イベントレポート
Intel、Merrifiled/Moorefield搭載64bit Androidスマートフォンをデモ
(2014/2/25 00:54)
米Intelは、MWC開幕日(2月24日、現地時間)に記者会見を開催し、Androidスマートフォン/タブレット向けの22nmプロセスルール世代の製品では最初の製品となる「Atom Z3400」シリーズ(Merrifiled)/Z3500シリーズ(Moorefield)(別記事参照)、および同社のLTEモデムとして第2世代になり、CAT6/300MbpsのLTE-Advancedに対応した「XMM7260」、Bay Trail-Tの64bit Windows対応などを発表(別記事参照)した。
この中で同社の副社長兼モバイル&コミュニケーション事業本部長のハーマン・ユール氏は、Merrifield、Moorefieldを搭載したスマートフォンのリファレンスデザインが、IntelがGoogleと協力して開発を続けてきた64bit Androidで動作する様子を公開した。また、今後同社のモバイル向け製品を採用するOEMメーカーとして、ASUSTeK Computer、Dell、Lenovo、およびODM/EMSメーカーとなるFoxconnと複数年、複数デバイスの契約を結んだことを明らかにし、今後そうしたメーカーからさらなるIntel製品搭載スマートフォン、タブレットが登場すると説明した。
Merrifiled/Moorefield搭載64bit Androidスマートフォンをデモ
Intel社長のレネイ・ジェームス氏は「Intelはコンピューティングだけでなく、通信のインフラも提供しているという非常にユニークなポジションにある。常々言ってるように、今後はIoTなどを含めて、インターネットに接続する機能を持つ機器が2020年には150億台に達すると考えている。それに備えるようなソリューションが必要だ」と述べ、Intelが提供するIoT(Internet of Things)やスマートフォン/タブレット向けのソリューションなどに関する説明を行なった。
ジェームス氏は「大事なことは最適化だ。そうした中ではインフラ、ソフト、セキュリティへの取り組みが必要になる」と、同社の持つデータセンター向けのCPUから、IoT向けのCPU、さらにはソフトウェアソリューションなどを組み合わせることでよりスマートなクライアントやネットワークなどを構築できることを強調した。
そのジェームス氏に呼ばれて登壇したユール氏は、同氏の担当分野であるスマートフォン/タブレット向けのSoCおよびモデムなどの説明を行なった。同社は、22nmプロセスルールで製造される新しい製品として、まずデュアルコアのMerrifieldを投入し、それに引き続き今年後半に姉妹品でクアッドコアになるMoorefieldを投入する。ユール氏は、新製品は従来製品よりも性能を向上させながら、低消費電力で、新しいセンサー関連の機能、さらには同時に発表された新モデムとの組み合わせで、OEMメーカーがより強力なスマートフォンを製造できるとした。
さらにユール氏は同社の64bit命令セット(いわゆるx64、Intel的な言い方をするとIntel64)への対応についても触れ、HPが前日に発表したBay Trail-T搭載10型タブレットを紹介し、同社が64bitへの取り組みを他社に先駆けて進めていることを強調。さらに、Moorefieldを搭載したリファレンスデザインのスマートフォンを紹介し、すでにそうした製品で64bitのIA(Intel Architecture) Androidが動作していることをデモした。Intelは近年Googleとの関係を深めており、オープンソースAndroidの開発にもIntelのエンジニアが多数参加している。そうしたこともあり、Androidの世界では、IAはARMに次いで2番目のプラットフォームと認識されるようになっている。
現在Androidのスマートフォンやタブレットでも、メモリが3GB搭載されるモデルが出てきており、今後さらにメモリを増やしていこうとすれば、64bitへの移行は必須になる。現在ARMベースのSoCベンダも、64bitへの移行を進めているが、IAが64bitで先行していることをOEMメーカーにアピールする狙いだ。
新モデムはASUS、Dell、Lenovo、Foxconnが搭載製品を投入予定
次いでユール氏は、同時に発表されたXMM7260についての紹介を行なった。LTEモデムでは、現時点ではQualcommのシェアが圧倒的で、それ以外のベンダーは非常に小さいシェアしか取れていないという現状がある。IntelのMerrifieldやMoorefieldなどの製品は、いずれもプレミアム向けの製品となっており、LTEモデムへの対応が必須だ。しかし、昨年(2013年)のMWCの段階では、IntelはLTEモデムを出荷できておらず、Intelのモバイル向けSoCが普及しない1つの要因になっていた。
だが、昨年IntelはLTEモデム「XMM7160」を投入し、すでにいくつかの製品で採用されている。XMM7160は、2G/3G/4G LTEなどに対応しており、LTE CAT4で150Mbps(下り)のデータ転送が可能。なお、IntelではXMM7160を搭載したM.2フォームファクタのワイヤレスWANカードをPC OEMメーカーに対して出荷する計画だ。
XMM7260はその後継となる製品で、4G LTEの最大40MHz幅でのCarrier Aggregation(CA)に対応しており、最大CAT6で300Mbps(下り)のデータ転送速度を実現できる。IntelはMWCの同社ブースにおいて、XMM7260を利用したデモを行なっており、実際に300Mbpsでデータ転送ができる様子を公開した。既報の通り、IntelはXMM7260を今春に出荷開始する予定だ。
今回Intelは、Merrifield、XMM7260を搭載する具体的な製品は発表しなかった。PCとは異なり、スマートフォンやタブレットはOEMメーカーの都合だけでは出荷時期が決まらず、通信キャリアの発表に合わせて投入されるということもあり、現時点では特に発表できる製品がないということだろう。しかし、ユール氏は「今回発表するのは、OEMメーカーとの複数年、複数機器のパートナーシップだ。我々のモバイル製品を使って今後製品を出すOEMメーカーは、ASUSTeK Computer、Dell、Lenovo、そしてFoxconnや中国のOEMメーカーなどだ」と述べ、ASUS、Dell、Lenovoが複数のIntel SoCを搭載した製品を今年リリースし、さらにFoxconnが中国など成長市場の小規模なOEMメーカー向けにIntel SoCを搭載した製品を開発・製造してOEM供給する計画であることが明らかにされた。
Intelの発表によれば、LenovoはIntel SoCを搭載した製品を今年中にリリースし、2-in-1デバイスやUltrabookなどにはIntelのLTEモデムの採用を進めていく。ASUSは1月のCESでClover Trail+を搭載した「ZenFone」を発表しているが、ここMWCではすでに販売されている「Fonepad 7」にIntelのLTEモデムを組み込んだ「Fonepad 7 LTE」(ME3762CL)が発表されている。また、Dellは「Venue」シリーズの新ラインナップを今秋投入予定であることが明らかにされた。