【CES 2011レポート】Intelブース編
~Oak Trail搭載タブレットやソフトウェアによるGPU切換機能をデモ

セントラルホールに設置されていたIntelブース

会期:1月6日~9日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center/The Venetian



 2011 International CESのIT系の話題の中心は間違いなくスマートフォンやタブレットデバイスだったが、新しい第2世代Coreプロセッサー・ファミリーを発表したIntelも同プロセッサを搭載した製品や、第1四半期に出荷する予定のタブレットデバイス向けのプラットフォームになる“Oak Trail”を搭載した製品などを展示して注目を集めた。

 また、報道関係者向けのデモルームでは、サードパーティが開発したGPU切り換えソフトウェアを展示し、第2世代Coreプロセッサ・ファミリーの内蔵GPUのディスプレイ出力にモニターをつないだ状態で、単体型GPUを3Dグラフィックスの描画に利用するデモを行なった。

●2月のMobile World Congressで発表される予定のOak Trailをデモ

 今回IntelはCESに合わせて第2世代Coreプロセッサー・ファミリー(開発コードネームSandy Bridge)を発表したこともあり、別レポートで紹介した発表会でもお伝えしたように、Intelのほとんどの展示はその関連になっていた。

 それでは、タブレットデバイスへのIntelの対応はどうだったのだろうか? それについてもすでに別レポートでお伝えしたとおりで、Intelのポール・オッテリーニ社長兼CEOは「スマートフォンやタブレットに関してはCESでは新しい発表はしない。これらに関しては2月にバルセロナで行なわれるMobile World Congressの話題になるだろう」とし、CESではそれらの製品には大々的にフォーカスしないと宣言したのだ。

 率直に言って、そうした判断はIntelにとってあまりよくない結果をもたらしたと言っていいのではないだろうか。というのも、今回のCESではARMアーキテクチャに基づいたスマートフォンやタブレットに注目が集まっており、Microsoftによる次期WindowsにおけるARMのサポートも発表された。そうした中で、Intelがタブレット向けのソリューションを発表しなかったことは、“やっぱりタブレットのアーキテクチャはARMで決まりだ”と来場者に印象づける結果になってしまったからだ。

 しかも、すでにIntelのタブレット向けのソリューションであるOak Trailはすでに準備が整っていた。実際、複数のベンダーがIntelブース、あるいはMicrosoftブースなどで搭載製品を展示していた。それだけに、今回CESでこちらにフォーカスしておかなかったのは判断ミスだったと言えるのではないだろうか。

 それでも、IntelブースやMicrosoftブースに、Oak Trailへの期待を高める製品が含まれていたことは救いと言えるだろう。

SamsungのOak Trail搭載キーボードスライド式のタブレットPC“7シリーズ”。OSにはWindows 7 Home Premiumを搭載している。バッテリ駆動時間は5.5時間
Microsoftブースに展示されていたOak Trail搭載のタブレット。台湾のODMメーカー製とだけ書かれておりメーカーは不明。10型のタッチ液晶を搭載し、OSはWindows 7 Home Premium

●Intelデモルームで公開された“ソフトウェアOptimus”

 Intelでもう1つ注目の展示は、報道関係者やOEMメーカーの関係者などに向けてデモルームで公開されたGPU切替ソフトウェアだ。このソフトウェアはLucidLogixというベンチャー企業が開発したソフトウェアで、Windows 7環境で複数あるGPUのビデオメモリの内容を、他のGPUのビデオメモリにコピーして、複数のGPUを1つのディスプレイに表示するという技術だ。

 Windows 7では2つのGPUのドライバをロードできるようになっており、例えば内蔵GPUと単体GPUの2つが共存できるようになっている。ただし、ディスプレイはそれぞれに接続しなければ画面は見ることができず、ディスプレイが1つしかない場合には入力を切り換えて使うなどの工夫をしなければならない。例えば、普段のWindowsの描画は内蔵GPUで行ない、3Dゲームなどの時だけ単体GPUを利用するという使い方はGPUにそういった機能がないとできない。

 しかし、このLucidLogixのソフトウェアを利用すると、単体GPUのビデオメモリの内容を内蔵GPUのビデオメモリにコピーし、内蔵GPUのディスプレイ出力から出力すること(ないしはその逆)が可能になるのだ。実際、Intelが公開したデモでは、第2世代Coreプロセッサー・ファミリーの内蔵GPUのディスプレイ出力に接続されたディスプレイに、GeForce GTX 480で描画されたDirectX 11のゲーム画面が出力されていた。

 この仕組みは、NVIDIAがOptimus Technologyと呼んでいるGPU切替機能とほぼ同等だ。Optimusでも単体GPUのフレームバッファの内容を内蔵GPUのそれにコピーしており、そのコピー処理の一部がハードウェアを利用していることを除けばLucidLogixのソフトウェアも基本的な原理は同じだが、Optimusが省電力と性能のバランスに力点を置いているのに対して、このLucidLogixは性能に力点を置いている点が大きな違いと言えるだろう。

 展示に立ち会ったIntelの関係者によれば、ビデオメモリのコピーによる性能劣化が3%程度あるということなので、パフォーマンス重視のハードゲーマーには不向きかもしれないが、例えばHTPCなど普段は内蔵GPUで十分だけど、時々外付けGPUの処理能力を使いたいという用途であればかなり興味深いソフトウェアと言えるのではないだろうか。Intelの関係者によれば、このソフトウェアは1月の末にもベータ版が予定されており、エンドユーザーに向けて提供される予定もあるということなので、内蔵GPUに満足できないユーザーには要注目の製品となるのではないだろうか。

Intelのデモルームで公開されていたLucidLogixのGPU切替ソフトウェア。左のDirect3D 11対応ゲームはGeForce GTX 480で描画され、右側のエンコードソフトウェアは第2世代Coreプロセッサ・ファミリーの内蔵GPUのQuick Sync Videoのハードウェアエンコーダを利用してデモされているゲームの設定、Intel HD Graphics 3000では対応していないDirect3D 11の選択肢が表示されていることに要注目。アプリケーション毎にどっちのGPUで演算するかをプロファイルで設定することができる

(2011年 1月 13日)

[Reported by 笠原 一輝]