HP、上海でプリンタ新製品発表イベントを開催
~日本向けにデザインを改良したENVYや、立体物スキャナ搭載複合機など

基調講演会場

9月8日(中国時間)発表



 米Hewlett-Packard(HP)は8日、中国の上海において「Innovation for Impact」と題したアジア太平洋・日本地域向けのプリンタ新製品発表会を開催。家庭向けから、中小・大企業向けまで、独特な機能を盛り込んだ新製品や、新たなソリューション、戦略などを発表した。

 同イベントには日本を含むアジア太平洋の12カ国14の地域から報道関係者が参加。これらの地域に向けた一斉発表であるため、ここで紹介する製品の全てが日本でも発売されるわけではなく、価格も不明だが、年末商戦向け製品であるため、日本でも扱われるとすれば近いうちに別途発表がなされるだろう。

 本レポートでは、基調講演および製品説明会の内容を元に、際立った製品についてかいつまんで紹介する。詳細な仕様などについては、別途お伝えする予定。

 同社は2010年にも香港で同様のイベントを実施し、「ePrint」(日本ではメールdeプリント)を発表した。ePrint対応プリンタには、専用のメールアドレスが割り当てられ、そこに印刷したいデータを添付ファイルとしてメールで送ることで、スマートフォンなどからでも直接印刷を行なうことができる。また、ePrintに対応したアプリをインストールすることで、プリンタのタッチパネルから新聞や、料理法などのサイトに直接アクセスし、情報を印刷することもできる。

 基調講演を行なった、同社イメージング・プリンティンググループ取締役副社長のVyomesh Joshi氏は、2011年もこのePrintを積極的に訴求していく計画であることを明らかにした。

 ePrint対応機種はこの1年で1千万台を出荷した。当時の対応機の最低価格は99ドルだったが、新製品では79ドルのものからePrint機能を実装。これによりJoshi氏は、2012年末までに5千万台の出荷するとの目標を掲げた。

Vyomesh Joshi氏この10年でImaging and Printing Groupの売上高は190億ドルから260億ドルに成長
昨年発表したePrint対応機は、最低価格を79ドルにまで引き下げる2012年末までに5千間台の出荷を見込む

 ePrint関連機能の拡張も図る。まず、これまでePrintでプリンタに付与されるメールアドレスをユーザーが自由に指定可能になる。同社ではこれを「Social ID」と呼んでいるが、そのアドレスがすでに他人に取得されていない限り、例えばFacebookのアカウント名など、自分の覚えやすいIDをePrintのメールアドレスに設定できる。

 新たな機能として、「Scheduled Delivery」が追加される。具体例としては、ePrint対応のニュースサイトから、指定した時間に自動的にデータを読み込むとともに、印刷まで行なう。これによって、自前の新聞ができあがる。デジタルデータを活用するなら、スマートフォンなどでニュースサイトを見た方が、早いし、エコだが、スマートフォンでは画面が小さくて見づらい、出勤中に電波が届かないといった場合に好適だと同社では説明している。

 スマートフォンなどのモバイル端末については、ePrint、AppleのAirPrintとGoogleのCloud Print対応に加え、ePrint Home & BizおよびPrinter Controlというアプリを提供する。

 ePrint Home & BizはiOS、Android、Symbian用があり、このアプリに対応したプリンタを自動的に検索し、印刷することができる。

 使い方としては、自分のプリンタを操作するだけでなく、対応プリンタがそのように設定されていれば、公共の場所などに設置されているものであっても、ユーザーがモバイル端末から簡単にアクセスして、印刷することができる。

 Printer Controlは、タッチパネルの代わりに、モバイル端末を使って、印刷のほか、コピーやスキャンを行なうためのアプリ。コピーやスキャンしたデータは、モバイル端末に直接送信できる。こちらはiOS向けのみが提供される。

ePrint Home & Bizの概要Printer Controlの概要Apple AirPrintとGoogle Cloud Printにも対応

 イベントで訴求された製品の中で、PC Watch読者の関心を引きそうなものの1つが、「TopShot LaserJet Pro M275」。カラーレーザー複合機である本製品は、卓上灯のようなアームが本体の上部に伸びている。ここには対象物を照らすLEDとカメラが内蔵されており、数十cm程度までの厚みのある物体をスキャンすることができる。スキャンに当たっては、6枚の異なる画像を取り込んで1枚に合成する手法が用いられている。

 これによって、例えばオークションに出品する商品を、撮影ブースや、デジタルカメラ、PCなどを使うことなく、精細に撮影し、直接Webにアップロード、共有するといった使い方ができる。なお、本製品については現時点で細かな仕様が公開されていない。

TopShot LaserJet Pro M275
このように立体物をスキャンできるスキャンした写真はそのままWebへアップ可能

 もう1つの製品は「ENVY 110 e-All-in-One」。厚さがわずか10cmという複合機である「ENVY 100 e-All-in-One」の後継製品。本体サイズはほぼ同じだが、デザインが黒基調から白基調に改められた。

 これはAppleの製品との組み合わせを意識しているが、日本市場からの意見も大きく反映させているという。4,800×1,200dpiで、モノクロ30ppmといったエンジン部分の仕様は変わっていないが、ユーザーインターフェイスはよりダイナミックなものに変更されているという。

白ベースになったENVY 110 e-All-in-One

 このほかイベントでは、業務用大型製品、偽造インクへの対抗措置、企業向けソリューションなどについても紹介された。

ビジネス向けインクジェット機のインク耐久性のデモ。印刷後すぐに水につけても滲まないこちらもビジネス向けインクジェット複合機のスキャンの新機能で、対象物が斜めにセットされても補正して印刷されるこういった業務機のデモも行なわれた
レーザープリンタはAuto Off機能により、アイドル時に徹底的に消費電力を落とすことができる。その場合も、ウォームアップ時間は従来と変わらない偽造防止の正目-シールはQRコードのものに変わったeSupplyというアプリを使うと、インクやトナーのオンライン注文のほか、QRコード/シリアルコードの読み込み/入力により、正規品かどうかをチェックできる

(2011年 9月 9日)

[Reported by 若杉 紀彦]