搭載したFonepad 7 LTEとローコスト版を発表

 今回ASUSは2つの新製品を発表した。それがFonepad 7 LTE(ME372CL)と、Fonepad 7(ME175CG)という2製品だ。現在ASUSの日本法人エイスース・ジャパンから日本でも発売されているFonepad 7はME372の型番がついている製品になるが、今回発表された2製品はそのME372をベースに改良したものとなる。

【表1】Fonepad 7のスペックの違い
Fonepad 7 LTE(ME372CL)Fonepad 7(ME175CG)Fonepad 7(ME372)
SoCAtom Z2560(最高1.6GHz)Atom Z2520(最高1.2GHz)Atom Z2560(最高1.6GHz)
メモリ1GB1GB1GB
ストレージ8GB/16GB8GB8GB/16GB
液晶IPS式7型(1,280×800ドット)IPS式7型(1,280×800ドット)IPS式7型(1,280×800ドット)
通信LTE/HSPA+HSPA+HSPA+
無線Wi-Fi/BluetoothWi-Fi/BluetoothWi-Fi/Bluetooth
リアカメラ500万画素500万画素500万画素
OSAndroid 4.3Android 4.3Android 4.2.1
バッテリー3,950mAh3,910mAh3,950mAh
サイズ120x197.7x10.5mm(幅×奥行き×高さ)11.35mm(高さ)120.1x196.6x10.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量333g340g340g

 Fonepad 7 LTE(ME372CL)はその名前の通り、内蔵されているモデムをLTEに対応させた製品になる。従来のFonepad 7にはIntelの3Gモデムが内蔵されていた。これは、Fonepad 7の開発時にはIntelのLTEモデムがまだリリースされていなかったためだ。しかし、その後IntelはXMM7160というLTEモデムを発表し、昨年の第3四半期にOEMメーカーへの提供を開始した。それを受けて作られたのがこのFonepad 7 LTE(ME372CL)ということになる。このため、外観やスペックなどは従来モデルと同じになっている。なお、ヨーロッパでの価格は249ユーロ(日本円で約35,000円)からで、価格はスペックにより異なるとのことだった。

Fonepad 7 LTE(ME372CL)。基本的なデザインは従来のFonepad 7(ME372)と同じ
左側面にはSIMカードを挿入するスロットがある。抜き差しにはピンが必要になる
右側面にはボリューム、電源スイッチ、micro SDカードスロット
こちらはホワイトモデル

 これに対してFonepad 7(ME175CG)は、ローコスト版という扱いになっており、SoCはAtom Z2500シリーズの最もローエンドとなるAtom Z2520(最高1.2GHz)になる。内部ストレージは8GBモデルのみになっており、外側のデザインも、ME372にあったアクセントなどがなくなっており、その点からもコストを意識したモデルとなる。ASUSによれば、ヨーロッパでの価格は149ユーロ(2万円)と低価格に設定されており、どちらかと言えば、成長市場などを意識した製品と言える。

 なお、現地のASUSの担当者によれば、これらの製品はヨーロッパで発表され、もちろんそれ以外の地域に投入する計画もあるとのことだが、日本に導入されるかはまだ未定とのことだった。

外形がME372CLとは異なっている。初代Fonepadに近いデザイン
SIMカードは左側面にあるゴムを外して入れる形になっている

(笠原 一輝)