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東芝、ディープラーニングを低消費電力で行なえる“脳型プロセッサ”

 株式会社東芝は8日、ディープラーニングの処理を極めて低い消費電力で実行できる、人間の脳を模した半導体回路「TDNN(Time Domain Neural Network)」を開発したと発表した。

 現在、ディープラーニングは大量の演算を高速で処理し、多くの電力を消費する高性能コンピュータで行なっているが、センサーやスマートフォンなどの末端デバイスで同様の処理を実行するためには低消費電力のチップが必要である。これは一般的なアーキテクチャのコンピュータはノイマン型であり、データをメモリから演算回路に移動するために、消費電力の大部分を利用しているためである。

 そこで東芝は、2013年に開発した「時間領域アナログ信号処理技術」を演算回路に採用。デジタル信号が理論ゲートを通過する際の遅延時間をアナログ信号として利用することで、加算などの演算を効率よく実行できるとしており、ディープラーニングの1つの演算を行なう演算回路を、3つの論理ゲートと1bitのメモリで実現できる。これにより大幅なチップの小型化を実現でき、並列化と低消費電力化が容易になる。

 今回東芝は、揮発性メモリを利用したチップを試作し、ディープラーニングに必要な基本動作である画像認識処理を行なったところ、演算あたりの消費エネルギーを、これまでに学会で報告されている値の6分の1以下である20.6フェムトジュールに抑制できたという。

 今後は、低消費電力化が可能な抵抗変化型メモリ「ReRAM」を使ったTDDNプロセッサの開発を予定しており、小型化に必要な技術開発により、末端デバイスでのディープラーニングを可能にするプロセッサの実現を目指す。