レノボ、スイッチャブルOS搭載の「ThinkPad X1 Hybrid」を解説

ThinkPad X1 Hybrid

2月7日 開催



 レノボ・ジャパン株式会社は7日、横浜・みなとみらいにある大和研究所で記者向けの説明会を行ない、近日に発売する予定の「ThinkPad X1 Hybrid」に関する技術を説明した。

 ThinkPad X1 Hybridは、既存のThinkPad X1の筐体をベースに、Qualcomm製のデュアルコアCPUや16GBのストレージ、無線LAN、そしてLinuxベースのOS「IMM(Instant Media Mode)」を集約した独自のMini PCI Expressカードを搭載したモデル。これにより、Windows 7とIMMのリアルタイム切り替えを実現し、IMM利用時ではWindowsの2倍となるバッテリ駆動時間を達成させた。

搭載されるIMMモジュール(表) モジュールの裏。Sandisk製の16GB NANDフラッシュが見える 実際にThinkPad X1 Hybridに組み込まれた状態。Mini PCI Express以外にフラットケーブルが見える
機体への刻印は「X1 Hybrid」で、X1とは明らかに異なる 切り替えはWindows上のユーティリティから行なう IMMのホーム画面
アイコンなどでAndroidがベースだとわかる Adobe Flashはあらかじめインストールされている バッテリ残量表示部は残りのバッテリ駆動時間の概算が出る

●ハードウェア的な仕組み
山ア充弘氏

 この仕組を実現したハードウェアについて、同社 基礎研究・先端技術 専任研究員の山崎充弘氏が解説した。開発チームは、IMMを実現するために、QualcommのデュアルコアをベースとしたSoC、16GBのストレージ、無線LANモジュールを、Mini PCI Expressのカードに集約した。

 まず、カード側からThinkPad X1に備え付けられたマウスとキーボードを認識できるようにするために、X1側のエンベデットコントローラ(本来ならばPS/2でPCと接続する部分)のファームウェアを独自にカスタマイズし、さらにコントローラから信号線を引くことで、IMM側で利用できるようにした。

 一方、ディスプレイ表示と音声出力部に関しては、別途IMMカード上からケーブルを引き、X1側にスイッチングコントローラを設けることで、本体に備え付けられたディスプレイとスピーカーとの共有を実現した。また、無線通信をモジュール単体で行なえるよう、独立した無線LANチップを備えた。

 IMMのモジュールは、Windows上からはUSB経由で、マスストレージクラスとRNDISとして認識される。Windows上からUSBフラッシュメモリのように扱え、IMM上で再生したい音楽や画像、ビデオなどをドラッグ&ドロップして保存して利用する。また、切り替える際に、Windowsのユーザー権限情報や、無線LAN設定も、USB経由でデータのやりとりが行なわれるという。


IMMへの切り替えはWindows上から行なう IMMモジュールのハードウェア的な仕組み

 IMMはWindowsモード時よりバッテリ駆動時間を伸ばすことが前提の設計となっているが、単純にIMM利用時にWindows側が利用するマザーボードをS3ステートに移行させることで実現。またIMM場合、システム消費電力の中心はマザーボードから液晶パネルになるため、「最大輝度での比較よりも、中間輝度で比較したほうが、よりバッテリの動作時間が伸びる」という。

 ただしIMMモジュールの搭載による悪影響もあり、Windowsからいつでも切り替えられるようにする、また、マスストレージクラスとして常時認識されるようにするために、IMM側が常にS0ステート(単なるアイドル)で駆動しているという。このため、ThinkPad X1の駆動時間が約5.8時間だったのに対し、X1 Hybridでは約5時間に減っているという。

 山ア氏は、「性能を上げることを前提に消費電力をマネジメントするIntel+Microsoftの手法と、限られた消費電力を前提に性能を最適化するARMの考え方は根本的に異なる。この2つの異なる設計思想のプラットフォームにおいて、バランスよく動作するシステムデザインは難しかった」とした。

バッテリ駆動時間が2倍になるカラクリ 液晶輝度を下げたほうが、Windowsとの比較でより駆動時間が長い ハードウェア設計におけるポイント

●ソフトウェアの最適化
河野誠一氏

 ソフトウェア面については、同社 基礎研究・先端研究 主幹研究員の河野誠一氏が説明。今回の開発のポイントは、Windowsから移行したときに違和感を感じさせない操作性を実現したことにあるという。

 例えば、キーボードやポインティングデバイスに関しては共通し、ホットキーやLED表示も共通化させた。日本語入力に関しても、ユーザーインターフェイス部分をMicrosoft IMEに準拠させた。さらに、無線LANの設定なども自動的に引き継ぐようにするなど、Windowsユーザーが比較的容易に移行できるようにした。

 また、ユーザーの認証部分に関しても、Windowsのユーザー権限を引き継ぎ利用するようにした。もしモジュールが外され、他のX1 Hybridに接続されたとしても、自動的にユーザーデータを消去するようにしたなど、セキュリティ面にも配慮したという。

 開発にあたっては、日本の大和研究所だけでなく、北京、深セン、台湾、モーリスビルなど、異なる文化や言葉の壁を超えて製品の開発を行なった。これはThinkPad X1 Hybridの製品開発における予想外のチャレンジだったという。

 なお、OSは「Linuxベース」と謳っているが、その実態はオープンソースのAndroidとしており、Marketの利用やアプリケーションの追加が一切できない独自のものとなる。


ソフトウェアの設計のコンセプト ソフトウェアの仕組み
Windows環境の操作性を移行 ソフトウェア開発におけるチャレンジ

●スイッチャブルのメリット
土居憲太郎氏

 OSをスイッチャブルにするメリットに関して、同社 ThinkPad担当の土居憲太郎氏は、「近年企業内でワークスタイルが変化し、オフィス内だけでの業務から、外出先または好きなところで業務ができるようになった。また、基幹業務を利用するアプリケーション、Lotus NotesやMicrosoft Outlook、紙ベースの報告書も、現在ではGoogleドキュメントやOffice 365をはじめとするSaaS型のアプリケーション、オンラインメール、TwitterやFacebookなどのSNSの活用へと変化している。それに伴い、ユーザーが所持する端末も、企業から支給されたPCから、スマートフォンやタブレットなどの私有の多種多様なデバイスへ変化した。ThinkPad X1 Hybridでは、OSをスイッチャブルにすることで、仕事とプライベートの共存、そして携帯性、利便性を提供でき、このワークスタイルの変化に追従できる」と述べた。

 なお、ThinkPad X1 Hybridの販路に関しては、Webのみで行なう予定で、また、混乱を避けるためにThinkPad X1とは別のラインナップを設けるという。価格は未定だが、現在のThinkPad X1にモジュールの価格が上乗せされる形となる。また、時期については、「気候が暖かくなる前」とした。


ワークスタイルの変化 コンピューティング環境の変化 ThinkPad X1 Hybridのメリット

(2012年 2月 7日)

[Reported by 劉 尭]