イベントレポート

デスクトップで1GB/secを実現する各種PCIeストレージ

~WDのSSD 128GB搭載SATA Express HDDもデモ

会期:6月3日~7日

会場:Taipei World Trade Center Hall 1,3, NANGANG Exhibition Hall

Taipei International Convention Center

 まだ数は少ないながらも、PCI Expressに対応するストレージがCOMPUTEX会場にていくつか展示/デモされている。

 これまでもPCI Expressの拡張カード型や、ノートPC向けにMini PCI Express型のSSDはいくつかのメーカーが出していた。しかし、Intelが9シリーズチップセットでM.2をサポートしたことにより、これまでごく一部のノートPC向けでしかなかったM.2 SSDの市場が広がり、ストレージメーカーもそれに対応してきた形だ。

 もう1つ、M.2よりさらに製品数は少ないが、一部のハイエンドマザーボードがSATA Express対応を図ったことを受け、その対応ストレージもいくつか展示があった。

 PCI Express対応の分かりやすいメリットは高速化だ。現在のSATA 6Gbpsでは600MB/secが限界となるが、PCI Express Gen2 x2接続を利用すると1GB/secまで高速化でき、高速なNAND FLASHメモリの性能を限界まで引き出せる。また、後述のASRock製品は、PCI Express x3 x4接続のM.2を独自に用意し、1GB/secを超える速度を実現している。

 M.2はノートPCを想定したインターフェイスであるため、これまで「VAIO Pro 13」のように単体SSDではデスクトップよりノートPCの方が速いという状況だったが、今後はデスクトップでも広くその恩恵が受けられるようになる。

 なお、形状がM.2であっても、接続がSATAのものもあり、この場合は転送速度は最大600MB/secとなる。

ASUS

 ASUSは、マザーボードメーカーとしてSATA Expressの実装に前向きに取り組んでいるが、コントローラメーカーのASMediaおよびMarvellと協業した、SATA Expressストレージケースを展示している。

 ASMedia「1062R」コントローラ搭載品は、3.5インチHDD外付けケース程度の大きさで、内部にMSATAかM.2のSSDを2機ずつ搭載可能。2基搭載時は、RAID 0でさらに高速化できる。7月発売予定。

 Marvell「88SS1083」コントローラ搭載品は2.5インチストレージの大きさで、中にM.2 SSDを1基搭載可能だ。

 Intel Z97 Expressチップセット搭載「Z97 DELUXE」によるオンボードM.2のデモも行なわれており、800MB/secを超える性能を発揮していた。

 インターフェイスカードとして、M.2 x4アップグレードカードも展示。M.2 SSDを接続して、マザーボードのPCI Express Gen2/3 x4スロットに挿入することで、1GB/secを超える帯域を確保できる。コントローラにはMarvellの「88SS9293」を採用。

 また、詳細な説明はなかったが、後述のASRockも含め、WDのSATA Express対応HDD「WD40RUNVS」が展示されていた。SSDを128GB搭載したハイブリッドドライブで、SSDによる高速化を実現しつつ、HDDで4TBという大容量を確保した。

ASMedia 1062R搭載SATA Expressケース
Marvell 88SS1083搭載SATA Expressケース
M.2 x4アップグレードカード
デモ機。特に説明はなかったが、右上のHDDはSATA Express対応のWD40RUNVS

ASRock

 ASRockは発表済みのマザーボード「Z97 Extreme6」でUltra M.2を搭載している。これは、通常のM.2と違い、独自にCPUに直結のPCI Expressレーンを利用することで、PCI Expres Gen3 x4という広帯域を実現したものだ。これにより、理論上の帯域は4GB/secとなる。

 会場ではこのデモが行なわれており、連続読み込みは1.181GB/secと1GB/secを超える性能を叩き出していた。これまではSATA 6GbpsがSSDのボトルネックになっていたが、Ultra M.2にとって現行のSSDの転送速度はまだまだ余裕がある。また、このシステムにはSATA Express対応のWD40RUNVSも接続されていた。

 これら、Ultra M.2およびSATA Expressは、Intel X99 Expressチップセット搭載の「X99 Extreme6」および「X99 Extreme4」でもサポートされている。

CPU直結のUltra M.2
1GB/secを超える性能を発揮
こちらでもひっそりとWDのSATA Expressハイブリッドドライブが利用されていた
X99 Extreme6(左)とX99 Extreme4(右)もUltra M.2とSATA Expressをサポート
SATA Expressポート

M.2 PCI Express SSD

 このほか会場では、ADATA、Apacer、PlextorといったメーカーがPCI Express接続のM.2 SSDを展示していた。価格や詳細な発売日などは未定。

 ADATAは同じNANDフラッシュ/コントローラを採用したと思われる、M.2と2.5インチ SATA ExpressのSSDを展示していた。容量はいずれも最大2TB。転送速度は最大1,800MB/secとされており、この場合PCI Express Gen x2の帯域を超えているので、最大限活かすにはASRockのM.2や、PCI Express拡張カードアダプタなどを利用する必要がある。

M.2 PCI Express SSD
2.5インチSATA Express SSD

 Plextorは、M.2 SSDについては発売済みの「M6e」の展示のみだったが、新製品として2.5インチSATA SSD「M6Pro」を展示、デモしていた。一般的なSATA SSDだが、「Plex Turbo」というソフトが付属し、Samsung製品のようにDRAMをキャッシュ代わりに使うことで、SSDのインターフェイスを超える性能を実現する。デモでは、6GB/sec近い書き込み性能となっていた。日本での発売は7月中旬から下旬を予定されている。

既存のM6e
M6Pro。SATA SSDだが、DRAMをキャッシュに使うことで、ベンチマークではかなり高速な結果が出る

 なお、こちらの記事でレビューしているように、M.2 SSDでのブートについてはまだ一部互換性の問題がある。導入にあたっては、事前にそのあたりの情報を確認されたい。

ApacerのM.2 SSD
こちらは容量が小さく、転送速度も遅めで、エントリー向けのようだ

(若杉 紀彦)