Hothotレビュー
ASUS「Fonepad Note 6」
スタイラスも付属した3G通話対応のSIMロックフリー6型タブレット
(2013/12/28 06:00)
ASUSの「Fonepad Note 6」は、3G通話や通信に対応したSIMロックフリーの6型タブレット。12月20日より発売を開始、価格はオープンプライスで、店頭予想価格は49,800円前後の見込みとなっている。
画面サイズはスマートフォンで主流の5型、そして小型タブレットの7型とのちょうど中間の6型で、いわゆる「ファブレット」と言われるジャンルの製品。専用のスタイラスペンを搭載する点も特徴で、手書きに加えてペンを使った独自操作の機能も備えている。
スタイラスペンを備えた大画面のAndroidと言えばSamsungの「GALAXY Note」シリーズが有名だが、同じNoteの名を冠するFonepad Note 6はどれだけ「ノート」として活用できるのか、タブレットとしての機能に加えてペン操作の面についてもレビューする。
CPUはIntelのAtom Z2580。その他のスペックは標準的
本体スペックの特徴は、Androidで主流となっているQualcomm製CPUではなく、IntelのAtom Z2580(最大2GHz、2コア/4スレッド)を搭載、背面にも「intel inside」のロゴが記載されている。メモリは2GB、内蔵ストレージは16GB、OSバージョンはAndroid 4.2.2と、CPU以外の基本スペックは現行のタブレットとしてほぼ標準的だ。
無線関連ではIEEE 802.11a/b/g/nの無線LAN、Bluetooth 3.0+EDR、GPSを搭載。SIMは3GのみでLTEは非対応だが、通信だけでなく通話にも対応しており、本体にも通話用のマイクを搭載。通信方式はW-CDMA/GSM/EDGEで、W-CDMAの周波数は2,100(1)/1,900(2)/850(5)/800(6)/900(8)MHzをサポートする。
本体サイズは88.8×164.8×10.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約210g。ディスプレイは上下/左右とも視野角178度のSuper IPS+液晶を搭載し、解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)。5型級のスマートフォンに比べると明らかに大きく、手に持ったときもずっしりとした重さを感じる。
横幅自体は成人男性であれば、片手で両端をつかめる程度のサイズのため、音声通話であれば問題なく片手で使える。一方、アプリなどを使う際は本体重量のバランスのせいもあり、片手だけでスワイプやタッチ操作まで行なおうとすると不安定で、落としてしまわないか心配になる。後述するように片手で使いやすい画面インターフェイスも用意されてはいるが、基本的には片手で本体を持ち、もう片方の手で操作する方が安心だろう。
右側面には電源ボタンと音量ボタン、左側面にはキャップ付きのMicro SIMスロットとmicroSDカードスロットを搭載。本体下部には充電端子を兼ねるMicro USBポートとマイク、スタイラス、本体上部にイヤフォンジャックを備える。スピーカーは本体上部と下部にそれぞれ搭載し、横置き時にスピーカーが左右に来る配置となっている。
カメラは前面に120万画素、背面に800万画素のイメージセンサーを搭載。背面はカメラのみのシンプルな作りで、フラッシュは非搭載。バッテリは本体一体型で着脱はできないようになっている。
画面を縮小して本体の片手操作をサポート
ホーム画面は5画面構成で、ソフトボタンは「ホーム」、「戻る」、「マルチタスク」の3種類。ASUSのスマートフォンやタブレットに搭載されている「浮動アプリ」機能はFonepad Note 6では備えていない。
画面上部のステータスバーは、ASUS独自の「ASUSクイック設定」がプリセットされており、無線LANやモバイル通信、画面回転の切り替えのほか、輝度調整、Miracastのオン/オフなどが設定可能。通常のAndroidステータスバーが使いたい場合は、設定の「ASUSカスタマイズ設定」から変更可能だ。
パターンやパスワードなどのセキュリティ設定を適用した場合この機能は利用できないが、セキュリティ設定が「スライド」の場合、ロック画面にアプリのショートカットを表示でき、ホーム画面を経由せずにアプリを直接起動できる。
前述の通り、6型サイズのディスプレイは、片手で持つ程度なら可能だが、本体操作も片手で行なおうとすると反対側まで指が届かず難しい。このとき役に立つのがステータスバーからオンにできる「片手操作」だ。この機能をオンにすると、画面を左右どちらかへ縮小して表示できる。縮小したサイズは4.3型、4.5型、4.7型の3段階から選択できる。片手しか使えない場合は片手操作をオンにし、カフェやオフィスなど両手で操作できる余裕のある場所では解除する、という使い分けが便利だ。
SIM設定は多数のアクセスポイントがプリセット
SIMカードスロット搭載もFonepad note 6の特徴。SIMロックフリー端末ではあるが、通信方式が3Gのみの対応かつW-CDMA方式のためauは利用できず、1.7GHz帯を利用するイー・モバイルの3G回線も非対応。つまり利用できるのはNTTドコモおよびNTTドコモの回線を利用するMVNO、そしてソフトバンクモバイルということになる。
手持ちのSIMで試してみたところ、NTTドコモおよびIIJmioのSIMは問題なく利用可能だった。SIMの設定を行なう「アクセスポイント名」の項目では、IIJmioのほかBIGLOBE、Marubeni Wireless、OCN、So-net、b-mobile、hi-ho、vmobileなど多数のアクセスポイントがプリセットされているため、自分の所有するSIMのサービスを選ぶだけで設定は完了する。NTTドコモ用にもmoperaUの設定がプリセットされているため、別途mopera Uを契約しておけば、NTTドコモのSIMも利用できる(spモードのアクセスポイントはNTTドコモ端末限定のため、NTTドコモのSIMを他の端末で利用する場合はmopera Uの契約が必要になる)。
NTTドコモのSIMを利用し、いくつかの場所で通信速度計測アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を利用して通信速度も計測したところ、おおむね1~3Mbpsで通信が可能だった。LTEに比べると高速とは言えないが、実用には十分なスループットだ。ただしPingの応答速度は約100ms程度とLTEに比べると遅く、都心の計測では1Mbpsに満たないことが多かった。
ベンチマークは標準的。バッテリは公称を超えて動作
ベンチマークの測定は「Quadrant Professional Edition」、「AnTuTu Benchmark」の2アプリで実施。GPUのベンチマーク測定アプリ「MOBILE GPUMARK」は、Fonepad Note 6では正常に動作せず強制終了してしまうため、今回の計測では使用していない。
結果はQuadrantで7,000程度、AnTuTuで20,000程度。Nexus 7(2013)を上回った。ただし実際の動作は、Fonepad Note 6のOSバージョンは4.2.2、Nexus 7は4.4.2というバージョン違いも影響しているのか、キビキビと画面が切り替わるNexus 7に比べ、Fonepadは若干のもたつきを感じる。とは言え、無線LAN利用時であれば通信速度も速いため、さほど気にはならないレベルだ。
【表】ベンチマーク測定結果 | ||
---|---|---|
Fonepad Note 6 | Nexus 7(2013) | |
Quadrant Professional 2.1.1 | ||
Overall | 7359 | 4654 |
AnTuTu Benchmark 4.1.4 | ||
Overall | 20486 | 19548 |
Multitask | 3599 | 3230 |
Dalvik | 1536 | 1478 |
CPU integer | 1698 | 2266 |
CPU float-point | 1891 | 2082 |
RAM Operation | 1412 | 1124 |
RAM Speed | 2125 | 1553 |
2D graphics | 1522 | 1591 |
3d graphics | 4796 | 4511 |
StorageI/O | 1282 | 1108 |
Databese I/O | 625 | 605 |
実際に差を感じるのは移動中など無線LANではなくモバイルデータ通信を使う場合だ。3GのみのFonepadは速度こそ十分だがPing応答速度がLTEに比べて遅いため、通信を伴うアプリではNexus 7と比べた際のもたつき感がさらに大きくなる。また、タブブラウザを利用して多数のWebサイトを同時に開く場合なども、3Gの通信速度では読み込みが遅く、待たされることが多かった。SIMについては、LTEのような快適な通信は期待しない方がいいだろう。
バッテリの持ちは公称で約7時間で、バッテリ容量は公開されていない。無線LANをオンにしてGmailを同期、輝度を最低の状態でフルHD動画を再生し続けたところ、8時間10分でバッテリが空になった。公称の7時間は十分にクリアしており、画面をスリープすることも多い実際の利用時にはもっと持たせられるだろう。外出時のバッテリはほとんど配しなくてよさそうだ。
付属のスタイラスでキャプチャやスクロールを操作。スタイラス紛失防止機能も
付属のスタイラスはFonepad本体とさまざまな連携ができる。スタイラスを本体から取り外したり取り付けた際にはサウンドが鳴るほか、画面上部のステータスバーにはスタイラスが取り外されたことをアイコンで通知。さらに通知トレイでは外している時間も確認に加えて、外した時点でのGPS情報をマップで確認できるなど、スタイラスの紛失を防ぐ機能が盛り込まれている。
ホーム画面の状態でスタイラスを外すと、通常は表示されない6画面目のホーム画面として「スタイラスページ」が一番右に追加され、手書き用のメモアプリ「SuperNote」を簡単に起動できる。
スタイラスにはボタンが付いており、このボタンを押しながら画面にタッチすることで指定した範囲のみのスクリーンショットやテキストのコピーが可能。テキストの場合はタッチを開始した位置からテキストをなぞるとコピーモードが開始され、テキストをなぞらずペンを斜めに移動し、範囲選択が終わったらスタイラスを画面から離すとスクリーンショットが保存される。文章では分かりにくいが、実際の操作は直感的で、数回操作すれば慣れるだろう。
画面キャプチャは「インスタントページ」というスクリーンショット保存機能も搭載。この機能をオンにするとスタイラスを外した際に画面左端に青いペンのアイコンが表示され、これを右方向に引き出すことで表示している画面のスクリーンショットに手書き入力が可能になる。Webサイトや文書など気になるところをメモしておくのに便利だ。
スタイラスは画面のスクロール操作にも利用可能。スタイラスを画面に近づけると青い円が表示され、スタイラスの示す位置が確認できるが、スタイラスを画面のスクロールする位置に近づけると円が三角形の矢印に代わり、画面のスクロールが可能になる。
これらのスタイラス機能は、設定の「スタイラス」項目からオン/オフが可能。初期設定では「インスタントページ」以外の機能がオンになっているため、インスタントページ機能を利用したい場合は設定からオンにしておこう。
素早く手書きでメモが取れる「SuperNote」
プリインストールされている「SuperNote」は、手書きに特化したメモアプリ。入力した文字は縦幅を調整した上でアプリに反映されるため、文字の大きさを気にせず手書きを続けていても1行内に入力文字を揃えてくれる。このあたりは文章より画像で見た方がイメージは伝わりやすいだろう。
画面右端にある赤い線を越えて手書きを続けると、入力済みの文字が自動で画面左へ移動するため、ページ遷移などを気にすることなく文字をひたすら書き続けることができる。ただし、基本的には横書きを前提としたシステムのため、横方向ではなく縦方向に文字を入力すると複数の文字をまとめて1文字として認識してしまう。
また、スタイラスの持ち方が悪いと文字入力中にスタイラスのボタンを気付かないうちに押してしまい、文字入力のはずがスクリーンショットを撮影していた、というシーンも何度かあった。スタイラスを持つ時はボタンを無意識に押してしまわないような持ち方が必要だ。
ノートには手書き文字だけでなく画像や音声、動画の挿入も可能で、文字色を緑、赤、青、黒の4色から選択可能。また、キーボードを使ったテキスト入力もパーツとして挿入可能だ。
スタイラスを外すと自動でメモアプリが起動し、文字をひたすら入力していくだけで縦幅を自動調整して反映してくれるという点で、手書きメモの面では非常に快適。ただし、デジタイザに対応したGALAXY Noteシリーズや東芝の「REGZA Tablet AT703」に比べると入力の快適さはやや劣る。SuperNoteのチュートリアルは、狙っているのかいないのか分からないが非常に個性的な文字で入力されており、ペンや鉛筆で書くほどの文字入力を求めるのは難しそうだ。
手書き文字の認識機能もあるが、残念ながら日本語には対応していない。また、手書き文字を検索する機能も搭載しておらず、基本的に文字を入力するだけというシンプルなもの。本格的な文書を作成するというより、素早く手書きでメモを取るという使い方が合っていると感じた。
カメラの画質は実用十分。エフェクト機能は多彩
背面のカメラは800万画素イメージセンサーでオートフォーカスにも対応。インターフェイスは独自にカスタマイズされており、右側にはギャラリー、シャッターボタン、動画撮影の切り替えボタン、撮影モード切り替えボタンが、左側にはインカメラとの切り替え、エフェクト、メニューボタンが並んでいる。
設定項目は多岐に渡っており、ホワイトバランスやISO、露出補正のほか、タッチした場所にピントを合わせてシャッターを切るタッチシャッター、連続撮影、顔認識など細かく設定可能。基本的な操作はチュートリアルが用意され、表示済みのチュートリアルも再度設定画面から確認できるなど親切設計だ。
撮影モードはオートモードのほか、「HER」、「美人効果」、「パノラマ」、「夜景」、「スマート削除」、「すべての微笑み」、「GIFアニメーション」の合計8種類が用意されている。
スマート削除は背景に写り込んだ他人を削除できる機能だが、この機能は撮影後に編集するのではなく撮影時に行なわれるほか、写真を5枚撮った後に動いていたものが削除される仕組みになっているため、撮影時はシャッターを押してから数秒ほど同じ体勢で待ち続けなければならない。あらかじめ他人が写り込むことを想定してこの機能をオンにしておく必要があるため、テーマパークで記念写真を撮影したいが人通りが多い、といった場合など、実際に使えるシーンは限定的だと感じた。
GIFアニメーションはその名の通り、連続で撮影した30枚の写真からGIFアニメーションを作成できる機能。シャッターを長押しするだけで簡単に作成でき、アニメーションのスピードも自由に調整できる。遊び機能としては操作もシンプルで使いやすく、おもしろい機能だ。
画質に関しては必要十分で、暗い場所や夜景もしっかりと撮れる。ただしシャッターボタンを押してから撮影まではややもたつきを感じるほか、シャッター音が非常に大きく、近くに人に驚かれることもあった。もう少し控えめな音だと撮影しやすいと感じた。
充実のプリインストールアプリ。日本語入力はFSKAREN
プリインストールアプリの豊富さもASUS製端末の特徴。標準でバックアップやファイラー、ペアレンタルロック、アプリロック、電卓、ボイスレコーダ、インカメラを利用したミラーといったアプリに加え、DLNAとASUSのクラウドサービスを組み合わせた複数デバイスのデータ管理アプリ「AOLink」、音質向上アプリ「Audio Wizard」、メモや写真、音声などでアイディアを保存する「MyBitCast」、撮影した写真で絵本のようなストーリーを作成できる「ASUS Story」といった独自アプリもプリインストールされている。
電子書籍関連も充実しており、「Yahoo!ブックストア」、「Amaozon Kindle」、「BookLiveReader for ASUS」といった電子書籍アプリを用意するほか、電子書籍リーダーアプリとして「My Library Lite」もプリインストール。ただし、サードパーティーアプリのうちKindleはプリインストール済みだが、Yahoo!とBookLiveに関してはサイトへのリンクのみでインストールは自分で行なう必要がある。
文字入力はFSKARENをプリインストール。QWERTYと10キーに対応し、フリック入力も利用できるなどAndroidでは定番の文字入力アプリだが、Fonepadで利用すると画面の大きさに対してキーボードが小さく、画面下部に表示される文節変換やかな英数への変換ボタンも小さく押しにくい。ATOKなど他の文字入力アプリでは画面に合わせてボタンサイズを調整する機能があるが、画面サイズの大きいFonepadではそうした機能も欲しいところだ。
3Gの音声通話と手書きメモ、6型サイズが購入検討のポイント
Nexus 7やiPhone 5s/5cなど、SIMロックフリーの端末は近年急速に増えているが、Androidで通信だけでなく通話も対応しているモデルはさほど多くはない。同じASUSの「Fonepad 7」は音声通話可能だが、7型モデルと比べてFonepad Note 6はサイズも小さく取り回しやすい。
動作に関してはハイスペックモデルと比べてやや重たさは感じるが実用上大きな不便はない。ノート機能もシンプルではあるが手書きで素早くメモを取りたいという時に便利。カメラも必要十分な画質で、多彩なエフェクト機能も含めて便利に使えるだろう。
価格は49,800円前後と、Nexus 7(2013)のLTEモデルの39,800円と比べて1万円ほど高い。音声通話やスタイラスによるメモ機能、取り回しやすい6型サイズというポイントが差額の1万円分として納得できるかどうかがポイントだろう。