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Samsung、840 EVO発表会で高速化機能などを解説
(2013/7/19 00:00)
韓国Samsung Electronicsは18日(現地時間)、韓国ソウル市内のホテルで「Samsung SSD Global Summit 2013」と題したイベントを開催。メインストリーム向けSSD「840 EVO」を発表したほか、今後PCI ExpressベースのSSDに注力していくというロードマップなどについて説明した。840 EVOの仕様は、既報の通りで、本稿では発表会で分かった追加情報などをまとめる。
まず、プレスリリースでは公開されていなかった価格は、120GB、250GB、500GB、750GB、1TBの順に、109.99ドル、189.99ドル、369.99ドル、529.99ドル、649.99ドルとなることが明らかにされた。また、250GBと500GBには、スペーサーと、SATA→USB 3.0変換ケーブル付きのラップトップキット(10ドル増し)が、120GBと250GBには、3.5インチマウンタ、SATA→USB 2.0ケーブル、SATAケーブル付きのデスクトップキット(15ドル増し)も用意される。
840 EVOは、「840」の後継となる製品で、840と同時発表された「840 PRO」が企業利用も想定したハイエンド向けとなるのに対し、840 EVOはメインストリーム向けとなる。ハードウェア的に見た840 PROと840 EVOの大きな違いは、前者が2bit MLCを使っているのに対し、後者が3bit MLC(TLC)を利用している点。
1つのNANDフラッシュセルに3bitを記録するTLCは、MLCに比べ特に連続書き込み性能が大きく落ち込む。実際、TLC採用の840とMLC採用の840 PROには、そういった性能差が出ている。しかし、840 EVOでは、新技術の搭載で、840 PROと同等にまで性能を引き上げている。一方で、TLC採用により、妥当な価格で最大容量を1TBにまで引き上げている。これらが840 EVOの特徴となる。
840 EVOの高速化は、「TurboWrite」と呼ばれる技術によるもの。SSDでは、耐久性/信頼性を高めるため、全体の2~3割の領域を予備領域として確保している。この領域の分だけ、記録領域は減ってしまうが、通常利用している領域に不良が発生しても、予備領域を使うことで、そのSSDを使い続けることができる。特にTLCはMLCに比べ、セルレベルの信頼性が下がりがちとなるため、この機能を使って、信頼性を保持している。
TurboWriteはこの予備領域の中の、さらに一部の領域をバッファとして利用する技術だ。サイズは、128/250GBは3GB、500GBは6GB、750GBは9GB、1TBは12GBとなっている。このバッファ領域は、他の領域と違って、本来TLCであるセルを疑似SLCとして利用する。例えば、1TBモデルでバッファとして確保されているのは、36GB分だが、これをSLC扱いするのでサイズは12GBとなるが、その分、高速にアクセスできる。これにより、連続書き込み速度は、520MB/sec(120GBモデルは410MB/sec)と、SATA 6Gbpsのインターフェイスの理論値に近いレベルまで高められた。
原理上、このバッファのサイズを超える連続書き込みがあった場合、TurboWriteは一時的に無効になり、その間の性能は120GBが140MB/sec、250GBが270MB/sec、1TBが420MB/secとなる。ただし、バッファからメインSSDへの書き込み完了にかかる時間は10秒前後で、その時間待てば、再びTurboWriteが効くようになる。また、一番バッファの小さい120GBでも3GBあり、Samsungでは、一般の用途でこのサイズを超えて一度に書き込みする状況はまれであり、ほぼ常時TurboWriteが効いた状態の性能が出せるとしている。
なお、このバッファはあらかじめ決められた領域に固定されており、ウェアレベリングのような分散処理は行なわれない。バッファ領域に不良が発生した場合は、TurboWriteは使えなくなる。ただし、SLC扱いとなるため、1セル当たり10万回程度の書き換えが可能で、同社では通常の用途で寿命の問題は発生しないとしている。
このほか、840 EVOは840から、採用するNANDフラッシュメモリ、コントローラ、ファームウェアも進化しており、ランダム読み込み性能なども引き上げている。具体的に、NANDフラッシュメモリは2xnm世代から、1xnm世代になり、コントローラは動作速度が300MHzのMDXから400MHzのMEX(ARM Cortex-R4、3コア)に変更。また、750GBと1TBモデルは、1GBの大容量キャッシュ(LPDDR2)を搭載する(250/500GBは512MB、120GBは256MB)。これら、NANDフラッシュメモリ、SSDコントローラ、ファームウェアなどは、全て同社が内製している。なお、ここでいう1xnmは19nmであることが明らかにされた。
また、プロセスルール縮小に伴って下がる信頼性を引き上げるための信号処理技術のほか、温度監視による制御機能も搭載。840 EVOでは動作保証温度が840の60℃から70℃に高められているが、温度センサーによって70℃を超えた場合は、転送速度を落とすなどして、冷却を図り、データエラーが発生しないようにしている。
メインストリーム向けではあるが、AES 256bitの暗号化機能を搭載。さらに、9月に提供予定の新ファームウェアで、TCG/OpalおよびeDRIVEという暗号化機能に対応する。なお、これは現行の840 PROにも適用される。
もう1つ840 EVOの特徴として紹介されたのが、付属ソフトの機能性。その1つが独自の管理ユーティリティ「Magician」。同ソフトは、ドライブの状態監視のほか、ベンチマーク、性能の最適化、OSの最適化、セキュアなデータ削除などができるが、バージョン4.2で新たに「RAPID Mode」が追加される。
RAPID Modeは、読み込みの加速と、書き込みの最適化を行なうもので、PCのメインメモリをキャッシュとして利用することで、さらなる高速化を図る。また、読み込みについては、OSのキャッシュの補完や、頻繁に利用されるデータのフェッチも行なう。
このRAPID Modeの効果を示すデモも行なわれ、連続アクセスはSATA 6Gbpsのバス幅を遙かに上回る、1,000MB/sec超の速度を実現。ランダム書き込みも445MB/secという、連続アクセスに近い数値をたたき出していた。RAPID Modeは、その原理上、DRAMからSSDへの書き込みが終わる前にシステムがシャットダウンすると、データが失われる可能性があるが、コンシューマ用途では、得られるメリットの方が大きいだろう。
このほか、HDDからSSDに換装する際などに、簡単にデータ移行できる「Migration 2.0」も付属する。