11月上旬 発売 価格:オープンプライス NECの「LaVie Light」は、同社初のネットブックである。ネットブックは、一般のノートPCに比べて仕様面では見劣りするが、価格が安いことが受けて、今年春以降急速に売り上げを伸ばしており、完全に1つのジャンルとして定着した。ネットブックは、ASUSTeKやAcer、MSIといった台湾メーカーがまず製品を投入し、日本HPやデルといった大手直販PCメーカーも参入したことで、大きく盛り上がっている。今回発表されたLaVie Lightは、国内大手PCメーカーが日本で発表したネットブックとしては、東芝のNB100に次いで2製品目となり、ネットブック人気をさらに加速することになるだろう。 LaVie Lightは、NECのコンシューマー向けノートPC「LaVie」のサブブランドとなり、その名の通り、「小さく、軽く、手軽に使える」ことをアピールする。製品ラインナップは「BL100/RA」1モデルのみで、カラーバリエーションも用意されていない。今回は、LaVie Lightを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部やパフォーマンスが異なる可能性もある。 ●160GBの大容量HDDを搭載 ネットブックの仕様は、IntelやMicrosoftによって規定されているため、ハードウェア面での差別化はしにくい。LaVie Lightは、CPUにAtom N270(1.6GHz)を、チップセットとしてIntel 945GSE Expressを搭載、メモリは1GBで、最大容量も1GBとされている(メモリスロットへのアクセスには本体の分解が必要である)。ネットブックは、ストレージに小容量(16GB以下)のSSDを搭載した製品と、HDDを搭載した製品に大別できるが、LaVie Lightでは、160GBという大容量HDDを搭載していることがウリだ。Aspire oneやNB100など120GB HDDを搭載した製品が多く、LaVie Lightの160GBという容量は、日本HPのHP 2133 Mini-Note PCの上位モデルと並んで、ネットブックでは最大クラスとなる。ネットブックは、大規模なアプリケーションを多数インストールしてメインマシンとして使うよりも、サブマシン的な使い方に適した製品だが、HDD容量は大きいにこしたことはないだろう。OSとしては、Windows XP Home Editon SP3が搭載されている。 筐体のデザインは、直線を基調としたシンプルなもので、角がやや丸くなっているところなど、同社のLaVie Jに似た雰囲気だ。ボディカラーはパールブラックで、適度な光沢があり、安っぽい印象は受けない。サイズは、250×176.5×31.3~36.5mm(幅×奥行き×高さ)で、フットプリントはほぼB5サイズである。重量は約1.17kgで、気軽に携帯できる。底面のゴム足を大きくすることで、天板にかかる圧力を分散。また、液晶パネル周りにクリアランスをとることで、面加圧試験150kgfをクリアしており、満員電車などでも安心だ。
●Webカメラやアレイマイクを搭載 液晶パネルとして、8.9型ワイド液晶を搭載。解像度は、1,024×600ドット(WSVGA)で、このクラスのネットブックとしては標準的である。十分なキーピッチを確保するために、液晶パネルサイズよりも、筐体サイズが大きめになっており、いわゆる額縁部分がかなり大きい。バックライトの輝度は、8段階に調整が可能だ。液晶はノングレアタイプで、外光の映り込みが少なく、文書作成などの作業に適している。また、最近のノートPC(ネットブックも含む)では、液晶パネルが180度開かない製品が多いが、LaVie Lightでは、180度完全に開くようになっている。液晶上部には、131万画素Webカメラと2マイクアレイを搭載。ビデオメッセンジャーなどで利用可能だ。マイクアレイは、ノイズ抑制や音声エコーキャンセル、ビームフォーミングといった機能をサポートしている。
●パッドは、ピンチやモーメンタムといったジェスチャー操作に対応 キーボードは一般的な6列配列を採用しており、キーピッチも17mmと広めなので、タイピングはしやすい。キーストロークは2mmで、キータッチも良好だ。ただし、「む」や「「」など、右側の一部キーのピッチは狭くなっている。ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのNXパッドを採用。パッドの操作性は良好だが、HP 2133 Mini-Note PCと同じように、クリックボタンがパッドの手前ではなく、左右両側に配置されているので、慣れるまでやや違和感を感じる人もいそうだ。担当者に聞いてみたところ、パームレスト部分のスペースが狭いため、クリックボタンを手前に配置するのは難しいとのことだ。パッドは、iPhoneのようにジェスチャー操作に対応しており、2本の指を広げたり狭めたりするピンチ操作でのズームイン/アウトや、パッドを弾くことで、高速にカーソルを移動できるモーメンタム操作などが可能だ。 【10月20日訂正】記事初出時、BIOS設定画面で、Fnキーと左Ctrlキーを入れ替えることが可能としておりましたが、これは評価機の独自仕様で製品版では入れ替えできません。お詫びして訂正いたします。
●パワーオフUSB充電機能にも対応 インターフェースも必要十分であり、USB 2.0×3、アナログRGB(ミニD-Sub15ピン)、Ethernetなどを備えている。USBポートは2つが右側面に、1つが左側面に配置されているので使い勝手がよい。左側面のポートは、電源OFF状態でもUSB給電が可能なパワーオフUSB充電機能に対応していることが特徴だ。パワーオフUSB充電機能は、LaVieシリーズではお馴染みの機能で、iPodやiPhoneなどUSB給電で充電できる機器を使う際に便利だ。SD/SDHCメモリーカードスロットや、IEEE 802.11b/g対応無線LAN機能も備えている。本体前面にはステレオスピーカーが搭載されており、前面中央には各種のLEDインジケータが用意されている。 また、使いたい機能に簡単にアクセスできる「LaVie Lightメニュー」や通信環境をワンタッチで切り替えられる「Mobile Optimizer」、バッテリをリフレッシュできる「バッテリ・リフレッシュ&診断ツール」といった、便利なオリジナルソフトもプリインストールされている。
●バッテリ駆動時間はあまり長くはない ネットブックは、コストダウンや携帯性を重視して、3セルのバッテリパックを採用している製品が多い。LaVie Lightも、3セルバッテリパックを採用しており、公称バッテリ駆動時間は約2.6時間と、あまり長くはない。もちろん、バッテリ駆動時間は長いほうが望ましいが、他のネットブックでも3セルバッテリとHDDを採用した製品のバッテリ駆動時間は3時間前後の製品が多いので、仕方がないところだろう。AC電源のない移動中や外出先などで使う機会が多いのなら、LaVie JなどのモバイルノートPCを選ぶべきだろう。今のところ、オプションとして大容量バッテリパックを用意する予定はないとのことだ。 参考のために、BBench(海人氏作)を利用してバッテリ駆動時間を計測したところ(液晶輝度は中、10秒ごとにキー入力をエミュレート、無線LANを利用して1分ごとにWebを巡回)、2時間32分の駆動が可能であった。ほぼ公称通りであり、カタログスペックと実際の駆動時間が大きく異なることはなさそうだ。 ACアダプタは、ネットブックとしてはやや大きめであり、もう少し小型で軽量なアダプタを採用して欲しかったところだ。
●ネットブックとしては標準的な性能で、コストパフォーマンスも高い 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類だ。比較対照用に、GIGABYTE「M912X」とASUSTeK「Eee PC 4G-X」、ソニー「VAIO type G」の結果もあわせて掲載している。 PCMark05や3DMark03、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアは、よく似た構成のネットブックであるM912Xと同程度であり、第一世代のネットブックであるEee PC 4G-Xに比べるとかなり高い。Core Solo U1300を搭載したVAIO type Gと比べても、性能的にはそれほど遜色はない。Windows XPベースのマシンとしては、十分な性能を持っているといえるだろう。HDDが2.5インチなので、HDDパフォーマンスが高いこともポイントだ。 LaVie Lightのベンチマーク結果
LaVie Lightは、激戦のネットブック市場に、国内PCメーカーの雄であるNECが満を持して投入した製品であり、その完成度は高い。基本スペックは、他のネットブックと大きく異なるわけではないが、パワーオフUSB充電機能やアレイマイクといった、LaVie Lightならではの魅力もある。予想実売価格は、65,000円程度とのことなので、国内メーカーならではのサポートの充実度や安心感(バッテリパックなどの供給も含む)を考えれば、価格的にもリーズナブルであり、コストパフォーマンスも高い。本来は、メインマシンとして使うための製品ではないが、Webブラウズやメールチェック、文書作成といった軽い処理が中心なら、性能的にも十分だ。家族でPCを共有しているが、自分だけのPCが欲しいといった人にも向いているだろう。 □NECのホームページ (2008年10月17日) [Reported by 石井英男]
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