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Samsung、Galaxy Note3とGalaxy Gearを韓国などで販売開始
~腕時計型のデバイスでウェアラブルに参入へ
(2013/9/26 08:47)
韓国のSamsung Electronis(サムスン電子)は、9月4日(現地時間)にドイツのベルリンで開催したSamsung Unpackedイベントで発表されたスマートフォン「Galaxy Note3」と腕時計型のウェアラブルデバイス「Galaxy Gear」の販売を、韓国をはじめとする一部の国や地域で9月25日から開始したと発表した。ただし、日本と米国は今のところ含まれていない。販売開始にあわせてソウルにある同社本社で開催されたWORLDTOURにプレスツアーとして参加してきたので、その模様と、それぞれの製品を紹介する。
ちなみに、ベルリンでの発表はグローバルモデル、今回の韓国での発表は韓国市場向けモデルとなっており、使用する携帯電話網の違いや販売対象国独自の仕様が存在する。日本市場向け製品の販売や製品仕様に関しては取り扱いキャリアからの正式発表待ちになるが、UnpackedイベントおよびIFA期間中には日本での10月発売についても言及されているほか、従来モデルの「Galaxy Note」および「Galaxy Note II」はNTTドコモによる販売実績があり、おサイフケータイやワンセグといった日本独自の仕様が盛り込まれた製品になっている。国内発売の可能性はきわめて高い。
完成度の高まるGalaxy Note3。バックカバーにレザー調の質感
WORLDTOURイベントの冒頭は、同社の無線事業部 戦略マーケティング室長 DJ・リー氏が登壇。Galaxy Noteシリーズについて「当初は(スクリーンが)大きすぎるという声も聞かれたが、現在は競合他社も次々に5型、6型クラスに参入している」として、Galaxy Noteは“ファブレット”とも呼ばれるカテゴリにおける先駆者であることを強調した。あわせて、10月中に曲面ディスプレイを採用するスマートフォンを韓国市場向けにリリースすることも明らかにした。Q&Aセッションではこの新製品についてもメディアから質問が相次いだが、詳細は10月に全て明らかにするということで、導入時期の予告だけにとどまった。
Galaxy Note3は、言うまでもなくGalaxy Note IIの後継モデル。IIはギリシャ数字だったが、3はアラビア数字で表記される。スクリーンサイズは5.7型で、1,920×1,080ドット(フルHD)のAMOLEDディスプレイを採用。重量は韓国市場向けのモデルで172g。本体サイズは79.2×151.2×8.3mm(幅×奥行き×高さ)。プロセッサは2.3GHzのクアッドコア。ただし市場ごとにプロセッサの仕様は異なる可能性がある。
RAMは3GBで、ストレージは韓国市場向けモデルの場合で32GB(グローバルモデルには64GBの設定もある)。OSはAndroid 4.3。3,200mAhのバッテリを搭載する。カメラ機能は背面が1,200万画素で、フロント側が200万画素。オーディオ機能は24bit/192kHzの“Ultra High Quarity Audio”に対応。ネットワーク機能は、韓国向けモデルにおいて複数の周波数帯を束ねて通信速度を向上させる「キャリアアグリゲーション」が可能なLTE-Advancedに対応するのが特徴だ。
最大の特徴はやはり初代モデルから続くS Penを使ったペン操作で、Note3ではさらにその機能が強化されている。Note3のプレゼンテーションを行なったマーケティングチーム次長のKIM Changjun(キム・チャンジュン)氏によると、S PenによるUI/UXは、『・(点)、○(丸)、□(四角)』がポイントになっているという。
Note3から搭載される「AIR COMMAND」は、ディスプレイ上でS Penのボタンを押すことで、「アクションメモ」、「スクラップブック」、「Sファインダー」、「ペンウインドウ」の5つのメニューを簡単に呼び出せる。この操作がペン先でポイントするもので、・にあたる。
メニューのうちの1つ「アクションメモ」では、手書き入力した文字をOCR化。頻繁にメモすると思われる電話番号や住所などを認識してテキスト化し、そのままダイヤルする、住所に応じた地図情報を示す、連絡先に追加するなどの処理が行なえる。同じメモに書いた電話番号や住所のうち、必要な部分をフリーハンドで囲って指定したり、写真の切り抜きをしたりする操作が○だ。
また、スクリーンに2つのタスクを表示するマルチウィンドウ機能に加え、電卓や時計、SMSなどのスモールアプリもタスクを切り替えることなく任意のタイミングで呼び出せる。これもAIR COMMANDからメニューを選択し、適当なサイズで四角をくくる「ペンウインドウ」で、そこがスモールアプリのエリアとなる。この操作が□にあたる。
ほかにもマルチタスク/マルチウインドウでは、ウィンドウをまたいだドラッグ&ドロップによるテキストや画像ファイルのコピー&ペーストにも対応。デモでは、同時に2人の相手とチャットをしながら、添付された写真をフォワードする様子が披露された。また、Galaxy S4では音楽再生で搭載されたGroup Play機能を、映像面でも実現している。
韓国で発売される本体カラーは白、黒、ピンクの3色。ほかに交換用のバックカバーが5色展開される。純正のウォレットケース、S Viewのウインドウが開いているS Viewカバーなどの純正アクセサリも多色展開される。IFAにおける展示では、さらにさまざまなカラーや、ブランドとのコラボレートアクセサリも紹介されていたので、市場ごとにこれらのアクセサリは多様なものとなるようだ。
本体とアクセサリに共通しているのは、レザー調の質感だ。素材自体はポリカーボネートだが、3Dテクスチャをつかって、触感などを再現している。周囲にはやはり3Dテクスチャのステッチが施されており、文字どおり昔ながらのノートの触感を手に伝えようとする方向性が伝わってくる。韓国では通常のテーブルでの展示だったが、ベルリンでは全てのデモ用テーブルの天面にこのテクスチャとステッチが施されていて、製品へのこだわりや、コストの投入だけではないアピール力の着実な向上が感じられた。
ウェアラブルデバイスの第1弾は腕時計型の「Galaxy Gear」
Note3は3代目となって完成度の向上が製品のポイントになるが、初代Noteのように新しいカテゴリに挑むのが「Galaxy Gear」だ。 Google Glassをはじめ、Appleが開発を行なっているとされる腕時計型デバイスなど「ウェアラブル」というカテゴリにあたる製品。Sony Mobileがスマートウォッチとして、やはり腕時計型のコンパニオンデバイスを既に発売しており、緒戦は腕時計の分野で火蓋が切られることになりそうだ。イベント冒頭でDJ・リー氏は、「コミュニケーションに多くの変化をもたらす製品であり、GALAXY Gearを通じ新しいコミュニケーション文化とトレンドを生み出したい」と製品に対する意欲を語った。
単独でも時計+αとしての機能は持つが、基本的にはコンパニオンデバイスとして、Note3などと一緒に利用する製品となる。同時発売となるNote3は、出荷時点で対応しており、既発のGalaxy S4には10月、Note IIとS3には11月に、OSのアップデートなどを伴って対応する。ちなみにこれは主に韓国内での予定であり、グローバルモデル、および日本で発売が実現した場合のスケジュールではない。
Galaxy Gearの仕様は、800MHzで駆動するシングルコアプロセッサを搭載。OSは非公表だが、取材によるとAndroidベースで、利用できる機能やAPIなどを限定しているサブセットに近いもの。メモリ容量は512MB。内蔵バッテリは315mAhで、フル充電後にSamsungが基準とする利用環境下で約25時間の駆動が可能だ。ストレージは4GBを内蔵する。スクリーンサイズは1.63型で正方形。320×320ドットの解像度を持つ。
本体サイズは36.8×56.6×11.1mm(同)。これはベルトサイズを含まないユニットのサイズ。重量はベルトを含んで73.8g。UnpackedイベントやIFAの報道では、厚く重いイメージが伝えられた事例もあったが、DJ・リー氏はこの点について、誤解があることを指摘した。これらの展示では、給電用のケーブルに加えて、盗難防止装置がベゼル部分についており、それらが本体にネジを使って一体化されていた。そのため、かなり厚くなり、かつ手に持った際に重く感じてしまう結果になったという。同氏は「私たちの展示方法にも問題があった」と認めたうえで、73.8gという重量は同クラスの一般的な腕時計の平均が100g程度であり、それらより軽く、また盗難防止装置のない通常の使用状態では違和感があるほどに厚いわけではないとして、実際に体験してもらうことを呼びかけている。この日登壇したSamsungのエグゼクティブは全てGearを身につけており、これはパフォーマンスではなく日常的な利用を継続しているものだと説明した。
Gearは単独で携帯通信網に接続できるわけではない。CESやIFAなどではSIMを内蔵可能な腕時計型Android機器なども時折目にする機会があるが、Gearは前述のとおりGalaxyシリーズのコンパニオンデバイスとして機能する。本体との接続はBluetooth 4.0で、これがGearの持つ唯一の無線機能だ。
操作は時計表示を中心にして、左右と上下のスワイプ操作で行なう。左右はいわばメニューの切り替えにあたり、ループしてさまざまなメニューが順次表示される。選択したメニュー画面でタップすると各種の機能や、詳細設定が行なえる仕組み。上下のスワイプは、いわゆるホットキーにあたり、上から下へのスワイプでカメラ機能の呼び出し、下から上へのスワイプでダイヤラーが呼び出せる。左右スワイプは画面中央部での指先移動でも可能だが、上下はベゼルをきちんとまたぐ必要がありそうだ。これは、動画を見てもらうと操作感などが多少つかめるかも知れない。
時計としてはアナログ時計からデジタル時計、スケジュール表示など、表示する設定が選択できる。画面は常時点灯しているわけではなく、側面のボタン操作で表示させることができるほか、いわゆる「腕時計を見る動作」で、消灯から点灯へと切り替わる。これは本体内の角速度センサーによって実現しており、歩くといった通常の動きで点灯に変わることはなかった。水平垂直方向にだけぶんぶんと振っても大丈夫だった。そして動画のように、体の側面から目の前に腕を出す動作で点灯する。あるいは、スクリーン面を正面に向けた状態から、約90度を身体側に起こして画面が見られる状態にすることで点灯するという挙動を示した。もちろん人間の動きには個性や癖があるので万全とはいかないだろうが、とりあえず目指す方向性ははっきりしている。
基本的にはコンパニオンデバイスなので、Gear本体内には一時的なデータしか保存されない。連絡先や通話履歴などはペアリングした本体を参照して呼び出し、電話などをかけるといった動作をする。その他の機能もほぼ同様で、Gearのカメラを使って撮影したり、あるいは音声メモを録ったりした場合は自動あるいは手動で本体側にデータを保存しにいく。
なんらかの都合で接続ができない場合のバッファは、カメラ撮影で50枚、音声メモで5分とのこと。自動に設定した場合は接続が確立すればこれらは自動的に本体側へ転送される。開発担当者は、Gearと接続するGalaxy Note3などのことを「マスターデバイス」と呼んで説明しており、Gearが本体ありきのデバイスであることが明確に分かる。
カメラ機能は「メモグラフ」と呼ばれ、撮りたい時にすぐ撮れるのがコンセプト。言い換えれば、スマートフォンをポケットから出してカメラ機能を呼び出す時間も惜しいというタイミングだろう。前述の腕時計を見る動作でスクリーンが開いたら、上から下へのスワイプでカメラ機能を呼び出せばタップだけで撮影が可能。文字盤を見る状態であれば、カメラは自動的に正面を向いた位置になる。
カメラ部分はベルトに付いているが、デザイン面では撮られる側、撮る側がともに認識できる点が重要という考えがあるそうだ。ベルトカラーによらずカメラは黒が基調で、はっきりとそれがカメラであると認識できるほか、シャッター音も大きめに鳴る仕組みだ。厚みがあるのは、オートフォーカス機構のためにどうしても必要な厚みとのことである。
前述のメニュー説明の画面に一部音声が含まれているが、セキュリティ対策もある。デバイス間は相互に通信しているので、2つの距離が一定以上離れた場合には、セキュリティモードに入る。もちろん身につけていればそんなことはないが、置き忘れたり盗られたりした場合はGearの画面表示にはパスコードが必要となる。また、この相互接続を利用して、例えば家の中などでどこに置いたか分からない場合は、Gear側から本体を鳴らす、本体側からGearを鳴らすことができるという。目安となる距離は15m程度とのこと。
今回はプレスツアーということもあって、参加者が注目したのはボイスメモ機能だ。前述のとおり1ファイルあたり最大5分の記録が可能。録音データはマスターデバイスを経由してサーバー上でテキスト化され、音声+テキストファイルとしてマスターデバイス側で保存されるという。この保存されたデータのテキスト部分をGearで参照することも可能。筆者を含む参加者が注目したのは、いわゆるテープ起こしに近い要素だ。
言語としては、欧米主要言語と韓国語、そして中国語と日本語に対応するという。サーバーベースという点でセキュリティ懸念はあるが、担当者に確認したところ、元データをサーバー側で保存することはないとしている。実際の取材やインタビューなどは、5分という短時間では決してすまないのだが、それはセクションごとに分割するなどの工夫次第だろう。何より実際のデモでは、参加者がアドリブで言った台詞は、参加者自身が一部噛んだにもかかわらず、ほぼ正確にテキスト化されていた。
独立して機能するのが万歩計のペドメーター機能(歩数計)だ。マスターデバイス側にもペドメーター機能はあるが、Gear側がより正確な数値を出すことができるとして、ペドメーターで表示される数値はマスターデバイスを呼び出すのではなく、Gearの数値をそのまま表示する。Sヘルスのサービスを利用する場合にも、記録されるデータはGear側を優先するということだ。
ほかにも、「○○さんに電話」といった具合に音声で電話をかけたり、その日のスケジュールや天気を音声による呼びかけで参照するSボイスを搭載。マスターデバイスの写真を参照できるギャラリー機能や、リモコンとして機能するメディアコントローラー機能を搭載する。音楽再生などに利用するプレーヤーの場合は、アプリの種類をを選ばず利用できる。Sボイスの音声コマンドは、日本語にも対応する模様だ。
通知機能は非常に重視されている。さすがに文字入力を盤面で行なうことは難しいので、せいぜいダイヤルと各種メニューの選択などがGear側の処理だ。どうしてもマスターデバイスを出さずにGear側だけで文字入力を行なうなら、前述のボイスメモ機能などを使って、一旦本体側でテキスト化されたファイルを呼び出せるぐらいだろう。通知機能のポイントは、スマートリレーと呼ばれる部分で、例えばメールの着信やチャットの着信があった場合は、その通知を確認してマスターデバイスをロック解除するだけで、メールの表示画面になったり、チャットの返信ウインドウが待機できる点だ。通知の総量は結果として多くなりがちなので、通知にもプライオリティをつけて、重要な通知だけを表示するような設定も行なえるという。
Gearで利用できるAPIは一部公開され、サードパーティーによるGear向けのアプリケーションが提供される。発表時点では、LINEやEvernote、Pathといった有名どころを含めた約70種類があり、Samsung App Storeから入手できる。アプリケーションがGear側でどれだけの機能を利用するかは開発者サイドに委ねられ、完全にマスターデバイスとのインターフェイスとして機能するか、あるいは通知をGearへプッシュしてマスターデバイスの起動を促すといったさまざまな使い方を検討することになる。初動ということもあり、やはりチャットアプリのプッシュ通知が多いという。今のところは、こうしたアプリの開発を全て解放しているわけではなく、デベロッパを限定した形で進めながら将来的な展望を検討するとしている。
同様に、Galaxy Gearのマスターデバイスとなる機器も前述のSamsung製スマートフォンに限られる。他メーカー製のAndroidデバイスとも将来的にペアリングできる可能性はゼロではないものの、GearとのインターフェイスをSamsungが独自に開発していたり、ボイスメモのようなサーバー依存のサービスも含まれるので、しばらくは自社製品に限る方針だ。
Galaxy Gearの参考価格は米ドルで299ドル。韓国内では334,000ウォン前後で販売される模様。明確なのは、消費者が購入決断を行なうというマジックプライスの300ドルを意識した設定で、未発売の米ドルが基準になっている点だ。時期的にはホリデーシーズンの大型消費期間にあたる。貨幣価値や消費者物価を考えれば、韓国内ではやや高額なイメージかも知れない。仮に日本で発売するとすれば上記の価格設定は非常に分かりやすく、29,800円といったところだろう。
価格について高いか安いかは購入者の判断に委ねるしかない。なにより、大量に出荷される製品としてはほぼ初物に近いデバイスである。また、腕時計という選択はなかなか難しい。スマートフォンなら複数台を持って歩いても、ぎりぎりセーフの感はある。しかしさすがに腕時計を2つ身に付けるのは微妙だ。腕時計は陣取り合戦に近い。特に携帯電話とスマートフォンの普及後は、時計機能を懐中時計のような形でそちらに委ねてしまい、腕時計をしない人も増えている。価格面でも両極化が進んでいて、安価なものはびっくりするほどに安い一方で、高級腕時計はステータスやコレクション、趣味の一部として古くから定着している。前者は取り込めるかも知れないが、後者の心をデジタル機器で動かすのはまず無理だろう。
IFAの折りに、当のSamsungのあるエグゼクティブと雑談に近い形で話をする機会に恵まれたが、やはりその辺りは心得たもので、まずターゲットにしているのは、今腕時計をしていない層、あるいはこれから初めて時計を買う(あるいは買ってもらう)ティーン層であるという感触を受けた。
両製品の発売日と言うことでソウルで開催されたWORLDTOURだが、残念ながらSamsung本社の地下にあるショップにも、Galaxy GearやNote3対応の一部周辺機器は未入荷だった。Note3は購入できる。見通しとしては一週間ほどが入荷のメドと言うことらしい。お膝元の韓国でこうした状況なので、欧米でもほぼ同様だろう。特に米国あたりでは発売日とは流通を始めた日に近く、実際に消費者の手に届くタイミングは少し遅い。Appleあるいは日本国内の流通のように、正確無比に発売日に製品が店頭に並ぶというのは、世界的には稀なケースなのである。