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光子1つが見える「光子顕微鏡」。産総研が世界に先駆け開発

開発した光子顕微鏡(プロトタイプ)の全体写真

 国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は5日、光子を1つずつ検出し、光子数個程度のきわめて弱い光でもカラー画像の撮影が可能な超伝導光センサーを光検出器として用いた「光子顕微鏡」を世界で初めて開発したと発表した。

 光の最小単位である光子は、粒子の性質と波動の性質を併せ持ち、固有の波長も持っている。光子のエネルギーと波長には相関性があるため、光子のエネルギーを測定すればその波長も識別できる。

 このことを利用し、産総研では過去に、超伝導薄膜からなる光検出部と、光を閉じ込めるための誘電体多層膜からなる超伝導光センサーを開発。光子1つずつを検出し、その波長(色)の識別に成功していた。

 今回、産総研はこの光センサーを顕微鏡の光検出器として用いた光子顕微鏡を開発した。観察する試料のある場所からの極微弱光をレンズ系で集光し、光ファイバーで冷凍機内の超伝導光センサーへと光子を導く。到達した光子を超伝導光センサーで1つずつ分離検出、そのエネルギーを測定し、一定時間内に到達した光子の数とそれぞれのエネルギー(波長)から、測定場所の試料の色を識別。試料を走査して、場所ごとにこの測定を繰り返すことで、カラー画像を構築した。

 この測定では1測定点あたりの光子数は、平均して20個程度で、通常のカラーCMOSカメラを使った光学顕微鏡ではまったく色を見分けられない状況で、光子顕微鏡では赤、黄、青の明瞭なコントラストを識別できた。これを使うことで、これまで白黒でしか撮影できなかった電子顕微鏡写真のカラー化が可能となる。

 今後は、この光子顕微鏡で生体細胞からの発酵や化学物質の蛍光などを観察し、有効性を実証していく。また、改良を進め、試料からの極微弱な発酵や傾向のカラー動画の撮影可能な技術開発にも取り組む。

光子顕微鏡の概略図
(a)光学顕微鏡(カラーCMOSカメラ)と(b)今回開発した光子顕微鏡で撮影した画像