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Samsung、3D V-NAND採用SSD「850 EVO」を国内発売
~レビューも掲載
(2014/12/12 09:00)
ITGマーケティング株式会社は、Samsung製3D V-NAND採用SSD「850 EVO」を12月中旬より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は120GBが14,000円、250GBが19,000円、500GBが36,000円、1TBが67,000円前後。
850 EVOは、840 EVOの後継となるコンシューマ向けハイエンド製品。積層型NANDである3D V-NANDを採用するのは、発売済みの850 PROと同じだが、850 PROの3D V-NANDが2bit MLCであるのに対し、850 EVOのそれは初の3bit MLCとなる。
3bit MLCについては、信頼性を懸念するユーザーもいるが、Samsungでは従来の2D型NANDと比較して3D V-NANDの3bit MLCは耐性が2倍以上あるとしている。実際、2D型2bit MLC NANDを採用し、上位モデルとして位置付けられる「840 PRO」は、書き込み寿命が73TBWなのに対し、850 EVOは120/250GBが75TBW、500GB/1TBが150TBと長寿命を実現。製品保証も840 PROと同じ5年を保証している(840 EVOは3年)。平均故障間隔は150万時間。
消費電力の面でも3D V-NANDは書き込み時の消費電力が2D NANDの半分に抑えられているほか、120~500GBモデルについては、より省電力な「MGX」コントローラを初採用(1TBは従来と同じMEXコントローラ)。これによって、840シリーズと比べ、1W近い省電力を果たしている。DevSleepモードにも対応し、同モード時の消費電力は120~500GBで2mW、1TBで4mWに抑えられている。加えて、低容量モデルでは、従来製品よりランダム書き込み速度が大きく強化されている。
キャッシュ容量は120GBが256MB、250/500GBが512MB、1TBが1GB。840 EVO同様、NANDの予備領域の一部を疑似SLCバッファとして利用することで書き込み速度を向上させる「TurboWrite」技術に対応するが、バッファがいっぱいになった際の速度の落ち込みが840 EVOよりも低く抑えられている。最大連続読み込み速度は540MB/sec、書き込み速度は520MB/sec、ランダム読み込み速度(4K QD32)は最大98,000IOPS、書き込み速度(同)は最大90,000IOPS。
インターフェイスはSATA 6Gbps。AES 256bit、TCG/Opal V2.0、Encrypted Drive(IEEE 1667)といった暗号化および、TRIM、ガーベージコレクション、S.M.A.R.Tなどの機能に対応。消費電力は、読み込み時最大3.7W、書き込み時最大4.4W、アイドル時最大50mW。本体サイズは100×69.85×6.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は最大66g。
独自のデータ移行ソフト「Data Migration」と、SSD管理ソフト「Magician」が付属。後者は、SSDの設定や、状態、累計書き込みバイト数の確認のほか、性能/容量/信頼性のそれぞれに併せたシステムの自動最適化設定、予備領域のサイズ変更、ドライブの安全な消去、システムメモリをキャッシュに使う「RAPID Mode」のオン/オフなど幅広い機能を持つ。
実機レビュー
今回、500GBモデルを試用する機会を得たので、簡単なレビュー結果も紹介する。比較に同容量の840 EVOを用意し、ベンチマークはCrystalDiskMarkとATTO Disk Benchmarkを使用した。
CrystalDiskMarkの結果を見ると、840 EVOが1,000MB/0fillの設定で、やや高い読み込み性能が出たことを除くと、連続アクセス速度はほぼ同じ。以前からだが、SATA 6Gbpsではすでに連続アクセス速度はインターフェイスがボトルネックとなり頭打ちとなっている。ランダムアクセスは、4Kの読み込みにおいて、850 EVOが2~3割速い結果となっているが、4K QD32ではほぼ同じ性能となっている。
ATTO Disk Benchmarkでは、データサイズが大きいと、CrystalDiskMarkの連続アクセス同様、ほぼ同程度の結果となっているが、サイズが小さい場合は、850 EVOの方が1~2割ほど速い。今回、細かく検証はできていないが、このあたり、OSやアプリの起動で、体感できる差が出そうだ。
850 EVOは、RAPID Modeオンでも検証した。メインメモリを使うため、CrystalDiskMarkでは桁違いの速度となるが、ATTO Disk Benchmarkは、性能が安定しなかった。基本的には性能が向上するとみていいはずだが、DRAMを使うと言うことは、不意のシステムシャットダウンや電源断があると、ごっそりデータが消えてしまう可能性があるので、運用には注意を要する。また、若干だが使えるメインメモリ容量が減るので、最低要件の2GBしか搭載していないシステムでは、扱えるアプリやデータに影響が出る可能性がある。なお、RAPID ModeはSamsungの対応SSDでしか機能しない。
このように比較してみると、850 EVOは840 EVOと比較して、低容量モデルこそ高速化されているが、概ね性能をそのままに3D V-NANDへ移行し、信頼性を高めた製品と言える。
ただし、これは3D V-NANDが性能に影響を及ぼさないというわけではない。連続アクセスにおいては、すでにSATA 6Gbpsは限界に達しているので、速度向上が望めないだけだ。他方、容量においてもまだ3D V-NANDの高密度化が活かされておらず最大容量は向上していない。
こういった点から、3D V-NANDが本領を発揮するのは次世代製品になると思われる。とは言え、850 EVOに意味がないわけではない。840 EVOから乗り換えるメリットは薄いが、新規に購入するのであれば、全方位で前世代製品を上回る850 EVOの方が魅力的であり、他の製品と比べても、ハイエンドを名乗るのにふさわしい実力を持っている。